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挫折からの脱出 (6) 動機への昇華

 あなたが持続的に心を成熟させる段階を目指すためには、我慢に慣れるために実行していた日常のルーチンの枠を広げることです。枠を広げるとは、活動の範囲を広げる、時間を長くする、内容を増やしていくことです。この段階の目的は、人生の時間には限りがあって常に自覚をもって行動しなければならないこと、汗をかく楽しさを覚えることにあります。
 
 いままで、人生の貴重な資源である時間が無尽蔵にあると思い、単調な毎日を繰り返していたあなたは、最終的に自分の意思に基づいてこれを今日はやっていくんだという動機を得ることを目指していきましょう。そのためにルーチンの枠を広げていくのです。

 ルーチンの枠を広げるにあたって、私の経験談を話していきたいと思います。以前にも触れたように拒食症で何もやる気のなかった状況から、ふと購入した定期券で自宅から1時間先の図書館に通うことになりました。昼前に図書館に行っても一日中ボーッとするだけの毎日でしたが、図書館横の都立公園で散策するようにもなって、いつしか公園横にあるラーメン店の中華飯が食べれるようになりました。自宅やそのほかの店では決して喉を通らないご飯がなぜかそのラーメン店の大将の作る中華飯だけ美味しいと思ったのはいまでも謎ですが、おそらく体を多少動かすようになって体が欲したのでしょう。

 1ヶ月ほどすると図書館にいるのだから、本を読もうと思い立ち今回のルーチンの枠を広げると同じ意味合いで、書棚にある本を一日1冊ずつ読んでいきました。最初は、随筆やエッセイから始めて、最終的には著名な作家の全集を全巻読み通すようになったのです。私は、理系志望でしたが、そのとき受験した予備校の全国模試で現国だけはほぼ満点でランキング入りしたことが思い出されます。没頭するとそのジャンルのプロになれるような錯覚もあって、11月半ばから数学と化学、物理の参考書1冊に絞り、それをすべて理解するのを目標として日々勉強に没頭するようになりました。

 ただ、皆さんに誤解ないように付け加えたいのですが、勉強に没頭したといっても将来これをやりたいのだとかの願望はなく、没頭すること自体に喜びを見いだして勉強したまでです。したがって、当時の私は挫折の入り口から反対方向に歩き出したといっても、どこに向っていくかは定まっていませんでした。これが、大学入学後の失敗につながっていきます。

 皆さんもルーチンの枠を広げるような感情を揺さぶる行動をとってみてはいかがでしょうか?本を読む、映画を観る、芸術に触れてみる、体を鍛えてみるなどいかがでしょうか?ここで気をつけなければならないのは、アルバイトのような労働です。指示を受けて、こなすだけのアルバイトは自由な発想を妨げるばかりではなく、労働そのもので汗をかく充実感が味わえるので、一見して自立した生活のように思えてきます。心の底からやりたい仕事ならば良いのでしょうが、ネットなどで応募するアルバイトには、そのような感動を覚えるような体験をすることはできません。パン屋のアルバイトにはレシピ通りの生産しか許してくれません。決して創作パンの開発や試行錯誤の場は提供してはくれないのです。

 持続的に心が豊かになるルーチンの先には、自ら見いだした人生でやるべき動機や目的が待っています。私が大学時代に失敗した事例などをあげてどうすれば自分自身の才能を生かした目標を設定できるのかを次章で触れていきます。

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