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豪雪の山里から ~ 米の農法へのこだわりは人それぞれ

こんにちは。ようこそ

さて、私が作っているお米は
品種としては、コシヒカリの一種類だけ
ただし、栽培から米にするまでの工程の違いで3種に分かれている
その種類は、農薬の使用量を抑えたもの、農薬不使用のもの、そして農薬不使用で天日乾燥としたものである
ちなみに「無農薬」て言葉の方が耳なじみが良いが、行政から使用禁止の指導がされている
周辺の田んぼから風に乗って薬が飛来したり、用水路や雨水に混じって微量の農薬成分が混入したりするなどの可能性は、厳密に言ってゼロじゃないからって理屈らしい
だから、ゴロが悪いけれど農薬不使用なんて言葉を使っている
そんな理屈を言いだしたら、世の中から「無~」なんて言葉は無くなりそうだけど(笑)

一方で世間には、何がなんでも農薬は毒!
だから絶対に使わないという確固たる信念を持った農家さんがいる
あるいは植物の持つ力に任せた自然農法を推奨する人もいる
そういう人には敵わないなぁ~と思う

自分にはそこまでの確たるものはないから
できるだけ安全で健康に良い食べ物を作りたいとは願うが
一般的な農法が人体に実害を及ぼすという確証もない
(かつて会社員時代に長く携わった医薬は、毒性があるのが前提で効果とのバランスで評価する世界だったから「絶対の安全」を信用してない自分もいる)
結局のところ、安全マージンをどこまでとるかは人それぞれだから
こちらが選択肢を用意して消費者が選べれば良いと思っている

「無農薬」を徹底できない言い訳に過ぎないけれど…

現実問題として、完全なる安全のために自分が身体を壊すほどの無理はできないし、それだと長くは続けられないと思う
できるところまで努力はするけれど…

実際、農薬不使用のお米と謳うためには、田植え直後から草と闘い続けることになる
今なら、4百万も投資すれば乗用の高性能な除草機も手に入るが、先立つもののない我が家は、自作のチェーン除草機を引き、中耕除草機を押しながら何度となく田んぼの中を歩きまわったり、鎌で草を刈ったり、手で抜いたり(すぐにもヘルニアになりそう…)
もし草をはびこらせて放置してたら、周辺の田んぼにも種が飛んで広がらないとも限らない。農薬不使用の農法を選ぶのは個人の自由だけれど、周りの田んぼに迷惑かけないのは最低限のマナーだから甘えはきかない
でも、そこまで必死やっても、最後はたいてい草の勢いに負けて、養分を草に吸い取られて、米の収穫量にも影響が出てしまう

農薬不使用にこだわって手をかけたからと言って、また収穫量が伸びないからと言って、そのコストをそのまま米の価格に転嫁して、お金持ちしか買えないようなお米にする訳にもいかないし(と自分は思う)

だから、今は低農薬のお米をメインにして、何とか手がまわるだけの田んぼを農薬不使用にしている
実のところ自分自身が、食べ物の安全性をそこまで気にしていなくて、インスタントラーメンも食べるし、食品添加物の表示もそんなにチェックしない人間だから、ということもある
農薬不使用の米作りを始めたのも、たまたま最初に引き継いだ田んぼが農薬不使用で耕作されてて、それも面白いかもと思ってやり方を倣ってみたのであって、最初から農法に強いこだわりがあった訳ではない(米づくりのことなんて何も知らなかったし)
あったのは、せいぜい普通のお米との差別化ができて付加価値が生まれるかもなぁっていう多少の打算くらい
お陰さまで(?)、農薬不使用のお米の方が人気はあるけれど、それじゃないと頼まないというこだわりのあるお客さんは少数派。例えば持病をもっているなどの健康上の理由を持った方くらいだから、まあしばらくは、そういうお客さんにゆき渡るくらいの量が作れていれば良いかと緩く考えている

その代わり、化学肥料の不使用には少しこだわっている
農薬不使用米も低農薬米も同じく、化学肥料は使わないで天然資源から作った肥料を用いている
化学肥料を使った方が、だんぜん育ちは早くて収量も上がるのを見ているけれど、そこは譲らないようにしたい
自分自身がアレルギー体質ということもあり、化学物質を含んだ食品でアレルギーを引き起こされる人が一定数いるのを知っているということもあるが、どちらかと言えば、「ほんとうに美味しいお米」を提供したいという想いから
先輩の米農家さんから聞いた、あんまり収量を上げすぎない方が美味しいお米が採れるっていう通説がある
数値的に説明できるものかは分からないが、確かに米も野菜も有機肥料を使って急がずじっくり育てると味の濃い作物になる印象がある
一部のお米をはざ架けで天日乾燥させているのも、同じような理由
現在の主流は機械乾燥だが、刈り取った稲束を稲架(はざ)に架けて、日数をかけて登熟させながら天日乾燥させたお米は、まったく甘みが違うと米農家さんは言う
実際、自家で消費する分だけは、はざ架け乾燥に拘っている年寄りの農家さんも結構いるようだ
という訳で、とても人手がかかって大変で、少ししかできないけれど、毎年できる範囲ではざ架けを続けている(はざ架けのある風景が好きというのもあるが)
ただ、かつてはどこの農村でも、家族総出または近所どうし協力してはざ架け作業をしていたけれど、この人手不足の時代にはそぐわない手法であることは確かである
いつまで続けられるか分からないが、はざかけ米への要望が飛びぬけて多いのでやめるにやめられないという事情もある

いずれにせよ、米作りを続けているのは、自分が初めて収穫したお米を食べた時に感じた、「本当に美味しいお米を食べた時の感動」を共有したいというのが一番の理由なので、味の面では妥協したくないと思っている

ただ、このところの異常気象がこの先何年も続いていくようなら、そもそもこの土地がコシヒカリの栽培適地ではなくなる可能性もあって、そうなれば必然的に味の低下という将来も十分考えられるのである
高温に強いコシヒカリというのも試験場では研究が進んでいるようだが…

先行きはまったく不透明
果たして今年はどんなことになるだろうか?

まあ、ケ・セラ・セラ
なんて鷹揚にかまえていられれば良いが

ではでは






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