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いつもそばにコーヒーがあった・6

シェアキッチン

僕が参加させてもらうことになったシェアキッチンは、武蔵野市役所の近くで、最寄り駅はJR三鷹駅。最寄りと言っても駅からは徒歩18、9分程と、まぁそれなりに距離はあるロケーション。
店舗参加メンバーの共用の客席エリアを囲む様にキッチンブースが幾つかあり、何人かが同時進行で活動出来る、謂わばちょっとしたフードコートの様な要素のある場所。

僕が持ち込んだ手廻し式の直火型焙煎機は、こと深焙りの焙煎時など、焼き鳥屋か鰻屋かと云うくらい煙まみれになることもあり、他のメンバーに出来るだけ迷惑にならぬよう端っこのブースを使わせて頂くこととなった。
(とは云え、実際には毎回煙でもくもくさせてしまったのだけれど...)

ところでこのシェアキッチンは、土地柄もあってか、子育て世代のママさんたち(もちろん乳幼児も一緒に)から、ご高齢の方々まで、とにかく年齢層の幅の広いお客様たちが訪れる場所。
おそらくは、この「場所」に、謂わば「寄り道」することなく直ぐ自身の「店」を持っていたなら出逢わなかったであろう客層の方々と接することが出来たこと。これは今となってはとても大切な経験だった。
また「看板」を出すにあたって、まだ何処かで此処はまだ「本番前」と云う思いもあって、そこで此のシェアキッチンと云う様々な人々が集う場所での自身の屋号に「kissa(喫茶)」と云う名を冠することにした。

ところで話は戻り、友人の「場所」を離れ、僕は此処で自分自身が考え思う「珈琲」、そして「焙煎」と云うものを、改めて見直し研究していくこととなる。
そして同時に自身の店舗となる物件探しを本格的に始める。

そんな中でのコロナ禍。理想の物件以前に物件そのものが全然出てこないと云う状況が続くこととなる。
そしてこのタイミングで店を持つこととは、と思い悩み始めた頃、一通のメールが届いた。

喫茶人かく語りき

それはあの川口葉子さんからのメールだった。
そう、自身の店舗を持つことが叶ったら、いつか(店のこと等を)書いて頂ける様な、先ずはそこを目指そうと密かに思っていた御方だった。
思いがけず届いた川口さんのメールは、コーヒー豆の注文だった。

注文のメールの返信に、珈琲屋を志す遥か以前から川口さんの書籍等をよく読んでいること等を書いて送ると、その返信で、僕のWebサイトに書いてある「カフェとはシーンである」についての質問が送られてきた。

あの川口さんと珈琲について言葉の遣り取りが出来る。これは正直かなり嬉しい出来事だった。

そして幾度かのメールの遣り取りから、後に刊行される書籍「喫茶人かく語りき」へ、”go café and coffee roastery”について、書いてくださることとなる。

その時はまだどういった方々が掲載される書籍なのかわかってはいなかった。
ただ未だ実店舗物件を探している、そして活動拠点がシェアキッチンであると云う身で、「喫茶人かく語りき」と云う題名の書籍に本当に掲載して頂いても良いものかと、一応伺ってみたところ、問題無いと即答を頂き、それでは是非と、お願いすることとなった。

それから半年と少しした頃だったろうか、送られてきた書籍には、嬉しくも仲良くさせて頂いているTEOREMA CAFE(テオレマカフェ)や、友人の店、BLACKWELL COFFEE(ブラックウェルコーヒー)、下北沢在住時代に通った店や、あの大坊さんの言葉まで書かれていた。

実は取材を受けてから実際にこの本が発行される迄に自身の店舗物件を見つけ店を持つことを目指したものの、なかなか思い通りにはいかないもので、苦渋を飲むこともあったけれど、とにかく彼方此方歩いては自身の店のイメージを街の風景の中に描きながら、気になる物件について問合せる日々が続いた。

re:place

そんな時、たまたまコロナ禍で休業中だった先輩格の友人・TEOREMA CAFEさんから、僕のそんな状況も知って、暫くウチでPOP UPをやってみないかとお声掛け頂いた。


そしてその時の打合せで何の気無しに言われた「ここでのgo caféが終わる頃にGOさんの物件見つかりそうな気がする」と云う一言が現実に叶うこととなる。

余談だけれどTEOREMA CAFEでのPOP UPでは、自家焙煎のコーヒー以外に、これまでシェアキッチンではやってこなかった自分のコーヒーに合わせた自家製のデザートを幾つか試してみた。それらは実店舗を持った今でも定番メニューとなっている。そして何よりシェアキッチンではなく自分だけのいる「場所」のイメージをより明確に考えることが出来たとても貴重な時間となった。

閑話休題。

春から夏までの短期間、シェアキッチンとTEOREMA CAFEと2箇所での営業は大変ではあったけれど、自身にとっては学びと実りの多い時間だった。

そして夏もそろそろ終わりが見え、もういい加減何処か自身だけの場所で動き始めねばと思った頃、ふとある物件が出てくる。

go café and coffee roastery

実は半年程前に一度話を貰ったもののその時は正直全く響かなかった場所が、暫くの期間を経たことで、思い切って先ずは小さなこの場所から動き出してみようと思えるようになっていた。
そう思って動き出してみると、これまでの苦戦が何だったのかと云う程に、トントントンと順調に事が流れ、いよいよ物件を申込み。
自身の店を作ることとなった。
2021年9月のこと。

決まれば決まったでまぁ色々あったのだけれど、12月中旬にシェアキッチンを卒業し、同月末には自身の店をプレオープン、翌2022年1月4日にお陰様でグランドオープンすることが出来た。
それからの1年は当然ながら初めてのエリアでの全く知名度も何もない個人店のオープンなわけで、一日一日必死な毎日を過ごしている間に気付いたら年を越えて1周年を越えて2年目の季節へ。
まだまだ課題やら何やら色々在るのだけれど、とにかく一つ一つをていねいにコーヒーにデザートに店作りにと取り組んでいるところ。

オープンしてからこれまでの日々にも様々な出来事があったのだけれど(多分これからも)まぁそれはまたいつか書くことがあれば(読みたいと思ってくださる方がいらっしゃるかわからないけれど)。

オリジナルのマグカップは、お一人お一人に淹れたコーヒーに、心を込めて淹れましたとサインを入れた様にしたいと思い、手書きのロゴを入れたデザインに。

途中随分間が空いてしまいましたが、最後まで読んでくださった方々へ。
ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
そしていつか機会がりましたら是非我が小さな店ですが、コーヒーブレイクに是非お立ち寄りください。
心を込めて淹れさせて頂きます。

日々、ていねいに。

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