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調べる:「リカレント教育」と「生涯学習」の違い(1,907文字)

リカレント教育という用語をよく聞くようになりました。しかし,リカレント教育とは何でしょうか。また,それは生涯学習とどのように違うのでしょうか。今回はそれぞれの定義がどのようになされているのかを調べ,その内容について考えてみようと思います。

リカレント教育に関わる施策は現在のところ厚生労働省より,経済産業省,文部科学省と連携して行われていると考えられます(参考:リカレント教育 (mhlw.go.jp) )。また,内閣府(2018)による,平成30年度 年次経済財政報告 第2章 人生100年時代の人材と働き方 第2節 人生100年時代の人材育成 において言及があり,また同年に内閣官房人生100年時代構想推進室より リカレント教育参考資料 も公開されています。

政府広報オンライン(2021)「学び」に遅すぎはない! 社会人の学び直し「リカレント教育」 | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン (gov-online.go.jp) によると「「リカレント(recurrent)」とは、「繰り返す」「循環する」という意味で、リカレント教育とは、学校教育からいったん離れて社会に出た後も、それぞれの人の必要なタイミングで再び教育を受け、仕事と教育を繰り返すことです。日本では、仕事を休まず学び直すスタイルもリカレント教育に含まれ、社会人になってから自分の仕事に関する専門的な知識やスキルを学ぶため、「社会人の学び直し」とも呼ばれます。」とされています。

同様に,生涯学習については「生涯学習は、生涯にわたり行うあらゆる学習で、学校教育や社会教育、さらには文化活動、スポーツ活動、ボランティア活動や趣味など仕事に無関係なことや「生きがい」に通じる内容も学習の対象に含まれます。」とされています。

従来の文部科学省における生涯学習は「人々が自己の充実・啓発や生活の向上のために、自発的意思に基づいて行うことを基本とし、必要に応じて自己に適した手段・方法を自ら選んで、生涯を通じて行う学習」(中央教育審議会答申, 1981)として中央教育審議会答申により定義されていますが,先ほどの政府広報オンライン(2021)の定義では,「生涯学習は、生涯にわたり行うあらゆる学習で、学校教育や社会教育、さらには文化活動、スポーツ活動、ボランティア活動や趣味など仕事に無関係なことや「生きがい」に通じる内容も学習の対象に含まれます。」とされています。これらを概観すると,生涯学習の定義は以前よりニュアンスが変化しているように思えます。

リカレント教育は労働者と企業により行われる学び直しとキャリアアップに係る「仕事と学びを繰り返す」「社会人の学び直し」,そして生涯学習は生涯にわたり,「仕事に無関係な」学びを含む,ひとりひとりの「人生を豊かにする学び」を行うこととして区別され,施策は実施されているようです。

しかし,リカレント教育には「大学教育」や「個人のキャリアアップ」が含まれ,その境界は明確にされているとは言い難く,むしろ生涯学習という上位概念があり,その中にリカレント教育が存在するようにも思えます。そのために厚生労働省と文部科学省が協力している,という背景もあるのかもしれません。

また,その内容を概観すると,政府は情報人材の強化及び生涯にわたるキャリアデザインを行うことで,人生100年時代と呼ばれる生涯現役に係る施策を実現させる意図もあるように思われました。

生涯学習と,リカレント教とは,「生涯にわたる自発的学び」及び「仕事にと学びを繰り返す社会人の学び直し」として,今後もこの言葉に触れることは増えていきそうです。

これらより,今後は学びの機会に触れることでひとりひとりの人生を豊かにし,さらに充実した社会参加を約束されるような,「個々人の自発的な努力を無駄にしない」施策が望まれるように思いました。

生涯学習とリカレント教育について今回は調べてみました。しかし,大学における教育がリカレント教育に何故含まれるのか,個人のキャリアアップを含む学びが何故リカレント教育に含まれるのか,これらは個々人の学びに対するニーズと,行われる教育との関連が不明であり,現状での施策は教育の場を仕事に関連するように変化させることが前提となっているため,個々人の自発性により人生を豊かにする生涯学習概念との整合性について明確にすることが出来ませんでした。さらに,リカレント教育の海外における用例などについても明らかには出来ませんでした。今後はさらにこれらを含め,詳しく検討してみたいと思います。

今回も,お読みいただきましてありがとうございました。

※記事中にある情報は2022年12月3日現在です。
※記事は個人の意見及び主観です。正確にはそれぞれの引用元の情報や,専門の書籍などをご参照ください。

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