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【詩】目覚め

 虫の声で起こされた
 朝陽は夕陽のように赤く
 部屋の一部を焦がす
 レースカーテンを開けた
 水色の空に浮かぶ雲は 焼き立てのパンのよう
 千切ったような物も含まれていた

 虫の声に急かされた
 一階へ下りる階段を駆け下り
 薄暗いキッチンに飛び込む
 全てのカーテンを開けた
 コーヒーの用意を始めて 六枚切りのパンを選ぶ
 ケトルの蒸気の音に パンを焼き上げる音が重なる

 虫の声に癒された
 ゆったりした気分で朝食をとる
 香ばしいパンの上でチーズがとろけ
 ケチャップとマヨネーズが混ざり合う
 甘くなった口にコーヒーを流し込む
 二階から目覚まし時計の音がして 少し苦笑い

 虫は鳴き続ける
 対抗するように野鳥が鳴く
 遠くの方でバイクの排気音が聞こえ
 家の近くの道を複数の車が走る
 一気に音が増えて 全ての目覚めを促す
 相手はいなくても 無性に言いたくなる

 おはよう

 何気ない一言で 僕の一日が始まった


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