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#近本photo から考えるアスリートSNS活用の可能性

昨年末に #アスリートSNS本 を出版してからまもなく半年が経ちますが、書籍の情報はどうしても鮮度が落ちていってしまうので、アスリートのSNS活用に関する事例や気付きは引き続きnoteで更新していきたいと思います。

ということで、今日は阪神タイガースの近本光司選手がSNSで投稿している「#近本photo」について考察してみました。

近本photoはアスリートのSNS活用事例の中でも真似できる部分が多いハッシュタグ企画なので、是非皆さんも参考にしてみてください!

近本光司選手PROFILE

近本選手は1994年11月9日生まれ25歳のプロ野球選手で、現在は阪神タイガースに所属。 大阪ガスでは1年目から活躍し、18年夏には都市対抗で橋戸賞と首位打者賞を受賞。昨シーズン、ドラフト1位でプロ入りを果たすと、持ち前の力強いスイングと俊足を生かして、セントラル・リーグの新人最多安打記録を更新。(159安打、2019年)

阪神の未来を担う、若きリードオフマンです!
笑顔が素敵です。


#近本photo とは

近本photoは、近本選手がSNS上で自身のプロフィール画像を募集する企画のこと。企画内容は、ハッシュタグを付けて投稿された写真の中から、近本選手自身が良いと思った写真を月に1回プロフィール写真に選ぶというものです。

自分が撮影した写真がプロフィール写真に選ばれたファンは間違いなく嬉しい(!)ですし、例え選ばれなくても近本選手がTwitter上でコメントをしたりリツイートすることが多々あります。

株式会社ホットリンクが提供しているSNS分析ツール「BuzzSpreader powered by クチコミ@係長」で調査をしたところ、Twitter上での「近本photo」というワードの言及数は2ヵ月間で8,060回にのぼり、多い日(試合日)では1日に1,200回もの言及数がありました。


続いて、#近本photo で優れている部分を「適度なインセンティブ設計」「n:nコミュニケーション」「企画のフォーマット化」の3つの視点から説明したいと思います。


「適度なインセンティブ設計」

#近本photo では、このハッシュタグを付けて投稿された写真に対して、近本選手本人が「①RT②引用RT③プロフィール写真に設定する」というインセンティブを設けることで、阪神ファンから多くの投稿が寄せられています。

近本選手が見てくれる、反応してくれるかもしれないというインセンティブが働くことで、ファンからの投稿が増えていきます。

スポーツクラブやアスリートのSNSはマスメディア的な一方通行の情報発信のスタイルが多いですが、ファンが参加感を得られる適度なインセンティブ設計と双方向性をもってSNSを活用していくアカウントもこれから増えてくるのかなと思います。

但し、アカウント運用の目的次第で採るべき手段は変わるので、クラブや選手が一方通行の情報発信を貫くこともまた正解だと思います。双方向のコミュニケーションは行き過ぎるとトラブルの原因にもなるため、何を/どこまでリアクションするのかは、個々である程度決めておきたいところです。


「n:nコミュニケーション」

n:nコミュニケーションでは、発信者と受信者がハッキリ分かれていた1:nのコミュニケーションとは異なり、発信者と受信者が複数存在しています。つまり近本選手が自ら情報発信をしなくとも、ファンの皆さんが近本選手について発信してくれる状態です。

東京ヴェルディクラブ SNS講習.pptx

近本photoのようにn:nの考え方でファンからの口コミ(=UGC)を増やすためには、前述の「適度なインセンティブ設計」の他に「ツッコミどころ、余白を残す」ことが重要になってくきます。

このnoteでえとみほさんが書かれている「語る人」ではなく「語られる人」になるがまさにn:nの考え方であり、SNS上で語られるためには「余白」と「共感」と「違和感」が必要と、えとみほさんは指摘しています。

近本選手は試合で卓越したプレーを魅せるだけでなく、オフの時にはその愛らしいキャラクラーから、「余白」と「共感」と「(良い意味での)違和感」をファンに届けられる存在なのかなと。

球場やキャンプ地で、阪神ファンの皆さんが近本選手を目掛けてカメラを構えている姿が目に浮かびます!(笑)

また、近本選手のグッズは、シーズン終盤連日飛ぶように売れて、度々完売になったそうです。近本選手の好パフォーマンスがグッズ売上に貢献したことは言うまでもありませんが、#近本photo をはじめとしたSNS上での盛り上がりが、ファンの購買を後押ししたことも確かかと思います。


「企画のフォーマット化」

近本photo は2019年の8月から開始された企画ですが「ファンの皆さんが投稿した写真の中から毎月プロフィール写真を選ぶ」という、毎月使い回せるフォーマットにしたことで、無理なく・継続的できる企画となっています。

ファンの皆さんに喜んでいただけるような企画を、選手本人が毎月考えるのは流石に大変ですが、#近本photoのように繰り返し使えるフォーマットであれば、無理せず継続することが可能です。

最近では、コロナウイルスの影響もあいまってSNSを積極的に活用するアスリートがぐっと増えました。シーズン再開後も無理なく続けられる工夫として、企画をフォーマット化することのはオススメです。


n:nコミュニケーションのメリット

ここまで近本photoの優れている部分を説明してきましたが、SNSを活用してn:nコミュニケーションを行うことで得られるメリットには

・中長期的に価値向上や売上に貢献してくれるファンベースの拡大
・ファンからのエンゲージメント(好意度)の向上

の2つが挙げられます。

ファンベースとは、ファンを大切にし、新規顧客よりもむしろコアファンをベースに、中長期的に売上や価値を上げていく考え方のこと。

SNS上のフォロワーは、いわば情報やコンテンツを継続的に届けられるファンコミュニティ。アスリート個人を応援するファンが集まるコミュニティは、アスリート個人だけでなく、選手の所属クラブにも利益をもたらしてくれる存在です。

アスリート個人を応援してくれるファンの存在は選手にとって財産であり、ファンベースは今後より重要になっていくことでしょう。


最後に

繰り返しになりますが、アスリートとファン・サポーターが直接繋がっているからこそ生じる「双方向のコミュニケーション」は、良くも悪くもSNSのユニークな部分です。

最近はSNSに関するネガティブなニュースが続いていますが、情報インフラとしてSNSがこれだけ定着している以上、ガイドライン設計も含めてSNSとの付き合い方を見直す時期がきているんじゃないかなと思います。

「適度なインセンティブ設計」「n:nコミュニケーション」「企画のフォーマット化」

SNSを活用したファン向け企画に手詰まり感のある方は、この辺りを意識して是非トライしてみてください!


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著書『アスリートのためのソーシャルメディア活用術』http://urx.red/Fh0w|Revive Inc. PR manager◁電通ライブ・電通テック◁東京学芸大学蹴球部 学連/全日本大学サッカー選抜主務|日本に40人の苗字、ゴカツデです。#アスリートSNS本


いつも読んでいただきありがとうござます:)