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錆びた鉄骨 三月は
朝の硝煙のもう幕が高く舞い
太陽は見えない
長く 錯覚の影が延びる
光が薄く投影して 風はない
朝陽がゴツゴツの地肌を晒すように
傷口をさらす
あゝ今日はいつなのか

遠くに煌めく閃光
その瞬間 鈍い響
地核をゆるがすように響いている
錆びた鉄骨
ごとごうごうと揺れると
バサバサと
ふっとむせ返るような蝶の羽ばたき
油くさいにおい
頭から被る
むせる
くろくろしろしろ
銀色に輝くものが眼の前を覆い
怪奇な花が花びらをひらく

あの炸裂した閃光の下で 血血血ちちちち血
来世はもう非われない
血なまぐさい予感 叫び
禿げおちた黒いビル
空気の断層が黒い涙のなかに沈んでいく
もうあの下で人は
呪いの声のもとで幻となっているのか

焼けただれた顔 恥毛 性器
まとわり付く一片の布切
傷口を纏えない
女と子ども
砕かれた青白い顔だった顔
恥ずかしさを覆うことも許されず
剥ぎ取られたものは命よりも
人間の尊さよりも性よりも
もっともっと普通の人の声

何時までたっても数えることが出来ない
無限に近づく呪われた憎しみ
異様な記憶
焼けただれた性器と笑い声
無数の悔恨
絶えることない祈り
脳髄に消えない神になれない  怒り
あゝあゝ
戦いは終わる(憎しみの真の終り)日はやがて来るのか

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