秋桜

日々思い浮かんだこと、幼い頃からの出来事などを綴っています 好きな作家(敬称略)・作…

秋桜

日々思い浮かんだこと、幼い頃からの出来事などを綴っています 好きな作家(敬称略)・作品  江國香織「なつのひかり」  高田郁「あきない世傅」  若松英輔「藍色の福音」 好きな映画  “The Notebook", “The Polar Express" 「まちの本屋」

マガジン

  • 遠い記憶

    こどもの頃からの出来事を綴ったもの (不定期更新)

最近の記事

道路にできた水溜まり バシャンと派手な水しぶき 平らになるのは きっとまだ先 重たそうな車輌が ミシミシと通る あたかも 鈍い痛みに  身が抉られるかのよう 晴れ渡る日が 待ち遠しい

    • 双葉

      種を蒔き、お水を撒いて 来る日も来る日も 静かに見守る ついに芽生え 大きい種は 土を 力強く押し上げ 小さい方は 柔らかに 両葉を広げる そういえば最初は こんな風だった 懐かしさに つい目を細める やがて本葉が育てば バッタが跳んできて 遊び場にするだろう

      • カウンター席

        限定おふたり 予約したのに 寝坊しすぎの お客さん 1人はトマトが大好き 目玉焼きは半熟 ハムも一緒に焼いて シリアルに苺を乗せ 牛乳をたっぷり もう一人は胡瓜をポリポリ 半熟は困る ハムは焼かずに ご飯を食べたい 食べ始めてから すっと椅子を降り お醤油を取りに来る 後はセルフで  お構いなく くだを巻くこともなく かわいらしい常連さま だが しかし この人数で なぜ揃わない? 給食ではどうしているんだと 俄マスターは 訝しく思う わがままの始まりは 一体誰か

        • せせらぎ

          山頂から 木立を抜け せせらぎの水音に 耳を澄ませる 橋の裏には 網目のような水紋が きらきらと映る めだかの群れと なぜか猫が一匹 水辺で岩に腰掛け 素足をひたす 雲ひとつない空 新緑の中から聞こえる うぐいすの声 水は勢いよく さらさら流れ 岩にかかると とぷんと音を立て 視界を通り過ぎる この時期ならではの 心癒やされるひととき 帰りはすっかり夏の日差し 頬を真っ赤にして 疲れた もうおんぶと 駄々をこねる声 残念ながらリュックで満席と そっけなく返事し

        マガジン

        • 遠い記憶
          101本
        • 8本

        記事

          回転

          海の幸のお皿が ビューンと流れてくるのを 久々に見ながら お出汁の効いた お味噌汁を一口 良かれと選んだ巻き物が うっかり逆で ツーンとくる方 ごめんごめんと 頼み直しつつ ゆっくり口に運ぶ 苦手なものでも たまには食べよう 日暮れ時  それぞれ愉しむ 週末の一コマ 天井の鏡は 何組のお客を 映しただろうか

          模索

          弱みと気付きながらも 日頃は何とかなっていて そう困ってはいないと 自分に言い訳を与え 克服できずにいた いくつかの事 恥入る場面があっても 喉元を通り過ぎれば また横に押しやる 自分の偽らざる気持ちは 一体どこにあるのだろうか 必ずやり遂げたいとの思いの裏に 代わりがなく 責任を持って 優先すべきことがあっても 無意識にも意識的にも 後回しにしがち 言葉に出さず 頭の中だけの発想に囚われ 切羽詰まらないと動かない どうしてなのかと自分に問う 何事も自由に選べ 誰も

          帰還

          夜半に見た景色 トラックとバスが 詰め詰めに並ぶ お店にはその土地以外の 銘菓もずらり もう一箇所も 同じようでいて よく見るとだいぶ違う うつらうつらと まどろむうちに 辺りが明るくなり 定刻で到着 朗らかなアナウンスに 耳を傾け 鉄橋を渡り  駅に降り立つ 朝日差す 青葉の並木 時間どおりの ラジオ体操 空き地の 大きな水溜まり ビルの谷間の 四角い空 長い一日が 夕陽とともに 終わろうとしている かすかな靴擦れは 自転車で挽回 ささやかな喜び 意外な発見

