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少女都市生活

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兵庫県と東京都で活動する、少女のための劇団 【 少女都市 】がお送りします、5分で読める、小さな物語。他 http://girlsmetropolis.com/
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#小説

物言わぬ獣

物は言わぬがワンワンとは吠える獣と一緒に暮らしている。 犬がうちに来たのは約1年前。父親…

少女都市
4年前

「永遠に視点が交錯しなくても“痛み”があればわかちあえる」佐々木ののか

少女都市 第8回公演『光の祭典』によせて、文筆家の佐々木ののかさんから脚本の書評をいただき…

少女都市
4年前
3

いなくなってしまった君へ、光の祭典プロローグ(小説)

この世の中で生きていてよかったと思えるすべてのことをしよう。 ともに眠ろう。そして起きよ…

少女都市
4年前
4

立教ラブストーリー

ラブストーリーを書こうと思っている。あの一瞬、目と目が合い、世界が止まった日のことを。 …

少女都市
5年前
4

人生についての覚え書( 『永浜』に寄せて )

胸に苦しいものがあるの。誰かわたしを抱きしめて。と、わたしは泣くけれど、本当にわたしを抱…

少女都市
5年前
5

21歳の下書きたち

高校生の頃から憧れていた批評雑誌に劇評が載った。自分へのご褒美に渋谷で油そばを食べ終わっ…

少女都市
5年前
10

続・永すぎた春

放蕩の限りを尽くしたのだから、そろそろこの生活も終わりにしよう。 と、つぐみは思った。 6月の晴れた夜のことだ。 ・ つぐみが住むのは小さな軽量鉄骨のアパートだ。裏が大家の家で、窓を開けると庭、一面の花畑。それが気に入ってここに住んだ。引っ越してきた日も、ニホンアジサイが咲いていた。ちょうど1年前のことだ。その日は確か雨だった。 この生活にさよならを告げるため、つぐみはナスを切った。夏が近づき、さすがの東京世田谷でも、野菜は安くなってくる。ナスは3本150円。ミョウ

神戸はすべて汽笛の中にある

わたしの生まれ育った町は海辺の、というか、ただ海の横にあると言った方がいい、住宅街だ。 …

少女都市
6年前
9

IVY

「蔦が絡まる」 と、カノンは言った。 ・ 深夜1時半、池袋はメトロポリタン口を出てすぐの…

少女都市
6年前
6

桜の園の亡霊たち(コラージュ日記)

コメディが難しいのは、もう全部このくだりいらんのではとカットしたくなるとこ。書き終わらな…

少女都市
6年前
11

おとうと日記

「あんね、こういうことあったんよ」 と弟に電話すると、だいたい、「お姉ちゃんそういうの多…

少女都市
6年前
9

とびきりはね上げガールズライン

これから思っていることは全部、小説にしてみることにした。 と、ツイッターに書こうとして、…

少女都市
6年前
9

ごめんねモダンジャズ(寺山修司は嘘つかない)

「初めて、小説を書いてみてわかったけど。小説ってこりゃ確かにモダンジャズの手法だな。寺山…

少女都市
6年前
8

ごめんねモダンジャズ(寺山修司の言うとおり)

「初めて小説を書いてみて気がついたけど」 と、彼女は言った。 「寺山修司が言う通り、ありゃモダンジャズの手法だね」 そういうと彼女・橘文穂(たちばなふみほ)は抹茶ラテをすすった。 埼玉の地は寒冷だ。池袋から電車で20分。降り立った瞬間少し驚く。乗車時間からすると、ちょっと信じられないぐらい、芯から冷える厳しい大地だ。そしてその遥かなる武蔵野には、大した喫茶店がない。いや、正確には一軒だけ、先月出来たばかりの、駅前のスターバックスがある。電車でたった20分。池袋に行けば