忘れられない恋物語 諸悪の根源は所有という感覚(男も女性も誰のものでもなかった時代)

中東諸国、所謂イスラム諸国と他の国々との1番の違いは、イスラム諸国には簡単な社会のルールや決まりみたいなものはあっても、法律というものがないことだ。
イスラム諸国は法律ではなく全てコーランに基づいて社会が成り立っていて人々も生活している。

僕が27歳の時、会社の同期の女性はフルーツパフェを美味しそうに食べながら、こう僕に話した。
彼女は今月いっぱいで退職すると言った。
皆で大騒ぎする送別会は嫌いだから、仲の良かった人、同期の人と毎日1人づつ一緒に食事をしていると言った。

彼女は同期だったが短大を卒業して就職したので、僕よりも2歳年下だった。だが、入社した時から僕のことを鈴原君と呼び、同年のように接してくれた僕もそれが嬉しかった。
焼肉をふたりで食べた後、近くのカフェでデザートを食べた。ふたりでアイスコーヒーを頼み、僕は
チョコレートパフェを彼女はフルーツパフェを食べた。食べ始めて直ぐに彼女はそんな話しをし始めた

「法律って人間が作った物でしょ。人間が勝手に作った法律を人間が勝手に守って、それが神様の前で正しいとは言い切れないと思う。イスラム諸国のようにコーランを守って生きて行くのなら、それは神様の前で正しいと言えると思う。法律は違うと思う鈴原君は私が男を二股かけてるの聞いてるよね。皆いろいろ言うけど私はふたりとも真剣に愛してるの世界には一夫多妻制の所だってある。これは貧しい地域だから、女の人を養える男が限られているからなの。それに対して女性は不満を感じていないし、
誰も悪いことをしていると思ってもいない。逆に、
一妻多夫制の地域もあるのよ。知ってた? その地域では女が極端に少ないの。何故か殆ど女の子が産まれないんだって。でも、この場合、誰の子どもか分からないわよね。」
「日本で言うと縄文時代と殆ど同じだね。」
「縄文時代って一夫多妻制だったの?」
「毎晩乱交の時代だったんだよ。」
「ホント?」
「縄文時代には人間の心に所有という感覚がなかったからなんだ。縄文時代は今から13000年前から2300年まで1万年代も続いた時代。その後
弥生時代になって、古墳時代、飛鳥時代、奈良、平安、鎌倉ってなっていく。」
「縄文時代の方が歴史が長いんだ。」
「そうなんだよ。ずっと長い。縄文文化は縄文土器に代表されるように、世界に誇れる文化なんだ。」
「ピラミッド作ってた時に日本では縄文土器を作ってたって嬉しい。」
「ピラミッドの頃は弥生時代になっちゃうんだけどね。縄文時代は狩猟の時代、動物の肉や魚介類そして樹の実等を食べていた。ところが冷蔵庫がなかったから、食料を保存することが出来なかった。だから、獲って来た肉を皆で平等に分け合って食べて、
肉がある内は働かなくて、肉をなくなると狩りに行っていた。つまり、貯蔵している物がないと所有という感覚は生まれない。だから、男も女性も誰かのものという感覚がなかった。だから、乱交状態だった。そうすると産まれて来た子どもは誰の子どもか分からないから、産まれて来た子どもは男が全員協力して育てたんだよ。ところが、縄文時代の終わりから農耕というものが始まり、弥生時代は完全な農耕社会になった。米とかを蓄えることが出来るようになると、この米は俺の物、この土地は俺の物、
そして、この女の人は俺のものという所有という感覚が生まれた。ところが、男によっては、食料をたくさん確保出来る男とそうじゃない男がいた。食料をたくさん確保出来た男には何人もの女性がいて、
食料が確保出来ない男には女性が1人もいなかったつまり、最初は一夫多妻制だった。ところが1人も女の人が自分のところに来ない男たちは、自分にも1人は女の人が来て欲しいと言い出し、結婚という制度が生まれ、そして1人の男が何人もの女の人を独占出来ないようにしたんだ。」
「つまり、結婚という制度はモテない男、甲斐性のない男のために生まれたということね。でも、私、
日本人が1万年もの乱交の歴史を持っているなんて、嬉しくなって来たわ(笑)」
「ところが大事なのは、縄文時代には大きな争い事がなかったと言われていることなんだ。人間に所有という感覚が生まれて以降、つまり、弥生時代の後半から古墳時代に日本に大きな争い事が起きるようになった。古墳はたくさん所有した人のお墓だよ。権力者が現れ後に始まる戦国時代になった。
人々の間でも争い事、男女のトラブルも発生するようになった。ヨーロッパでは農耕社会の古代ローマが勢力を拡大し、狩猟時代だった今のフランス辺りに住んでいたガリア人を支配した。結局、大航海時代でその勢力を海外まで伸ばそうとする時代が始まり、戦争も起きるようになった。
誰の言葉ヵ忘れてしまったけど、
戦争は誰も所有していない富によって引き起こされる、という言葉もあるよ。」
「世界平和を成し遂げようと思ったら、世界中の国が縄文時代に戻るしかないわね。」
「そうだね。縄文時代の人たちは自然破壊も殆どしていないから。諸悪の根源は所有という感覚だと思う。今、ジョンレノンのイマジンっていう曲を思い出したよ。知ってる?」
「知ってる、有名な曲だから。ねえ、イマジンの世界を作るためには、縄文時代に戻るしかないと思いますと手紙に書いてオノヨーコさんに送ったら?」
「怒られちゃうよ(笑)」
「グッド アイディアって言うかもよ(笑)」

カフェを出た。

「鈴原君、本当はね。今月いっぱいじゃなくて、
明日退職するの。最後を鈴原君にしたのは、三股目は鈴原君だなぁと思っていたから。順番の問題じゃないわよ。そこは縄文感覚ね。
鈴原君、ありがとう。元気でね。」

そう言うと彼女は走って行った。

次の日、彼女は退職した。
午前中に挨拶を済ませ、荷物をまとめて会社を出て行った。
午後の社内メール便で彼女から小さな箱が届いた。
中にはブランド品の名刺入れが入っていた。
そして、一緒に入っていたメッセージカードには、

誰のものでもないということは
誰のものでもあるということよね
私には、ちょっと問題かも
鈴原君、元気でね。

と書いてあった。





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