          百鬼

          もし現実にと その光景を想像したら 尻込みしてしまう 朝茶はその日の難逃れと いつものおまじないをかけ 茶柱が立たずとも 日付が変わる頃まで 無事に過ぎますようにと願う 電車は滑らかにホームに到着 誰もつかまらない手すりが 右に左に揺れ 曇り窓の外に ぼんやりと灯りが 流れてゆく 踏切をいくつも過ぎ 反対を行く電車と バタンとすれ違い あっという間に目的地 今のところ  鬼は見かけない

          虎の巻

          懇切丁寧な指南書 これさえあれば 人に聞かずとも さも分かった風に 独り立ちできるかと言えば 肝心なところは 隠れていたり 飛ばしてあったりで そう甘くはなさそう 行き詰まっても 何とかなるのは 周りの方のおかげ  この先も 感謝の心で 暮らしたい  

          虎の巻

          分別

          これは資源か そうでないのか あらゆるものを 手に取り眺め ハンドブックを確かめる日々 ようやく一巡 ホッとする いかに 今まで 大雑把だったか 入手時点で 見越しておけばと つくづく顧みるものの 回収品を度忘れしたまま 新たな買い物 減っては増える 資源の山に 頭を抱え 同じことをまた繰り返す

          誤解

          生真面目な体組成計 背が追いついた子との 取り違えに気付かず 今日も律儀に計算をはじく 母は実態にそぐわず 奇妙に若返り 娘は測定の度に 微妙な顔をする スタイリッシュな姿で 顔文字も表す おちゃめな機械に 小声で 間違えてますよと 伝えてみるが 返事はない きっと 日々 大混乱で それどころではないのだ

          お土産

          子どもの頃 叔母の手土産は 決まって シューアイスだった 仕事帰りに どこで買ってくれていたのか 当時は気に留めるでもなく 毎回 マロンかあずきを選んでいた 今でも売っているのかも知れないが 残念ながら 見かけない そして ご近所からのおすそ分けで 我が家は誰ひとり 何年経っても 一度も訪れたことがないというのに すっかりお馴染みのお菓子もあった おせんべいの中に 紙に包まれた 貝のお守りや でんでん太鼓などが 入っていて 何が出るのか楽しみだった 時折ふとした折に見か

          城趾

          近づく程に 遠ざかる きっと 分かれ道をことごとく 選び間違えているのだろう これでは斥候も務まるまい あたかも往古の造り手に 試されているかのよう ようやく頂に到り 四方を見渡す この景色の中で 戦い抜いた人々を思う 資材を運ぶのにも 難儀したに違いない 雨水をためていたのか 秘密の抜け道を設えていたのか 後世の素人にすれば 何もかも謎だらけ 草むらの間を駆け下り ひび割れた舗道に出る いつかは この道も 見分けがつかなくなるのだろう

          迂回

          分かりやすくて良いと思った道は 意外と遠回り どこにつながるのか 見通しがきかず 試行錯誤して覚えた方が 断然近道 目先のことばかり追わず 信念を持って地道に取り組めば 自ずと結果は付いてくる そんなことを思いながら ちょっと休憩  おむすびころりんの昔話さながらに お弁当のおかずをうっかり落としたら すかさず転がって行きそうな 斜面にて

          鯉幟

          菖蒲の花がちらほら咲いて そろそろ登場するのではと お庭のポールに注目していた 晴れた日に ついに現れたのは 勇壮に風にはためく幟旗 輝かしい未来への 願いのこもった一幅と お孫さんから 普通のも欲しいと せがまれたのか かわいらしい 一組の鯉のぼりも 上の方で泳いでいる 粽や柏餅と並んで 皐月の頃の楽しみ

          合掌

          どうしてもと 手を引かれ 最後は甘い香りと旗とで その場所へたどり着いた 入ってすぐ おやっと気づいた ふさふさの縞模様の子たちが 隅の箱にそっと寄せられていた 働き者と見込まれて いつの間にやら運ばれて 目も眩むようなお花畑で 夢見心地で過ごしたのだろう 春の味覚を堪能できるのは 無数の命と引きかえなのだ 分かりきったことなのに あまりに鈍感だった 子どもの頃に行った先では もれなく練乳を渡され 苺そのものの味は 正直のところ わからなかった 蜂を見かけた覚えもない