秋桜

日々思い浮かんだこと、幼い頃からの出来事などを綴っています 好きな作家(敬称略)・作…

秋桜

日々思い浮かんだこと、幼い頃からの出来事などを綴っています 好きな作家(敬称略)・作品  江國香織「なつのひかり」  高田郁「あきない世傅」  若松英輔「藍色の福音」 好きな映画  “The Notebook", “The Polar Express" 「まちの本屋」

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  • 遠い記憶

    こどもの頃からの出来事を綴ったもの (不定期更新)

記事一覧

登坂

スーパーの横では 焼き立てパンの匂い おそば屋さんの横では ふんだんな鰹節の香り 一瞬 クチナシの甘やかな誘惑 どこに咲いていたのだろう 振り返る余裕はなく すり鉢…

秋桜
19時間前
1

ひよこ

今では考えられないが かつては 小学校の門前に 下校時刻にちょうど合わせて ひよこ売りのおじさんが来ていた 名札の裏に大事にしまっていた 公衆電話用の小銭でも 買え…

秋桜
1日前

不如帰

ふいに 聞こえた 鳴き声は キョッキョ キョキョキョキョ もう一度と 耳を澄ませる テッペンカケタカ トッキョ キョカキョク そう聞こえなくもない ウグイスもまだ近…

秋桜
3日前
1

回顧

1年前 半地下の窓ごしに 川沿いを通り行く人の姿を ぼんやり追っていた きらきらした靴 不思議な問いかけ 捉えどころのない 自分の姿 なぜかふと思い出す 置き物の狸

秋桜
4日前
1

残響

四阿を後にして 池の方から 聞こえてきたのは 久しぶりの重低音 おたまじゃくしが すくすく育って ソロコンサート 聴き手は 通りがかりの 私だけ 拍手を忘れて ごめんな…

秋桜
4日前

撹拌

お試しのジュース屋さん 届いたばかりのブレンダー あっと言う間のスムージー 瞬く間に売り切れ また作ろうと アイディア募集 今しかできない季節もの 意外な仕上がり 笑…

秋桜
6日前
1

我是…

時折 わからなくなる 私はたしかに ここにいて 頭で考え 動いている 私は私 ただそれだけ トランプの手札のように 取り換えはできない あるところまでは地の姿  途…

秋桜
7日前

曲芸

あまりに驚き 後ずさり なぜ ここでブランコを? 大きな蜂がただ1匹 雨戸の紐にちょんと乗り 夜風に吹かれてご満悦 写真を拡大してみると いたずら顔に見えてしまう …

秋桜
8日前
1

希釈

用事は3つ まとめてしまおう ついでの1つ これが曲者 ただ座って前を観る それだけの筈が 強烈な展開に圧倒され 終わってから 誰一人  言葉を発しなかった 持てる者 …

秋桜
9日前

源流

初夏の山あいを 縫うように 列車はゴトゴトと進む 終点で待ち合わせのはずが 乗り継ぎ前に合流 ロングシートの向かいに 懐かしい顔 十年ひと昔 初対面の子は照れて 帽子…

秋桜
11日前

里山

水温む 田んぼの横で 麦の穂が 風に揺れている 行き来する度 発見がある 奥に連なる山々 教会の十字架 背の高いお地蔵さま 次は梅雨時 紫陽花の葉の上の カタツムリ…

秋桜
12日前

窮鼠

ある時 米びつ代わりの タッパーの蓋が欠けていた よく見れば歯型 まさかと絶句 プラスチックなど 美味しくなかろうに 聞けば 前の借り手は 贔屓にしていて 時に 高級…

秋桜
12日前
1

加速

爽やかな風を受けて 走り出した朝 犬を見かけて減速 花時計を目がけて加速 あっという間にゴール なのに 帰りはすっかり牛歩 同伴者の企てで うぐいすきなこのお団子を …

秋桜
13日前

神経

図太くは無く か細くもなく ただ鈍感なだけ トランプの10倍以上 めくっては確かめ 元に戻しての繰り返し 時折は手を休め 新緑を眺め 日の陰りを感じつつ 淡々と続ける …

秋桜
2週間前
1

余韻

日曜午前のレッスン前 せめて反復練習すべきところ 鍵盤に向かうのはごくわずか お稽古後のお菓子の準備に むしろ時間を割いていた いかにお菓子の妖精の曲でも 力を注ぐ…

秋桜
2週間前
2

待ち時間

電車はちょうど出たばかり 次は小一時間も先 昨日と同じに違いないのに 自販機の並びを眺め 横切る雀を目で追ううちに 反対側が先に到着 また静かになる 読みかけの本を…

