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目の使い方が衰えた私達

現代の私達は、確実に、目の使い方が弱くなってきています。

『スマホやPCの見過ぎ、ゲームのやり過ぎで目が悪くなっている現代人が増えた』
『ブルーライトが目に良くない』
など、よく言われるような話ですが、
私が言いたいのは視力的な衰えのことではありません。

眼球運動、情報の読み取り方、見た情報を処理していくこと、
そういった能力の低下のことです。

人間は、目で見た情報を受け取り、頭で考え処理しながら手指を動かしています。
勉強や、文章を書いている時、作品をつくっている時等、
目と頭と手の同時処理によってそれらのことがなされます。

目から与えられた刺激を頭、つまり脳が処理し、脳から新たに発信された刺激が手に伝わり、行動となっていくのです。

目・頭・手をうまく連動させられる人は勉強もよくでき、頭の回転も速い人が多いです。

ですが、目・頭・手の連動がうまくいかなければ、できないことが多くなってくるのです。

・勉強しても理解できない
・周りを見ていなくて、近くの物や人によくぶつかる
・聞いたことを急いでメモしたいのに、すぐに書けない
・本を読むのが難しい
ちょっとしたことかもしれませんが、困ったことが何気ない場面で何かと増えてくるのです。

もちろん世間一般に言われる、スマホやPCの見過ぎや、ゲームのやり過ぎ等も大きな要因ではあります。
これらのことをしている時、人はまばたきが減ります。
目を見開きっぱなしになるので、眼精疲労やドライアイの原因だとよく言われますね。
その症状で目がかすんで情報をすぐに見れなくなる等は皆さんも分かっていることと思います。

私が心配するのは、視野が狭くなっていくこと、眼球の動きが鈍くなっていくことです。

子どもの発達相談でよく、
・情報をよく見ていない
・周りを見ていない
・文章を読もうとしないから文章問題が解けない
・国語が苦手、本読みで読む箇所をすぐ間違える
・近くに必要な物が置いてあるのに、全然気付かず「ない、ない」と言って探している
・車が近付いてきているのに無視して道路に飛び出していってしまう
等々、『子どもがよく見ていなくて困るんです』と言われます。

これらは視野の狭さや、眼球運動ができていないから生じる困り事でもあるのです。

小さい頃からスマホやタブレット、YouTubeの映像ばかり見ている子が増えている現代。
子ども達はかじりつくかのようにそれらを楽しく見ています。
その時間、ずっと一点集中で見ているので、眼球は上下左右に動かすことがありません。
これが問題なのです。

普段から上下左右に眼球だけを動かして見る動きをしていないと、子どもも大人もあっという間に眼球運動が衰えます。
ちらっと横目で見る等ができなくなるのです。

一点集中して見る癖がつき、眼球運動が弱くなると、狭い範囲を凝視することばかりになるので、広い範囲が見れなくなってきます。
目の前しか見えなくなるのです。
背後に何かあっても、誰かが近付いてきても、気配も感じ取れません。
だから横から声をかけられても、自分に話しかけられていると気付かない子どもや若者が増えました。

すぐ近くの物や人を見る時、わずかに目を動かせば見れる範囲であっても、頭や首全体、体全体を動かしてその対象を見に行くのです。
その動きが大きいので、落ち着きのない子、すぐ動いてじっとできない子と言われてしまう子が増えました。
彼らはただ眼球が大きく動かず、視野も狭いので、体を動かして見に行かないと分からないだけなのです。

ずっと眼球が下を向いていて、上を向くことがない子もいます。
スマホを手に持って見ている時の目の状態、姿勢が馴染みきってしまっているのです。
『目が合わない子なんです』と言われる子には、そういう子も実は多いのです。
目が合わない=自閉症かも、と安易に結び付けて考えてしまう人も正直おられますが、そうではなく、眼球運動や視野の狭さが前提にあるのです。
それが改善されれば、目がよく合う子に変わることだって多いです。

現代人に多くなったのが、縦書きより横書きの文章の方が読みやすい、という点です。

このnoteの文章も、スマホやPCで読む文章、書類の文章、大半は横書きです。
国語や道徳の教科書以外はほとんどの教科書が横書きですし、
大学ノートも横書きのものですし、
ワードで打つ文章も横書きがほとんどなので、
特別、横書きが珍しいとかではありませんが、
縦書きに関しては、読みづらくなったという現代人が確実に増えています。
特に子どもや若い世代です。

・国語の縦書きの文章が読み込めなくて、本読みやテストで困る
・読んでいる箇所を見失って、同じところをまた読み始める
・小説を読むのがしんどい、字が多くて読むのがそもそも面倒
・縦書きの文章をまっすぐ書けない
そんな子どもや若者が増え始めています。

特に多いのが、板書ができないことです。

黒板の字を見てノートに書きうつす。
それがすぐにできず、ノートに書ききれないまま授業が進んでいってしまい、学習内容がよく分からないままに終わっていくのです。
だから授業の内容を覚えていない、ついていけない子が続々と私のもとに相談に来られます。

その子達と会話すると、目線がいつも下を向いていたり、どこか一点に見つめたままだったりで、こちらの顔は滅多に見ません。
話している人の顔を見て聞くという、昔からの礼儀的なこともそもそも身に付いていない状態です。
一旦はこちらの方を見て話を聞いてくれる子もいますが、
彼らは話を聞き終わると必ずまた同じところに目線が向き、
あまり眼球を動かすことなく一点を見つめています。

これでは対人コミュニケーションも、授業中も、いろんな場面で困るだろうな…と心配にはなることが多々あります。

若者は本を読むのが負担で、何か調べものをしてレポートや文書をまとめないといけない時に、本から調べず、すぐにネットで検索です。
皆が皆そうとは言いませんが、”google先生”や”ググれカス”という言葉が生まれるくらい、ネットに頼っている人は多いです。
ネットで調べる文章は横書きが大半ですので、横書きに読み慣れてしまっているのが現代人です。

それが悪いとまでは言いませんが、眼球運動や視野に気を払って、
力が衰えないような工夫や対策は必要ということです。

日頃から目をよく動かし、世界を広く見るという心掛けが大事です。
でなければ、子どもも大人も目の使い方が衰えます。
子どもの場合は衰えるというより、身に付かないまま育つことになります。

いずれの世代も、意識して工夫しなければ、目で見た情報を頭で素早く処理し、素早く手指や体を動かす、目・頭・手の連動がうまくいかなくなります。
情報のキャッチ(見る)がそもそもうまくできないまま、
一部の情報だけが脳に届き、不十分な情報では処理ができないので、
手が止まる・行動が止まる…
だから勉強してもよく分からない、考えがまとまらない、
物事の判断がすぐにできない、そんな問題が生じてくるのです。

そうならないように、視野広く世界を見ることができているか。
普段自分の目はどれくらい動いているか。
縦書き・横書きに良い悪いもありませんが、
自分達の見る癖と、
その癖を通してどう情報を扱い行動しているか、
時々意識して考えてみてください。
気を付けるべき点が何かしらあるはずです。


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