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「コーヒー飲みにおいでよ」が気軽に言えるシェアオフィスを実現できた、カフェノマの世界観とは

 G Innovation Hub YOKOHAMA(以下G)の日常に欠かせないモノの一つがコーヒーです。キッチンには焙煎機をはじめとした器具が並び、「コーヒー、飲まない?」の一言をきっかけに、入居者同士の交流が始まります。その場を手がけたのが、夫婦ユニット「カフェノマ」のディレクターとしてコーヒーのある心地よい空間を提案している刈込隆二さんです。関内エリアに住みつつも、Gと関わるまで地元のコミュニティとの接点はなかったという刈込さん。交流会に顔を出し、新たな仕事仲間との出会いも楽しんでいます。


「やっぱり自分の表現をしたい」現実と本音のギャップが膨らむ日々

 複数のデザインハウス勤務や事業会社のマーケティング職を経て2006年にマーケティング支援やデザインを請け負う「オトノマ株式会社」を創業しました。学生時代はデザインとは無関係のことを学んでいましたが、ちょうど社会に出る頃、Macが一般の人にも手の届く価格帯になったんです。最初は遊び道具として触っていましたが、もともとデザインに興味があり、就職もその道に進みました。制作会社で仕事を受ける側でキャリアをスタートし、その後事業会社に移って発注する側を経験します。
 独立後はクリエイティブディレクターとして活動していますが、本質的には自分を表現したいと思うタイプ。現実はそうもいかないので、どこかで自分を抑えて仕事をする。でもある時、「やっぱり自分の表現をしたい」という気持ちが大きくなっていったんです。

身近な題材で無理なく続ける自己表現。SNSのフォロワーは10万超に

自身の仕事観について語る刈込さん

 そんな中2012年に「オトノマ」と平行して、パートナーとなった妻とのクリエイティブユニット「カフェノマ」の活動を始めました。きっかけは、彼女の趣味のコレクションです。前職が客室乗務員だったこともあって、彼女は世界中で集めた食器やコーヒー道具をたくさん持っていました。それらが面白かったので「コーヒーと暮らし」をテーマに、彼女がスタイリングを担当し、僕が写真を撮って、Instagramにあげるようになったんです。
彼女の強いこだわりには、いまでも驚かされます。好き嫌いがとてもはっきりしているんです。実は、「カフェノマ」の活動にお互い100%満足しているわけではありません。多少の嗜好の違いもあって、納得しているのは互いに6割くらい。だけどそこにある種の緊張感があって、いつもせめぎあっている感じです。お互いに妥協しないんですね。彼女の世界観を取り入れないとカフェノマは成り立たないし、僕が撮らないと作品にならない。互いを取り入れるけど、それぞれの表現もないがしろにしたくないという…。
 現在、Instagram(@cafe_no_ma)のフォロワー数は10万を超えています。テーマが良かったのか、開始直後から反応がありました。海外のフォロワーも多く、言葉を介さずとも「コーヒーで繋がれる」ことを実感しました。ただ、必死にやってきたという感覚はありません。身の回りにあるものを題材にして、無理なく続けられることをいつも心に留めてきました。「カフェノマ」は、自己表現の場所としてスタートしましたが、いまではクライアント企業とのタイアップも多くこなしています。ご依頼いただく際は、あらかじめ世界観を共有できているので、プロジェクトもとてもスムーズなんです。

会話が弾んだ時に片手にコーヒーがあるような楽しい雰囲気をイメージ 

息抜きの場として、交流の場としてGには欠かせないキッチンスペース。コーヒーがあると、気軽にお裾分けしたり、淹れてもらったりと、コミュニケーションのハードルが一気に下がる

 Gとのつながりはファウンダーである相澤毅さんと偶然出会ったことがきっかけです。そのころのGは構想段階で、「一角にキッチンスペースを設けるので、コーヒーについて提案してほしい」とお声がけいただいて。「カフェノマ」として、コーヒー器具の選定や、コーヒーカップをモチーフにした特注のシェードランプ、ブラックボードに描く絵などを提案しました。Gに入ると、キッチンの背面に並ぶコーヒーの器具が目に入ります。全体を俯瞰した時に「かっこいいな」って言われるような空間にしたくて、シックな見た目の焙煎機やコーヒーミル、コーヒーメーカー、水出し用の器具を並べました。一般的なオフィスで目にするのは、ボタン1つで淹れられる全自動のコーヒーメーカーが多いと思います。みなさん手間を掛けたくないですよね。でもこのスペースでは時間をかけることにむしろ意味があると思いました。こんなシェアオフィスはGだけかもしれません(笑)
 Gをつくる過程で僕らは最後に合流しましたが、「なぜこんなに仲がいいんだろう」と思ったほどメンバーが通じ合っていました。そんな空気感も手伝ってうまれた空間のような気がします。それぞれのワークスペースがあって、息をふっと抜いてふらっと立ち寄った場所で何か話が弾んだ時に片手にコーヒーがある。「シェアオフィスにきて」とか「見学にきて」だと言われたほうは構えてしまいますが、「コーヒー飲みにきて」だと気楽に感じますよね。コーヒーが何かのきっかけになれば良いなと思います。

オープンして間もないころ開催されたコーヒーレクチャーナイト。講師は刈込さんが務めた。Gの入居をきっかけに、コーヒーの奥深さにハマり、豆や淹れ方に凝る人も多い。

ここに来れば誰かとつながれる―。「GはまさにHUBだと思う」

 出身は千葉で、独立する前は都内に住んでいました。学生時代は横浜市内の大学に通ったり、十数年前からは関内エリアに住んでいますが地元という意識は今もありません。でも、周辺には古い建物が残り、繁華街があって海もある。生活や文化や自然がギュッと集まった場所で、他になかなかない街だと思っています。Gにくると建築家やエンジニアなどいろいろな人がいる。コミュニティがしっかり根付いている場所と分かってから、人材を探す時にはGが頭に浮かぶようになりました。普段は独りで仕事していますが、チームで臨むプロジェクトの場合、メンバーの顔を見たいこともあります。近場で作業をしていれば見に来ることもできますよね。Gの交流会でいろんな方と話をしてスキルセットも分かり、今後仕事でご一緒したい人もいます。ご近所感があって、ここにくれば誰かがいる、誰かに相談するとその誰かが誰かを呼んでくる。GはまさにHUBだと思うんですよね。人材バンク的なことができたら面白いんじゃないかな。

関内のおすすめのスポット…日本大通りなどの銀杏並木
秋の風の強い日には黄金色に色づいた銀杏の葉がいたるところで舞っていてとてもきれい!それを見るために関内へ来るのも面白いと思う。自転車でやってきて、網を片手に銀杏を採っている地元の人の姿も…!


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