秋桜
2週間前
1

登坂

スーパーの横では
焼き立てパンの匂い

おそば屋さんの横では
ふんだんな鰹節の香り

一瞬 クチナシの甘やかな誘惑
どこに咲いていたのだろう

振り返る余裕はなく
すり鉢のような坂を立ち漕ぎ

雨が目にしみる日もあれば
信号待ちで 膝頭が火傷しそうなほど
陽が集まる時もある

真夏が気掛かりな
木陰のない舗道

切り開く前は
木が生い茂る
斜面だったはず

開店前のお店と
がらんどうの建物の脇とを

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ひよこ

今では考えられないが
かつては 小学校の門前に
下校時刻にちょうど合わせて
ひよこ売りのおじさんが来ていた

名札の裏に大事にしまっていた
公衆電話用の小銭でも
買えそうな値段だった

ふわふわした あどけない姿に
心奪われ 大抵の子は足を止める

ご近所のお姉さんも その1人
こっちがオスでそっちがメス
と説明を聞き 意を決して1羽を選び
飼いはじめてから 逆だと判明

やがて コケコッコーと

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不如帰

ふいに 聞こえた 鳴き声は
キョッキョ キョキョキョキョ

もう一度と 耳を澄ませる
テッペンカケタカ
トッキョ キョカキョク
そう聞こえなくもない

ウグイスもまだ近く
さわやかな風
青葉の森

回顧

1年前 半地下の窓ごしに
川沿いを通り行く人の姿を
ぼんやり追っていた

きらきらした靴
不思議な問いかけ
捉えどころのない
自分の姿

なぜかふと思い出す
置き物の狸

残響

四阿を後にして
池の方から
聞こえてきたのは
久しぶりの重低音

おたまじゃくしが
すくすく育って
ソロコンサート

聴き手は
通りがかりの
私だけ

拍手を忘れて
ごめんなさい

撹拌

お試しのジュース屋さん
届いたばかりのブレンダー
あっと言う間のスムージー
瞬く間に売り切れ

また作ろうと
アイディア募集

今しかできない季節もの
意外な仕上がり
笑顔のひととき

我是…

時折 わからなくなる

私はたしかに ここにいて
頭で考え 動いている
私は私 ただそれだけ

トランプの手札のように
取り換えはできない
あるところまでは地の姿 
途中からは貝のよう

記憶の抽斗は
ミキサー車のごとく
ゆっくりと
昔のことが手前に
最近の出来事は奥へ
ぐるぐると回転

暗闇から抜け出し
まばゆい光の中へ

それでも不自由と感じならば
自ら課した枷のせい

曲芸

あまりに驚き 後ずさり
なぜ ここでブランコを?

大きな蜂がただ1匹
雨戸の紐にちょんと乗り
夜風に吹かれてご満悦

写真を拡大してみると
いたずら顔に見えてしまう

どんなに隠れたつもりでも
ぐるっと一周 隙だらけ

いつまで 滞在する気だろう
蛍の光を聞かせたい

希釈

用事は3つ
まとめてしまおう
ついでの1つ
これが曲者

ただ座って前を観る
それだけの筈が
強烈な展開に圧倒され
終わってから 誰一人 
言葉を発しなかった

持てる者 持たざる者
極限状態に追い詰められ
顕になるのは
人間の 愚かしさ
観る側も 自分の内面を裏返され
蓋をしていた醜い心を
直視せざるを得ない
容赦なく揺さぶられる感覚

他の記憶と足して分れば大丈夫とは
到底言い切れなかった

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源流

初夏の山あいを 縫うように
列車はゴトゴトと進む

終点で待ち合わせのはずが
乗り継ぎ前に合流
ロングシートの向かいに
懐かしい顔

十年ひと昔
初対面の子は照れて
帽子を深くかぶる

大河の一滴は
落ち葉の積もる
深い森から

岩間を流れる
川のしぶき
山鳥の声

姿なき ご先祖さまへの
感謝の思い

里山

水温む 田んぼの横で
麦の穂が 風に揺れている

行き来する度 発見がある

奥に連なる山々
教会の十字架
背の高いお地蔵さま

次は梅雨時
紫陽花の葉の上の
カタツムリにも
出会えるだろうか

窮鼠

ある時 米びつ代わりの
タッパーの蓋が欠けていた
よく見れば歯型
まさかと絶句
プラスチックなど
美味しくなかろうに

聞けば 前の借り手は
贔屓にしていて 時に
高級アイスをふるまって
すっかりなついていたらしい
挙げ句は天井裏の運動会

大家さんに相談してみたら
何やら取り出し
大丈夫だ これで
人さ いねえところへ
逃げてゆくべと
しんみり言うのだ

見たこともない
鮮やかな色の特効薬

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加速

爽やかな風を受けて
走り出した朝

犬を見かけて減速
花時計を目がけて加速
あっという間にゴール

なのに 帰りはすっかり牛歩
同伴者の企てで
うぐいすきなこのお団子を
平らに運んで お土産に

趣旨に賛同は得たものの
すぐに息切れ ついつい歩き

昼前のアスファルトでは
影絵のオオカミで遊ぶうち
風のように 追い抜かれ

相当地道に続けないと
どうやら勝ち目はなさそうで
密かに練習したくなる

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神経

図太くは無く
か細くもなく
ただ鈍感なだけ

トランプの10倍以上
めくっては確かめ
元に戻しての繰り返し

時折は手を休め
新緑を眺め
日の陰りを感じつつ
淡々と続ける

家路に着く頃
空は むらさき
続きは明日
気付かずにいた
不思議な景色

余韻

日曜午前のレッスン前
せめて反復練習すべきところ
鍵盤に向かうのはごくわずか

お稽古後のお菓子の準備に
むしろ時間を割いていた

いかにお菓子の妖精の曲でも
力を注ぐポイントは 
そこでは無かろうに

弾き込んでくる一番手と
あまりに暢気な二番手と
目指すところが異なる生徒

後年 楽譜に残る 書き込みに
匙を投げずに教えてくれた
師匠のありがたさを実感

一月遅れのお祝いの
ケーキの焼ける匂い

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待ち時間

電車はちょうど出たばかり
次は小一時間も先

昨日と同じに違いないのに
自販機の並びを眺め
横切る雀を目で追ううちに
反対側が先に到着
また静かになる

読みかけの本をおもむろに開く
栞は後半 往復すれば
読み切れるだろう

先達にも 駆け出しの時期があり 
その後 想像し難い出来事に 
何度も見舞われながら
人や自然との関わりの中で
生きていたことに気付かされ
誰しも順風満帆な時ばかりではないと

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