見出し画像

アウシュビッツ強制収容所

よく海外旅行に行くので、どこがいちばん良かった?と聞かれることが多い。
この質問は困る。
「良かった」は楽しかった場所なのか、感動した場所なのか、綺麗だった場所なのか?
その人の性格を考慮して、おすすめの場所を答えるようにしている。

ただ、個人的にいちばん行って良かったと感じたのはポーランドにあるアウシュビッツ強制収容所だったと思う。確実にアウシュビッツであることは間違いない。
「ええ!アウシュビッツ!?やばー笑笑」などと言われることも多く、正直イラつくのであまりアウシュビッツがいいよと言うことは少ない。

中学生の時に、初めてアウシュビッツ収容所の存在を知った気がする。
ドキュメンタリーを見せられたのだが、頭が追いつかなかったのを覚えている。なんでこんなむごいことが起きたんだろうかと。

特に興味もないが、就職に強そうという適当な理由で政治経済学部に入った。
たまたま西洋政治史という授業で、ナチスがどのような政策を行っていたのか、どのようにユダヤ人迫害が進んでいったのかをサクッと学ぶ機会があった。
またそこでもドキュメンタリーを見せられたのだが、食い入るように見たのを覚えている。

とにかくこの目であの場を見たいという強い思いがあったから、親からお金を借りて現地まで出向いた。
1人だけ日本人のガイドの方がいるので、その方の説明を聞きながら収容所を見学した。

あまりにも残酷だから、メンタルが豆腐のように弱いわたしは何を思うのだろう大丈夫かな?と心配していたのだが、そんなことはなかった。
あまりにもすごいものを見ると、無感情になるということを知った。
頭が真っ白になるというか、ただその場を見つめてしまうというか。あれは新しい感覚だったように思う。
あんなに思考が停止することは、なかなか無い。

ユダヤ人たちが運ばれていく線路、拷問部屋、実際に使われていたガス室、絞首場、高圧電流の流れる有刺鉄線、焼却炉、実際に殺害するのに使われていた薬剤、廊下にズラリと並べられた収容者の写真。
もうぼーっと見つめるしかなかった。

死の壁、と呼ばれる壁があった。
ユダヤ人達は壁の前に立たされて、銃殺されていたようだ。
無機質な壁の前には、たくさんのろうそくがたむけられ、美しい花が置かれていた。じっと見つめる時間があったのだが、目には涙が浮かんだ。
パタリと人が倒れるシーンが浮かんで、うるっとした。

たまたま見学をしていると通り雨が降ってきた。その後すぐ雨は上がり、虹が出ていた。
ガイドさんによるとよくあることらしい。
あんなに印象深い虹を今後見ることはないだろう。
特に式典などがあると、高確率で虹が出るらしい。世の中には不思議なことがあるものである。

実際に行ってみて、何か学べたか?人生観が変わったか?と言われると答えに詰まる。
だって、何も考えられなかったからだ。
本当に何も考えられなかった。
自分でもここまで思考が働かなくなったことは、全く無いと言っていいだろう。

きっともう二度と行くこともない。
ありえん遠いし。金もかかるし。
でも、何も考えられなかったのに、こんなにも行って良かったと思えるのである。
それだけは確信している。
本当に行って良かった。
アウシュビッツは、そんな場所なのだ。

#海外旅行 #海外旅行好き #旅行 #アウシュビッツ #ナチス #世界遺産 #人生観 #ブログ #note

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?