軽井沢の地へ 序章 ラブソングとフランスパンの似合う僕の1番好きな街

体調を崩し2週間療養していた。
歳を取ると、ある日突然具合が悪くなることがある
ということを初めて知った。

僕は長野県のある街に住んでいるが、時々、諏訪市に行く。
僕が生まれ育った街だ。
八ヶ岳を背景にした諏訪湖の景色を毎日見ながら
僕は育った。 
ふたりの娘が独立して依頼、
今住んでいる家を処分して、この景色の見える場所へ引っ越そうと思っていた。

入院する必要はなかったが、最初全然食欲がわかなかった。
だが朝食のバゲットとチーズとミルクだけは食べられた。
自分は本当にパンとチーズが好きなんだと思った。

ミカド珈琲を飲みながらジョンレノンの愛した
フランスパンを食べたいと思った。
ジョンレノンは生前、奥様のオノヨーコさんと
息子さんのショーン君と3人で夏になると軽井沢に
避暑に来ていた。
ジョンレノンは旧軽井沢銀座通りにある
フランスベーカリーさんのフランスパンが大好きで
宿泊先の万平ホテルから毎朝自転車に乗って 
フランスベーカリーさんに行きフランスパンを2本買って帰り朝食に食べていた。
僕も食べたことがあるが、僕は日本一美味しいフランスパンだと思う。
毎朝、ミカド珈琲を飲みながらジョンレノンの愛したフランスパンを食べて、残りの人生を過ごしたいと思った。
人生の最後にもう一度八ヶ岳を背景にした諏訪湖の景色が見られれば充分だとも思った。

軽井沢に家を建てることなど出来ない。
賃貸マンションか、出来たら平屋建ての一軒家を借りられたら、と思う。

奥さんはきっと反対するだろう。
近くに年老いた母親が住んでいるからだ。
だが、自分1人だけでも先に行こうと思う。
それは、

僕には星がある。
子どもの頃から夜空に輝く1つの星を、何故か自分の星だと思って生きて来た。
北極星でもないのに、その星は1年中見ることが出来る。
その星が、今年になってから瞬き始めたからだ。





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