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スタッフロールに名前が載っても嬉しくない【日記:2023/3/25】

アニメのスタッフロールに名前が載ることが、夢だった頃があった。
いつ、どうしてそんなことを思ったかは分かりませんが、中学に入る前からオタクだったので、多分何かしらの機会があったのでしょう。
もしくは、アニメのSHIROBAKOを見たのがきっかけかもしれません。

SHIROBAKOとはP.A.WORKS制作の地上波アニメ。アニメ業界を舞台にして、夢を追う5人を女性を中心に描かれるお仕事群像劇。2014年放送。
実際のアニメ業界の関係者たちも太鼓判を押す名作で、2020年には劇場版も公開されました。

次々と襲い掛かる苦難と人間同士の衝突、それを乗り越えて一つの作品を作り出して、皆で大変だったねと労い合う。
実際の仕事はそんなに綺麗なものではないと分かっていますが、私も将来そうありたいなと思ったことを覚えています。

時は流れ、一人のオタクで学生だった私にも就職の時期が訪れます。
エンタメコンテンツを作りたいなと思っていたので、関連した企業を色々受け、何とかその中の一社から内定を取ることに成功。
大学を卒業後、入社することになります。

配属先も希望通り、IPを運用する部署で大満足。
ゲームやアニメ、漫画など様々なプラットフォーム展開をしていたので、
もしかしてアニメのスタッフロールに名前乗ったりして?』などと妄想を重ねていました。

運がいいのか悪いのか、その想像はすぐに現実になります。
ちょうど私が配属された年の夏ごろ、そのIPの劇場版が公開されることになり、私もそのスタッフロールに名前が載ることになりました。
表記に間違いがないか、漢字の確認をされた時は少し驚くと同時、その映画の公開が楽しみになりました。

それからしばらくして映画が封切りとなり、私は公開日の一番最初の時間に見に行きました。
映画そのものはチェック作業の手伝いなどで何度か見ておりましたが、劇場の音響で見ると全然印象が異なり面白かったです。
およそ120分の上映が終わり、スタッフロール。
チラホラと帰り支度を始める気が早い鑑賞者を横目に、
関係者様がここにおるが?』と優越感。

美しい主題歌の旋律に乗って、流れゆく人の名前を丹精込めて一つ一つ確認。見逃しがないようにチェックしていきます。
曲がラストサビに入り盛り上がったころ、ついに私の名前が現れました。
……正直、その時に何を思ったかはもはや覚えていないのですが、映画館の下の階にあった麺屋でまぜそばを食べながらくだらないツイートをしたことだけは覚えています。

もっと感動に打ち震えて、嬉しくなって友達に言いふらしたくなったりするものだと想像していたのですが、別にそんなこともなく。
SHIROBAKOでも、現実のクリエイターでも、スタッフロールに名前が載ると感動すると言っていましたが、恐らくあれは努力の確認なのだと思います。
頑張った自分を回顧するためのトリガーであって、単なる漢字数文字が涙を流させるわけではない。
私はその作品において、ほんの端っこの極めて小さな雑務を触っただけ。
本丸にはほとんど触っていないし、時期がちょうどよかったからたまたま名前が載っただけでしたので、感極まるような努力はありません。
だから特に何も感じなかったのだと思います。
当然と言えば当然ですが、実際に体感してはじめてわかったことです。

その後、私は部署移動して全然違う仕事に携わったり、仕事を辞めたりするわけですが、この気づきは自分の将来を考える上で重要な物になったと思います。
結局のところ自分が頑張った、自分が居たからこの創造物はできたのだと認められるものでなければ、自分を感動させることなどできないようです。

無論、全ての人がそう強情ではないと思いますが、何か作品を作りたいと思っている人はこの点には気を付けた方がいいかもしれませんね。
会社で作品に”関わる”ことはできても、それは”関わって”いるだけ。
”関わり”のその先に行けるかどうかは、本人のアナタ次第。
少なくとも、シートに座って映画を眺めているだけではどこにも到着できないでしょうから、頑張るしかないですね。


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