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ソニーやホンダを経て思う、VCの「知財支援」で広がったキャリアの地平線【GB社員インタビュー】

グローバル・ブレイン(GB)で情報発信を担当している岡本です。

GBでは投資先のスタートアップのさらなる成長のために、事業戦略、採用、PR、協業支援など様々な支援メニューをご用意しています。今回はその中でも、知財領域でスタートアップを支援する知財チームの平井さん、小野寺さんにそれぞれの業務について話を聞きました。

世界でも稀な、VCの「知財支援」

──知財チームの業務内容や体制を教えてください。

平井:業務は「知財デューデリジェンス(DD)」「知財支援」の2つに分かれます。

知財DDは、スタートアップへ投資検討をする際に、その企業に知財リスクがどの程度あるかを把握する業務です。スタートアップへヒアリングをしたり情報提供をいただいたりしながら状況を整理し、投資担当者に共有を行います。

知財支援は、支援依頼のあったスタートアップに対し、事業成長につながる知財アクションを提案・実行していく活動です。知財戦略の策定や実行、特許出願アイデアの発掘、出願や権利化のサポート、他社特許調査、知財担当の採用サポートなど支援内容は多岐にわたります。

チームとしては私と小野寺さん、法務領域にも知見のある西野さん、リーダーの廣田さんに、アドバイザーであるiCraft法律事務所の弁護士・弁理士の内田先生を加えた5名体制です。

小野寺:私たちが行う知財支援は、定型化したメニューを全スタートアップにこなしていくような形ではありません。というのも、スタートアップの知財戦略はフェーズや業種によってかなり変わってくるからです。

たとえば、アーリーステージにある若いスタートアップではCEOやCTOが知財業務を兼任でやっており、社内に知財知見がほとんどないというケースも多くあります。そうした際には私たちが「プロダクトについて適切に権利化できているか」「競合他社に比べて出願ができているか」などを確認し、これから必要となる出願数や戦略について分析・提案し、実際に実行していきます。

一方でEXITも見えてくるレイターステージになると、証券会社などから知財の管理方法や発明規程の正しさなどが問われるため、そうした知財の仕組み作りや知財業務を担う人材の採用を支援することもあります。

平井:各スタートアップごとに知財に割ける人員や金額、プロダクトリリースやEXITまでのスケジュールはさまざまです。知財の状況や事業内容だけを把握するのではなく、スタートアップを取り巻く状況全体を勘案した上で、最適な支援を提案していくのが私たちの任務だと言えます。

ちなみに、投資前のDDでスタートアップの知財課題をきちんと把握できていると、投資後の知財支援で優先的に対応すべきことが明確になります。DDと支援は分断された業務ではなく、相互に連携しながら進めている感じです。

平井 孝佳:2022年にGBに参画。知財チームにて投資時の知財DD業務と、投資先に対する知財支援業務を担当。

──おふたりの担当業務や役割は分かれているのでしょうか。

平井:はっきりとは分かれていません。多少比率の違いはありますが、2人ともDDも支援も両方やります。

小野寺:担当するスタートアップの分野も明確には棲み分けておらず、それぞれのメンバーが様々な業界の企業と向き合います。たとえば私は前職が本田技研工業というモビリティの会社ですが、 いまは量子技術に関するスタートアップを支援しています。BtoB/BtoC問わず、さまざまな技術やビジネスとその知財の動向を学ばないといけないので大変ですが、新しいもの好きの知財パーソンとしては日々新鮮さを感じられる環境ですね。

平井:こうした支援の方法や体制はこれからもアップデートしていく必要があります。というのも、私たちのような知財支援専門のチームを設けているVCは世界的にみても稀で、参考になるような前例がないんです。

投資先が増えるに従ってDDや支援の依頼は増えていくため、少しでも多くのスタートアップの成長に貢献するためには、効果的な支援が効率的に回るように工夫していかなければならないと考えています。

そこで、知財支援の型化を進めたり、各案件で得たナレッジをドキュメント化してチームとして共有したりすることに努めています。たとえば、ステージごとにスタートアップの知財状況がどうあると良いのかであったり、支援先が良い知財人材を採用するにはどうしたらいいかであったり。このような蓄積を通じて「VCの知財支援はどうあるべきか」という問いへの解を考えていくのも、私たちのミッションの1つです。

大企業とスタートアップの知財はここが違う

──小野寺さんは本田技研、平井さんはリコーやソニーの知財部を経験されています。その際の働き方といまでは何が違いますか?

小野寺:まず、触れられるものごとの幅が違います。先ほども申し上げた技術もそうですが、1人が関われる「知財関連業務の範囲」もかなり広いです。大企業の知財部はたいてい領域ごとに「特許担当」や「商標担当」とかに分かれていて、何でもやる「知財担当」という人はあまりいません。

ですがGBでは、自分が支援するスタートアップの特許も、意匠も、商標も、すべての戦略や管理面を考えなくてはなりません。そうした知財実務にフルで携われるというのは大きな違いですし、自分の成長にも繋がる部分だと感じます。

小野寺 聖:2023年にGBに参画し、知財チームにて投資時の知財DD業務と、投資先に対する知財支援業務を担当。

平井:また、大企業はワークフローがしっかり定まっていたり、開発チームも知財経験があることが多かったりします。製品開発フローの中で、出願や他社特許調査を行うタイミングがある程度決まっており、開発チームもそれを意識している。そのため「この製品はこの時期に出願・他社特許調査しましょう」というように、何をいつするか知財部と開発チームで意識が合わせやすいというのはありますね。ある意味、仕事が定型化されているともいえます。

