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僕が安住の地を手にするまで [3] 夢のような物件

「(不動産屋は持っていない)幾つか土地の情報持ってます」

高木さんがそういうので、さっそく紹介してもらうことになり、妻を連れて三人で見て回った。しかも、どれも僕が「住むならこの辺がいいな」と思っていた宝沢や西蔵王に近い物件だった。

山形市大字上宝沢
山形市大字土坂

気に入ったのは、西蔵王にある186坪(約615平米)のけっこう大きな物件。一目惚れだった。法地(崖地)が多く、平らなところは130坪(約430平米)ほどだが、建物をたてるには十分すぎる広さ。小さな渓谷を上っていった行き止まりにあるため、まわりは山。にもかかわらず、街からはそれほど遠くなく、職場までも車で15分ほど。子どもたちの通学や買い物にもほとんど問題はなさそう。とにかくまわりに家が少ないので、音に気を使う必要はほとんどないだろう。敷地内にはたくさんの竹が生え、桑の木が実をつけていた。南東の角には二本の大きな杉の木がある。黒々とした桑の実をかじってみた。甘い。目の前の山では山菜も取れそうだ。ちかくの川ではイワナやヤマメが釣れる。

なによりもまず気に入ったのは、渓谷の一番奥にあるため、見晴らしが最高なこと。駐車場しか見えない今の貸家とは比べ物にならない。山形市街地を見下ろし、その向こうには朝日連峰が見える。そして、敷地の南側すぐのところには小川が流れていて、さらさらと涼しい音を立てている。なんと、夏には蛍が来るのだそうだ。さらにその清流をたどっていくと、小さな井戸がある。近隣住民だけが使えるようになっていて、すでに敷地内に配管済み。雨のあとは濁ることがあるらしいが、普段から洗濯などに使えるとのこと。また、この井戸と敷地の間くらいに90坪の土地があり、自由に使ってかまわないと言われている。石が多く、大掛かりな整地が必要だが、農地として使えるようになれば、一家が食べるのに十分すぎるほどの野菜が取れるはずだ。

ひとつ気掛かりなのは冬の雪だ。当然、市街地よりも雪は多いはず。しかし、お隣さんによれば目の前の舗装道路まで除雪車が入ってきてくれるそうなので、雪かきは敷地内だけで大丈夫だ。雪の捨て場所も周囲にたくさんあり、市街地のように困ることはなさそうだ。また、山が近いだけあって、野生動物による被害も少なくないそうだ。イノシシやサル、カモシカ、クマ、シカ、テン。野菜を作り始めたら色々と対策が必要になるだろう。

ここを眺めていると、色々と楽しい風景が浮かんでくる。

・夏は庭で蛍や星を見ながら夕涼み
・冬は薪ストーブを囲んで家族や友人たちと団らん
・ピザやパンを焼いたり、色々な食材をスモークできる石窯
・市街地を見渡せる、杉の木を使ったツリーハウス
・発酵食品づくりを本格化させるための調理・貯蔵スペース

いま抱えている「こんなのあったらいいのに」がすべて実現できそうだ。

また、これは以前から興味のあったことだが、向こうに引っ越すのに合わせて、狩猟免許を取る準備をはじめるつもりでいる。獣害になるイノシシやクマを撃つのだ。イノシシ鍋・クマ鍋ができるかも。猟をやる人の数は年々減っているので、市から免許取得や銃・わな購入のための資金援助がある。知り合いが猟友会にいるので、話は早いはずだ。

色々考えていると、僕はどこへ向かおうとしてるんだろうと思うこともある。が、気にすることはない。やりたいことを全部やって死のうと思う。

つづく

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