春、日曜日。

3月くらいから、住んでいるアパートでは外壁塗装工事をしている。二週間くらい前から、とうとう窓が空けられなくなった。
頭はすっかり春に置換されてしまったが、外の空気を取り込めないこの部屋には、まだ、冬の空気が残っている。そう信じている。

いつもの日曜日であれば、昼過ぎに家を出ては駅前で食事をとる。なんとなく習慣になっている。オフモードの時は、馴染みのない店に一人で入るのが苦手なので、大抵、いつもの蕎麦屋か、駅ビルの中のラーメン屋に入るのだが。元はと言えば、翌日に迫る憂鬱を吹き払おうとする、少しの贅沢だったような気がする。まだ近所にスーパーマーケットがあったころには、ステーキ肉を買って一人で食べていた。

今日はなんとなく気怠くて、駅前までの徒歩20分に耐えられないような気がして諦めた。数週間前くらいから、ほんのりと体調が悪い。いつから続いているのだったか、もう忘れた。最近、同じような日々が流れてゆくので、日付を正確に記憶していない。季節が春めいてきた頃からだったような気がする。
4年前の春に、緩い体調不良で寝込んでから、毎年春くらいになると、同じように緩く体調を崩すことが多くなった。過去の春を思い出して押し潰されるからなのか、それとも単に忙しいからなのか。
鈍る思考と晴れない気分を抱えて外に出てみれば、冬の雰囲気を引きずった服では汗ばむほどで、それらの感覚全てが自分に4年前の春を思い起こさせる。何も春の所為ではなく、その場所に記憶を運んでしまう自分の思考の所為だということを知ってはいるのだが、頭がマトモになるまで、もう少し春の所為にさせて欲しい。


最近、またGhostwire: Tokyoに潜っている。誰もいなくなった「リアルな東京」という虚構は、あの春に見た光景に似ていた。同時に、東京と言う街に鬱屈した思いを持っていた、あの時の自分にとって、「終わってしまった東京」というのは少し痛快に感じているところもあった。


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