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バイオレンス!それは最高のエンタメ!!『呪剣の姫のオーバーキル』!!!

著者の川岸殴魚さんといえば、ギャグやコメディという印象が強かったのでスプラッター強めのファンタジーと聞いた時はビックリしました。

王室に献上する刀剣を造り、家を没落から救いたい鍛冶師のテアという少年が主人公。最高クラスの金属『ミスリル鋼』を求め辺境の街に向かう途中、オークの群れに襲われ、あんなことやこんなことをされてしまうボーイミーツオーク……ではなく、大量のオークを滅多切りにするわ剣の柄にオークの首をぶっ刺すバイオレンスな女性シェイに窮地を助けられた(また自分の鍛冶スキルでサポートしした)ことから始まるボーイミーツバイオレンス作品です。

褐色肌に白髪、鋭い眼光に赤い瞳のヒロイン、シェイの戦い方は非常にバイオレンス&グロテスク。彼女は大鉈<屍喰らい(かばねぐらい)>を振り回し、致命傷を受けたオークに対し背中を一突き、次いで四肢を切断、さらには頭頂部から胴体まで大鉈を串刺し、きわめつけが別のオークの頭を柄に無理やりブッ刺しねぎま串状態。なんたる冒涜的な過剰虐殺(オーバーキル)!ブッダよ寝ておられるのですか!

しかし、このラノベ、こういったグロ満載な描写なのに不快感をさほど感じなかったのが非常に面白い。
なぜなら彼女のしているオーバーキルには理由あって、その大鉈には呪いが込められており、モンスターをむごたらしく殺すことで〈呪〉を集め、より強さを増すのだ。
そして彼女は呪いの武器を使うことに長けている民族の生き残りで、幼い頃からそれが普通なのだ。
だから、別に彼女は惨殺を楽しんでいるサイコなキャラというわけではなく「必要だからやっている」。その迷いの無いプロフェッショナルな行動には清々しさすら感じるのです。
ただ、目の前には確かに凄惨な光景が繰り広げられているので、他の登場人物は耐えきれずゲロを吐きます。主人公も仲間の女エルフも猫娘も村人も大体吐きます。

いつの頃か、「ゲロを吐くヒロイン(ゲロイン)がいる作品は名作」なる言説がありましたが、この本はヒロイン以外がみんなゲロを吐くという過去の言説を真っ向から否定するカタチとなっています。グロとゲロで辺り一面地獄絵図。
あくまでギャグっぽい風味のカジュアル(?)なゲロなので、これもそこまで不快にならないのはギャグラノベがメインでやってる川岸先生の手腕でしょうか。スプラッタ―なバトル以外にも合間に挟まる会話の掛け合いに川岸さんらしさを感じました。ほどよく明るくコメディが箸休めとしてとてもありがたいです。

◇ ◇ ◇

グロ一辺倒な展開というわけでなく、理由付けがきちんとされており、それが面白い方向で作用している王道?ファンタジーラノベで、モンスターがバッタバッタとなぎ倒される爽快感が堪りません。定番のチェンソーとゾンビ―もあるので期待を裏切りらない展開がまさにエンタメ。非常に面白かったです。



個人的に一番ヤバかったのは大きな蜘蛛の腹を煮詰めて〈呪〉を獲るシーン。熱湯によって腹の中にいる無数の子蜘蛛が暴れだし………やめよう、自分で思い出してて気持ち悪くなってきた。


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