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ティッシュ配り

 友人のティッシュ配りのバイトを、私が代わりにやることになる。
 その友人は、風邪をひいたらしくて、私にメールで助けを求めてきた。
 代わりに行ってくれないか、と。
 私はまあ暇だからいいんだけど、そのバイト先の人はオッケーなのかな、と思ってた。
 でも、実際に行ってみると、別にそれでもいいと言われ、じゃあってやることになった。

 ティッシュ配り。
 いつもの町で、突っ立って、ティッシュの束を抱えて、一つ一つを通行人に配る。
 通行人は、もらったり、もらわなかったりする。
 そんなもんだろうと私は思う。
 ポケットティッシュなんて、配られなくても、コンビニでパックが売ってるじゃんね。
 こうしてティッシュを配る理由ってなんだろう、と思うけど、そういえば、ポケットティッシュの裏に、小さなチラシが入ってる。
 これのためなのかな?
 小さなチラシを渡すため?
 つまりは宣伝?
 私のティッシュのチラシは、なんかマンションの宣伝だ。
 不動産っていうのかな、こういうの。
 よく知らないけど、こうしてティッシュをもらった人が、このチラシを見て、マンションを買いたくなったりするのだろうか?
 本当に?
 こんなポケットティッシュで?
 ポケットティッシュ一つでマンションが売れるなら、こんな簡単な話はないだろう。
 でもそんなわけない、と私も知ってるし、それも含めて、そんなもんだろうと私は思う。
 ポケットティッシュとマンション。
 このギャップが、小ささが、どうでもよさが、平和だな、と私は思う。
 無害なティッシュ配り。
 これが私にはふさわしい。

 そうしてるうちに、時間が経ち、バイトは終わる。
 余ったティッシュを戻して、なんか知らない大人にあいさつして、帰る。
 特に頑張ったわけでもないけど、そんなに暇でもなかった。
 まあ程々の一日で、良いってことで。

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