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赤い部屋

~江戸川乱歩短編集より~

このタイトルに大変、
惹き付けられるものがありました。
謎めいていて、魅惑的で。
一体どんな内容なのか、
全く見当がつかないのに、
気になる。
赤という色から連想される事象。
この小説は大人が読むために
作られたものです。
子どもが読んでは、なりません。
実際、わたくしが読んだのも
年齢的には成人しておりました。
タイトルに魅入られて
このタイトルの入っている短編集を購入致しましたのは、ずいぶん前のことであります。
そして読みはじめてすぐに「騙された」
と思います。
期待は大きくカープを描いて場外ホームラン。
なんだなんだこのスケールの小ささは、と
最初思います。
でも、読み進めていくうちに、
これはとんでもないぞ、という
寒気のようなものを感じます。
チクチク、チクチク、小さな針でちょっとずつ
侵食されて行く感覚。
蝕まれているのに、気がつかない程度に。
気がついたときには、ああ、なんたることか。
この小説の書かれた年を見ていただきたい。
ものすごく、時が経っている。
現代のミステリー小説ファンの方が読まれたら、なーんだ、そんなのもう出尽くしてるじゃないか、目新しくもない、と思うかも知れない。
彼が最初なんです。
彼から始まったんです。
原点は、ここなんです。
SF小説を小松左京が、ショートショートを星新一が、ブラックユーモアを筒井康隆が
文壇に認めさせたように、
ミステリー小説を文壇に認めさせたのは彼でしょう。
現在活躍されているミステリー小説家の方々は、
すべて彼へのオマージュとしても過言ではない、と勝手にわたくしは思っています。
耽美、背徳、エログロを、上品かつ短編で表現した日本のミステリーの原点。
期待は裏切られます。
後からじわじわ効いてきます。
親の小言と冷や酒のように。
これからは、AIさんがモノを作る時代だそうですので、脳が貧困にならないように想像力を鍛えて脳活して行きたい所存であります。
同じ短編集に「人間椅子」「芋虫」
「屋根裏部屋の散歩者」などがあり、
人間椅子は、最後のオチがわたくしには
残念でした。
夢オチほどつまらないものは無いのと同じ理由からそう思いました。
夢と言いましたら、突然登場夏目漱石の夢十夜ですが、その話はまた後日。しないと思います。





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