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キミだけを

「どうしてこんなことを?」
戸惑うように女性はつぶやいた。

「なぜそんな顔を?ぼくはキミだけが好きなんだよ」
無表情に男が返す。

「だからといって、こんなことしなくても」
「いいじゃないか、ぼくが何をしようと」
男の反論に女性は顔を曇らせた。
やめさせなくてはと頭では思っているものの、下手に彼を刺激したくなかった。

彼もきっと心の中では後ろめたさを感じているはず。
そう思いたかった。

男が椅子に腰掛ける。
促されようにして女性も席についた。

「さあ、食事にしよう」

食卓に会話はない。
カチカチと箸が食器に当たる音だけが響く。

「やっぱりいけないことだと思う」

静寂を破るように女性が声をあげた。
男性はそれを無視したが、少し苛立ちの表情を見せた。

「ねえ、あなた」
「……」
「やっぱりこんなことやめて欲しいの」
「……」
「白身だけを捨てるのを」
「うるさい!ぼくはキミだけが好きなんだ!」

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