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難問解くな

算数について長男は、受験本番が始まるまでは割と簡単に難問を捨てている様子だった。しかし、本番に突入し、不調が続くようになると、逆に「算数でこれ以上落とさないようにしなければ」と力が入ってしまったのか、捨てにくそうな様子もあった。

この頃は親のほうもやや神経質になっていたと思う。普段の会話でも「落ちた」とか「落とした」に敏感になり、また、物が落ちるたびに苦笑いしていた。そういう時は、親の私が受ければ落ちるってことで、と思うようにしていた。

あの手この手で捨てさせる

正直、問題を捨てるアプローチは、正しいのかもしれないが、かなり抵抗があったのも確かだった。今でもやっぱり後ろ髪をひかれるし、試験を受ける当の本人にはもっと抵抗があったのではないかと思う。

夫 :いいか、お前は国・社・理があるんだから、リードはそっちで取って、算数では間違ってもリードを取ろうとしてはいけない。先頭集団から離れすぎないようについて行けば十分。

マラソンに例えて説得を試みていた。

私 :バスケと同じでさ、スリーポイントシュートはそりゃ入ればカッコいいけど、着実にレイアップで決めて得点稼ぐ必要があるってことなんじゃない?算数はレイアップで行ってみたら?

夫 :いいか、合格者平均点7割ってのは、C問題にも手を出して点を取り損ねた子たちも含まれての結果だ。お前が着実にAとBを抑えてる間に、周りが勝手に落ちてくれるんだよ。

酷い話に聞こえるが、ここで伝えたかったのは、要するに長男がこのパターンで失点してきたということである。

そしてこれと同じ話は、中学受験 算数専門プロ家庭教師・熊野孝哉が提言する難関校合格への62の戦略 の中にも書かれている。p.108に「高得点を目指すのは弱者の戦略」とあるのだが、やっぱりそうなのだ。

ただこう書きながらも、何かひっかかりはする。下手にチャレンジせず、ミスをしないことを第一に掲げているようでせせこましい。ただ実力が十分にあればこういったことも考えなくて済むといえばそれまでだとも思う。

オリンピック競技に例えれば、予選は通過さえすれば良く、敢えて難易度の高い技に挑戦して失敗やケガのリスクを負うようなことはしないというような感じだろうか。

捨てさせるのも賭けだった

ある程度「捨てる」戦略がうまくいったように思った日、そのように夫に声をかけてみたら、夫が「いや、でも捨てさせるのも駆けだよ。今日やってみて上手く行ったからいいけど、ダメだったら納得しなかったかもしれない。そうしたらもう打つ手がなかったかもしれないよ。」と言ったのだ。

私の方はそんな心配は全くしていなかったので意外だったのを覚えている。「捨てる」を正しい判断として決行させるのも、なかなかの覚悟が必要だったようだ。

そして遂に、なぜ長男が本番で捨てられなかったかが判明することになる。