対して私たちの知財支援では、スタートアップごとに必要な支援が違いますし、知財経験が全然ないスタートアップと関わることもあるので、まず何をすべきかお互いの意識を合わせることから始めないといけません。こちらからヒアリングを依頼して課題を整理したり、戦略を提案したりして仕事をデザインしていかないと価値が出せない。この姿勢の違いはありますね。

小野寺:あとはやはりスピード感と予算感が違います。スタートアップの世界では「このグローバルトレンドだと半年以内に製品を出さないと負けてしまう」みたいな短期決戦になることがよくあります。そうした切羽詰まった状況のスタートアップと相対するので、当然知財支援も同じような時間軸で進める必要があります。

また、大企業は予算もそれなりに潤沢なので、複数の特許出願を出すことも日常的でしたが、スタートアップではそれが難しい。

なので、いかに1件でレバレッジが効く出願を出せるかが勝負です。スタートアップの知財支援においては「この会社における効果的な出願とは何か」をとことん考え抜く必要があるのが特徴的ですね。

平井:大企業の特許出願は年間1,000〜2,000件ある中での1件ですが、スタートアップだと年間1件中の1件の出願ということもあります。なのでスタートアップの皆さんもその1件に非常に気持ちが乗ってるわけです。そうした思いも受け止めた上で支援をしていく必要があります。

──いい戦略を提案するだけでなく、スタートアップのスピード感や思いを踏まえて伴走する役回りといえますね。

平井:はい。この仕事はスタートアップの方たちの熱を感じられる仕事だと思っています。

新しい技術や知財の知識は、記事や論文を読めばいくらでもインプットできます。ですが、CEOなどから「世の中にはこうした課題があり、だからこのソリューションが必要なんだ」と直に聞くと、技術の背景にある熱量を感じられます。そこは大きな醍醐味ですし、支援させていただくときも身が引き締まりますね。

小野寺:スタートアップのCEO、CxOが「絶対成功させるんだ」「これが必要なんだ」と生き生きと語るあの感じはやはり胸が熱くなります。この“スポーツ感”というか、どう勝つかを熱量高く追求する感じは、いわゆる大企業での知財業務ではなかなか得にくい体験なのではないかと思います。

“知財以外”のキャリアを描ける可能性も

──先ほど「あらゆる知財分野の経験が積める」というお話がありましたが、この仕事だからこそ得られるスキルやキャリアパスについて教えてください。

小野寺:スピード感の話と通ずる部分ですが、スタートアップは大企業と比べると資金に限りがあるので1分1秒も無駄にできません。私たちのヒアリングや定例などで、無駄に時間を取るわけにはいかない。

そのため「いかにスタートアップが抱える知財課題を迅速に特定できるか」「いかに短期間で筋のいい知財戦略を提案をできるか」が肝になります。こうした課題特定力や思考力がとても鍛えられる仕事だなと感じますね。

この力は何かを顧客へ提案をする職業の方全般に求められる、汎用的なスキルだとも言えます。なので極論を言うと、知財以外の職種への道も拓けるんじゃないかなと

平井:キャリア幅の広がりは私も感じますね。またVCにいるからこそ得られる知見でいうと、企業に出入りするお金の動きを見れるのでファイナンスの知識がつくというのは大きな特徴です。

加えてGBには事業戦略や採用、PR、BizDevなどの専門家もおり、彼らからも知見を得られます。私はいずれ起業してみたいという思いもあるので、企業のキャッシュフローについてや様々な職種のナレッジが得られるのはありがたいですね。

スタートアップに価値を感じてもらうために

──ありがとうございます。それでは最後に知財チームが目指していきたいことを教えてください。

平井:私たちの支援の目標の1つは、スタートアップが自社だけで知財業務を回せるようになること。各社へ支援を延々と続けるのではなく、スタートアップだけで知財のPDCAを回せるような仕組みづくりを強化していきたいですね。

小野寺:仕組み作りは最初が大変なのですが、回り出すととてもやりがいを感じます。いわば「石のタイヤ」を作って回している感じですね。最初はとにかく重いけど、うまく転がりだすとものすごい速度でゴロゴロ回っていく。

平井:しかもそのタイヤを作るためのパラメータは各社ごとに違うので、それぞれに適したタイヤを作らないといけない。「この会社は特許にかけるリソースが多いから週1定例でもいい」であったり「この会社は人員がCEO1名しかいないからGBでここまでやる」であったり。各社の状況をしっかり把握しつつ、どう転がせるか方策を考える。そこが難しくもあり、醍醐味でもあります。

知財チームがすべきことはValue Up Team(※投資先の事業支援を行うGBの別チーム)と同じで、スタートアップにどれだけ価値を感じてもらえるかに尽きます。そのためにはやはりスピードとクオリティが大事です。いかに精度高く、各社にあったタイヤを素早く作れるかは今後も工夫していきたいですね。

小野寺:自分の専門外の技術を持つスタートアップにも相対していかないといけないので、とてもヒリヒリする仕事です。いまの知財部での仕事もいいけれど「もうちょっとがっつり仕事してみたいな」とか「キャリアの枠を広げたいな」と思っていらっしゃるような方にはぴったりかなと。

平井:前職のソニーでも、手を挙げればいろいろな仕事をやらせてもらえました。ただ、ソニーの知財部は200~300人くらいいて、その中の1人だとやはりどこまでいっても「ソニーというブランドの一員」になってしまうなとは感じていて。

一方でGBであれば知財チーム数人のうちの1人、VC業界でも数十人のうちの1人になれる。そういう希少な立場で成長機会を取りに行くことで、今後のキャリアパスにも役立てていけるのではないかなと。いま知財人材としてキャリアを歩んでいて、少しでもそうした気持ちがある方がいればぜひお話しできれば嬉しいなと思います。

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