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昔ある時腰痛の患者さんが来院した。

「どうやって痛めたの」と聞くと「仕事中に」と答える。
なので「どんな仕事をしているの?」と聞くと「風俗嬢」と答える。
あまりに単刀直入なので「そういう時は飲食店とか接客業とか言うもんだよ」と教えたが、最近ならそういう職業を恥ずかしいと感じている私の方が違うのかなという気もしている。
30年近くも前の話なので、それまでは例外なくみんな濁して答えていたものである。

しかし濁して答えていてもわかってしまうことがよくある。
私としてはどこをどう痛めているのかを知りたいので「痛みの出る動作をしてみて」というとやおら四つん這いになり変な動きをする。
もう風俗嬢しか考えられない。
30年近くも前の話ではあるが、時代の変化を感じてしまった。

風俗嬢はあけすけな人が多いのか悩みを打ち明けられることも多かった。彼氏の話や仕事の話を躊躇せずに打ち明けてくる。カーテンの向こうには他の患者さんもいるので私の方がドギマギしてしまうこともよくあった。
今思えば懐かしくもあり楽しくもあり、本当に面白い仕事に出会ったものだと感心してしまう。

私の人生で一番の幸運はこの仕事に出会ったことだと思う。
人の人生と向き合うという仕事はそうそう多くはない。
この仕事はそんな仕事でもある。
それは同時に私という人間性を評価される仕事でもある。
すぐに飽きやすい私がどんだけやっても飽きることのない仕事に出会えたことに感謝しながら命の尽きるまでこの仕事を全うしたいと思っている。


最後まで読んでいただきありがとうございます。
今日も笑顔あふれる一日をお過ごしください。

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