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3)R体アルファリポ酸はピルビン酸脱水素酵素複合体の補助因子

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術3

ミトコンドリアを活性化して体を若返らせる医薬品やサプリメントを解説しています。

【アルファリポ酸は理想的な抗酸化剤】

 アルファリポ酸(別名:チオクト酸)は、多数の酵素の補助因子として欠かせない体内成分です。特に、グルコース(ブドウ糖)の解糖で生成されたピルビン酸をアセチルCoAに変換するピルビン酸脱水素酵素複合体の補助因子として、ミトコンドリアでのエネルギー産生に重要な役割を果たしています。

 植物と動物(人間も含む)の体内で少量産生されていて、動物では脂肪酸とシステインから肝臓で合成されます。1950年に牛の肝臓から分離されました。

かつてはビタミンB群のビタミンに分類されていましたが、体内で合成されるため、現在ではビタミンとは分類されず、ビタミン様物質と認識されています。

 抗酸化作用、糖代謝を促進する作用、体内の重金属を排出する作用、糖尿病の神経障害を改善する効果などがあり、糖尿病や動脈硬化関連疾患(虚血性心疾患や脳梗塞)、多発性硬化症、認知症などの疾患の予防や改善に効果があることが報告されています。

特に活性酸素などのフリーラジカルによる酸化障害が発症や病態進展に関連している疾患の治療に効果が認められています。


 日本国内では医薬品(適応は「激しい肉体疲労時にリポ酸の需要が増大したとき」など)としてのみ取り扱われていましたが、2004年6月の食薬区分改正により、一般のサプリメントに配合しても良い成分となりました。

糖代謝の促進や抗酸化作用があるので、ダイエット効果や抗老化や美容を目的としたサプリメントとして人気があります。


アルファリポ酸は分子内に2つのイオウ原子を含み、酸化型と還元型(ジヒドロリポ酸)の2つの型があります(図)。

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図:アルファリポ酸は還元されてジヒドロリポ酸になる。


 吸収されたアルファリポ酸は体内で還元型のジヒドロリポ酸に変換されます。 同じイオウを含むグルタチオンは、還元型しか抗酸化作用を示さないのに対して、アルファリポ酸は、酸化型も還元型も両方とも抗酸化作用を示すのが特徴です。

2つの硫黄原子が酸化と還元のサイクルを形成してフリーラジカルを消去するからです。 抗酸化剤としてフリーラジカルを消去し、遷移金属をキレートして排除し、細胞内の抗酸化物質であるグルタチオンやビタミンCの量を増やす作用があります。


理想的な抗酸化剤とは、

1)食事から摂取できる、

2)細胞内や組織内に移行して効果を発揮する、

3)細胞膜と細胞質の両方で働く、

4)他の抗酸化物質の働きを高める、

5)毒性が低い、といった特徴をもつものです。



 アルファリポ酸はこれらの全ての条件を満たす、唯一の天然抗酸化物質と言われています。すなわち、アルファリポ酸は抗酸化剤として次のような特徴を持っています。

1)活性酸素や一酸化窒素ラジカルなどのフリーラジカルを直接消去します。

2)グルタチオン、ビタミンC、ビタミンEの抗酸化力を再生します。これらの抗酸化物質は酸化されると抗酸化力を失いますが、ジヒドロリポ酸はこれらの酸化した物質を還元して、これらの抗酸化力を再生します。アルファリポ酸は脂溶性と水溶性の両方の性質をもつので、ビタミンC(水溶性)とビタミンE(脂溶性)のどちらの還元にも寄与します。

3)グルタチオンの合成酵素での産生を高め、グルタチオン産生に必要なシステインの細胞内取り込みを促進し、グルタチオンの産生を高めます。

4)フリーラジカルを発生する鉄や銅などのフリーの金属イオンをキレート(結合)することによって活性酸素の産生を抑えます。

5)多くの抗酸化物質は親水性(水溶性)か疎水性(脂溶性)のどちらかの性質しか持ちませんが、アルファリポ酸は親水性と疎水性の両方の性質を持ちます。したがって、細胞膜でも細胞質でも核でも働き、蛋白質や脂肪など全ての細胞内成分の酸化を抑制します。血液中の物質の酸化も抑制します。

6)酸化ストレスを軽減することによって、発がんや炎症性疾患の増悪に関連する転写因子のNF-κBの活性化を抑制します。


以上のような複数の機序によって、アルファリポ酸は強い抗酸化作用を示します。


【R体アルファリポ酸はピルビン酸脱水素酵素複合体の補助因子】

 アルファリポ酸にはR体とS体という2種類の光学異性体(鏡像異性体)が存在します。光学異性体はちょうど右手と左手のように鏡写しの関係になっています。つまり、R体を鏡に写すとS体になるという関係です。

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図:アルファリポ酸にはR体とS体という2種類の光学異性体が存在する。体内で生成されるアルファリポ酸はR体のみでS体は存在しない。

 体内で生成されるアルファリポ酸はR体のみで、S体は天然には存在しません。しかし、アルファリポ酸を人工的に合成するとR体50%、S体50%の化合物が出来上がります。これをラセミ体と呼びます。ラセミ体からR体のみの単離が可能であり、R体だけのサプリメントも販売されています。

 アルファリポ酸の場合、S体やラセミ体と比較して、R体の方が生物活性(=効果)が高いという研究結果が数多く報告されています。アルファリポ酸がミトコンドリアを活性化するのは、ピルビン酸脱水素酵素の補酵素として作用するからです。

ピルビン酸脱水素酵素を活性化する作用はR体のみで、逆にS体のアルファリポ酸はピルビン酸脱水素酵素の活性を阻害します(図)。


抗酸化作用だけが目的であればラセミ体でも目的を達成できますが、ミトコンドリアを活性化する目的ではR体のみのアルファリポ酸を使った製品を摂取することが重要です。

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図:グルコース(ブドウ糖)が細胞質内で解糖系で分解されてピルビン酸になる。ピルビン酸はミトコンドリアに入ってピルビン酸脱水素酵素によってアセチルCoAになってTCA回路で代謝される。R体アルファリポ酸はピルビン酸脱水素酵素の活性を高めるがS体アルファリポ酸は阻害する。


体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術 記事まとめ

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