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映画「ROMA/ローマ」 休日にじっくり味わいたいなら、これ

イタリアのローマではなく、メキシコのローマ

Netflix映画の「ROMA/ローマ」(2018年)です。
noteで取り上げる映画は、見た後数週間眠らせてから書くことが多いですが、「ROMA」は今日観てすぐ書きたくなりました。傑作です。
たまたまYouTube「キングダム」の宣伝動画を見ていたら、ペ・ドゥナがこの映画をおすすめしていたので、気合入れて見ました!(笑)

描かれるのは、ほぼ日常生活

アルフォンソ・キュアロン監督の自叙伝的映画で、自分が子どものころの思い出に忠実に描いた作品だそうです。
物語があるわけではなく(いや、あるのですが)、描かれるのはほぼ日常生活。食べたり片づけたり掃除したり洗濯したり、子どもの送迎や寝かしつけ。


主人公のクレオはこの家の住み込み家政婦で、優しく静かでよく働く。
言葉も表情の変化も少なく主演女優には見えないですが、一つ一つの動作が温かい。世話をする4人の子どもたちも一人一人が個性的で、クレオとのやり取りがたまらなく可愛い。

そんな家族に変化が訪れ、夫婦も、物語の終盤には子どもたちにも大きな変化が。家政婦と家族、互いの理解が進み、愛が深まっていく過程がとてもリアリティがあって面白い映画です。

1970年代の時間の流れ

監督が実際に住んでいた町を1970年代当時に見えるように手を加え、住居も車や家具も洋服のデザイン柄に至るまで忠実に再現したそうです。
主演女優はじめ素人の方をたくさん、エキストラもたくさん、病院のシーンなどは医者、看護師はその職業の方に演じてもらったとか。
その辺の詳しいことは、「ROMA/ローマ 完成までの道」でよくわかるようになっています。是非2本立てで見てください。


撮影方法や音声も変わっていて、町全体を長回しで撮影し、その風景の中で主人公が動いているのを、引きで見る。町全体が主役。見ている私も、街の景色を客観的に眺めているような気分になります。
人々の歩くリズムや町の流れに、1970年代の時間の流れまで感じる。

そしてモノクロなので、目から入ってくる情報量が少ないためか、登場人物の心の動きにとても気づきやすい。主人公にどっぷり感情移入しないのですが、客観的に主人公を追ってしまう。撮影の仕方で、感じ方がこうなるんですね。

水たまり、飲み水、こぼれた水、掃除の水、そして海など、水にまつわるシーンも暗喩?よく出てきました。

「ROMA/ローマ 完成までの道」(メイキング)のほうはカラーなので、実際はこんなに色彩にあふれていたのか、と驚き。色の美しさをバッサリ捨てて、白黒の世界を作ったんですね。潔い。

おもちゃの使われ方に心がある

子どもが多い家だけに、おもちゃがたくさん出てくる。
私はおもちゃや民芸品が大好きで、映画の小道具を結構真剣に探します。
この映画は良く集めていたし、集めるだけじゃなく使っているところが素晴らしい。

メキシコの民芸的なおもちゃはパッと見つけられませんでしたが、一般家庭で遊んでいたであろう、70年代に世界的に流行ったアメリカのフィッシャープライス社製のおもちゃがたくさん出てきました。
なかでも有名なテレフォンは、小さい男の子が本当に夢中になって遊んでいるシーンあり(笑)

女の子の部屋のぬいぐるみや人形も、当時の市販品ぽいのから手作りっぽいのまでたくさん用意されていました。象徴的に使われていたレーシングカーは音も良く、ゆっくりテンポの流れの中でスピード感を出していていいシーンでした。

あと、映画館の出口に、風船とか手品おもちゃとか駄菓子、駄玩具の売り子がいっぱいいる風景もとても面白かったですね。日本にはないようなものがたくさん。


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