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学生の頃の自分。

 小説の中の主人公にさえ嫉妬してしまう。

 10ページ目で悲劇が起きても、190ページには喜劇に変わり、ハッピーエンドで幕を閉じる作品もある。
 自分もそんなようにハッピーエンドの物語になれば・・・なんて考えることがある。

 さらには、彼らのストーリーにはページ数という名の終わりが見える。良くも悪くも、どちらに転んでも終わりが来る。それも読み手からしたらたかが半日くらいのこと。
 今の自分は10ページ目のどん底。いつになったら190ページまで読み進められるのだろう。
 誰がこのページに栞を挟み、本棚にしまってしまったのだろう。


 夜になると、最近思うことがある。

「朝になんてならなきゃいいのに」

 この前、友人と2人でキャンプに行った時のこと。いや、ここでは親友と呼ばせていただこう。
 真夏の日差しが照りつける暑い日だった。
 その親友と2人でキャンプに出かけ、テントを建て、日も落ちかかったあたりにキャッチボールをした。彼はサウスポーだが、あいにく僕は右利き。僕のグローブしかその場にはなかった。左手にグローブをはめてもらって、左手で投げるという、大変な思いをさせてしまった。
 しかし、そんな親友と呼べる人と語り合いながらキャッチボールをするのは僕の夢だった。
 動画だって撮った。いつか編集してよりいい動画を作ると約束もした。

 暗くなる前に炭を起こし、バーベキューの準備をした。
その夜のこと、夜に馴染む音楽をかけ、2人で語り合った。

「朝になんてならなきゃいいのに」

心の底から思えたこの感情は、何の言葉に置き換えればいいだろう。いや、わざわざ言葉になんてしなくてもいいのだと思う。
 あの時、あの場所で2人で共有できた感情はあの時の2人だけのもので、それを言葉にしたところで他の人に伝わるはずがない。だから、言葉にするのはやめておこう。

 話を戻すと、

「朝になんてならなきゃいいのに」

と思うこの感覚はあの時と今とでは180°違うということだ。
 あの時は時間が止まれば一生このまま、なんて馬鹿げた幻想を抱いていたが、今は違う。

 朝なんて来なければ、みんなと比べることもない。みんなが活動している時間帯に自分が何もしていないから辛くなる。
 やればいいってことは自分が1番に分かってる。

 こんな嫌いな自分を「殺してしまえ」とさえ思ってしまう。でも、臆病で人の目ばかり気にしてしまう自分は、そんなことを口に出すことはできない。文字に起こすだけで精一杯なんだ。

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眠れない夜に

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