忘れられない恋物語 A Man I‘ll Never Be 好きな女性の好きな男 ぼくたちの失敗 森田童子 序章

1980年、僕は大学1年生だった。
この頃、人気のあったアメリカのロックバンドの ひとつにボストンというバンドがある。
ボストンには名曲がある。
A Man I‘ll Never Be 遥かなる想い という曲だ。

僕は大学に入学すると旅行のサークルに入った。
そこに麻莉子さんという4年生の先輩がいた。
少し小柄な人だが、ジャズダンスで鍛えたカッコいいスタイルの綺麗な人だった。
僕は好きになり、付き合ってくださいと言うと
好きな男の人がいる、と言われた。

同じサークルだったので、会うたびにその人のことが好きになって行った。

ある日、僕は買い物ため池袋駅を出て歩き出すと
その人が社会人の男の人と歩いているのを見かけた
その人は嬉しそうに歩いていた。
だが僕は一緒に歩く男の人の方を見ていた。
その男の人は、スーツ姿で見た目は少し怖い感じがした。
だが頼りがいのある大人の男の人という感じだった
大学1年生の僕とは対照的だった。

だが、それから少しして、
その人は、僕と付き合ってくれると言った。
そして、2ヶ月後、別れたいと言われた。

「鈴原君は優しいし、一緒に居て気持ちが暖かくなる。幸せにもなれると思う。そう思って付き合い始めた。でも、少しくらい冷たくされても、私は、
やっぱり、あの人が好き。」

僕は行こうとするその人を引き止めた。
でも、その人は涙を浮かべながら僕を見上げ
無言で断った。

僕は帰り道、ボストンの名曲
A Man I‘ll Never Be 遥かなる想いを口ずさんだ。

You look up at me.
And  somewhere in your mind you see.
A Man I‘ll Never Be.

君は僕を見上げ 
心の何処かに思い浮かべる 
僕には決してなれない男のことを

1週間ほど経った時、大学からの帰り道
同じサークルの2年生の香奈恵先輩に声をかけられた。

「鈴原君、一緒にご飯食べようよ、私がご馳走するから、いいでしょ?」

香奈恵先輩は、ここ美味しいんだよ、と言って
少し古い建物の洋食屋さんに連れて行ってくれた。
ミックスグリル定食を勧められて食べた。
香奈恵先輩は、こんなにご飯は食べられないから、
と言って、自分のライスを半分、僕のお皿に移した

「鈴原君、サークルの女の子たちは皆、鈴原君のことを見直した、って言ってるよ。私も見直した。
麻莉子さんのような女の人は、男の人たちは皆、
何もしないで諦めちゃうの。でも鈴原君は1年生なのに麻莉子さんにアタックして付き合った。結局、
振られちゃったけど、女の子たちは皆、鈴原君は
男だって言ってるよ。」

食事が終わり洋食屋さんを出て、香奈恵先輩と歩き始めた。
「鈴原君、森田童子のぼくたちの失敗っていう曲、
知ってる?」
「知らないです。」
「いい曲だよ、今度聴いてみて、私の失恋ソングなんだけどね。 ねえ、鈴原君、キスして。」

ひとつの恋が終わった。
でも、新しい恋が始まった。





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