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映画「スタジオ グレア」 榊原雄×米村真理×末吉ノブ監督 ロングインタビュー(後編) インタビュアー:吉田可奈

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陵介が瑆の手を握ってくれたシーンは、涙が溢れました


――ちなみにおふたりがキュンとしたシーンを教えてください。
榊原 最後にカフェのシーンがあるんですが、ここは実は追加で撮影したシーンなんです。
――追加って、北海道ですよね!? 再び行ったんですか?
榊原 そうなんです。映画は3泊4日で撮影したんですが、このシーンだけは満足いかずにあらためて撮影をしに行ったんです。
末吉 厳しいことを言えば、全然ダメだったんですよ。めっちゃ大事なシーンなのに、2人のお芝居が全然だめで…。
――だいぶ素直なコメントですね…。
末吉 あきらかにセリフに気持ちが入っていなかったんです。でも、タイムリミットがあったので、1度目は引き上げたんです。ラーメンも食べたいし(笑)。
――なるほど(笑)。
末吉 でも、やっぱり納得がいかなかったので、僕と雄くんと真理ちゃんと3人だけで札幌のカフェに行き、そこだけ撮影をしたんです。
米村 いや、本当にダメなのが分かっていたんです。でも直接こうやっていわれるとさすがにへこみますね(苦笑)
末吉 でも経験だから!
米村 はい。結果として、追加で撮影したことで、すごくいい感じになったので良かったですね。あらためていい作品になったと思います。ちなみに、そのカフェのシーンで、陵介が立ち上がるときに、瑆の手を握ってくれたんです。そこは台本になかったんですが、すごく陵介と瑆の関係性が出ていて、涙がぶわっと出てきたんです。あそこはグッときましたね。
榊原 どうしても動いている感情を伝えたくて、ちょっと触れてみようと思ったんですよね。気持ちが瑆にどうやったら伝わるかを考えた末にそうなったんです。そこで実際に気持ちが通じ合って、瑆に与えられた感情が、陵介に返ってきて…という、すごくいいシーンになったと思います。

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こんな恋愛の経験があれば、一生生きていける


――この映画は、本当に憧れるような出会い、一瞬の燃え上がるような恋愛が描かれていますが、お2人も憧れたのではないですか?
榊原 もちろん、めちゃくちゃ羨ましいですよね(笑)。衝動的に恋に落ちて、気持ちが通じ合い、あそこまでの経験ができるのはすごく素敵ですよね。
米村 なかなかない経験だと思うんですが、人生に1度くらいは、経験したいですよね(笑)。きっと、その1度があるだけで、それだけで生きて行けるような気がするんです。それを作品を通して味わえたので、今後寂しくなった時はこの作品を想い出してキュンキュンできると思います(笑)。それに、こんな映画が生み出せるなんて、さすがノブさん、経験豊富なんだろうなって思いました!
末吉 いやいや、これは願望です!(笑)この物語は、自分がこれまで触れてきた音楽業界、エンタメ業界のなかで触れてきたアーティストさんの話を聞いていくうちに、実際の性格とイメージで乖離があるからこそ、大変なんだろうなと思っていたんです。そこは描いていきたいなって思ったんですよね。
――さらに、映画好きにはたまらない小ネタがたっぷり詰め込まれていますよね。
榊原 そうですね。『ビフォア・サンライズ』のオマージュや、『ポンヌフの恋人』のように、後ろから毛布で抱きかかえるシーンは印象的なんじゃないかなと思うんです。
米村 私もこれらの映画を観てから撮影に臨んだので、すごくいいなと思いましたね。さらに、オール北海道ロケなので、美しい景色や空気感を味わってもらえると思います。
末吉 オマージュの点で注釈で言うと、『ポンヌフの恋人』は、あの抱きかかえるシーン以外、オマージュ感はないんですよ。それよりも、身分差のある恋愛の方が、オマージュとして描かれているんです。さらに『あの頃ペニーレインと』『エリザベスタウン』など、短いスパンで起きる恋愛、さらに間に障害があるというところが共通点としてあるんです。この『スタジオグレア』と共に、それらの映画も楽しんでもらえたら嬉しいですね」

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――そして、ふたりを取り巻く共演者のみなさんもすごく個性的でしたよね。
米村 ネタバレになってしまうのであまり言えないんですが、斎藤千晃さんが演じる凛さんの涙は本当に素敵なんです。ベストシーンといってもいいくらいなんですよ。
榊原 すごく素敵だったよね。
米村 うん。あそこをみたら、全員が凛さんを応援したくなると思います。
榊原 僕は他のみなさんと喋るのが初めてだったんです。凛は、陵介と仲のいい友達ということもあり、クランクイン前からカフェに行ったり、一緒に話したりして関係を深めていたのですごくやりやすかったですね。あとは、オツハタさんも頼りがいがありましたし、米さん(米元信太郎)や始まる前に僕の背中をポンと叩いてくれたりして、すごく支えてくれたんです。みなさんには本当に助けられました。
――他のみなさんのキャスティングはどのように決まったのでしょうか。
末吉 凛はすぐに決まりました(笑)。以前、斎藤千晃と別の作品で一緒になったときの打ち上げで、“私、出たいです!”って絡まれて(笑)。その雰囲気が、完全に友達キャラで凛にピッタリだったんです。米元さんとオツハタさんは、別の短編を撮影したときのやりとりが先輩後輩感があって、すごくよかったんですよ。そのペアが面白いと思ってキャスティングさせていただきました。このふたりが、お互いの過去について話しているシーンがあるんですが、望んでいた空気感を一発で出してくれたんです。本当にさすがだなとおもいましたね。
――オツハタさんの嫌なマネージャーの演技も、憎み切れなくて良かったですね。
末吉 いいですよね。今回のテーマが、悪いやつも出てくるけど、最終的には全員に救いがあるようにしたかったんです。きっと、見終えた後、みんなのことが好きになってもらえると思います。

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こんな時代だからこそ、性善説を描いていきたい


――ありがとうございました。では最後に、メッセージをお願いします。
榊原 この作品はメッセージ性があるわけではないので、それぞれ感じてもらえたら嬉しいんですが、色がわからないカメラマンアシスタントと、自分の道が見えない姿乃瑆が出会い、どう変化して、どう成長していくかを見てもらえたら嬉しいですね。僕自身も、この試写をみたら、“もうひと踏ん張り、頑張ろう”と思えたので、そう思ってもらえたら、最高です。
米村 ありそうでないラブストーリーなので、共感は難しいかもしれないですが、見終えたあとに、余韻に浸ってもらえたら嬉しいですね。きっと、すごく素敵な余韻に浸れると思います。
末吉 この映画って、いま雄くんが言ったように、メッセージ性もテーマ性も、いわゆる社会派でもまったくないんです。だからこそ、人は話せばお互い理解し合えるとか、そういった性善説を描いていきたいと思ったんですよね。どんな人でも、悪そうなことをしていても、でも根はいいやつでありたいなと思うんです。だから最終的に登場人物全員に救いがある。そんな願いがこめられているので、見た後にポジティブになってもらえたら嬉しいですね。
――ラストは見ている人たちに委ねる形になっていますよね。
末吉 そうですね。『ビフォア・サンライズ』も3部作になっているので、いつかこの作品も続編が…あるのかな?
――スタジオ名が変わったり?
末吉 それはあるかもしれない(笑)
米村 それはぜひ楽しみにしています!
榊原 僕も、出る準備しておきますね(笑)。

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