見出し画像

紫アネモネの後悔

雨降りの4月の終わり
僕の身体は灰になった
ドラマみたいに死んだ自分を宙に浮かんで
見るのは不思議な気分で
『もう生きなくていいんだ』と安堵に
寂しく頬が緩む
以前から人間関係が気薄だった僕の
最期に涙を流す人は数えるくらいで
大半の人は眠そうに気怠そうにお焼香をあげてる

そんな中雨に打たれながら紫アネモネの花
のそばで静かに涙を流す彼女を見つけた。
これは僕と✖︎✖︎ちゃんのお話。

✖︎✖︎ちゃんは愛想が良くて要領がいい。
どこに行っても人気者で人当たりがいい彼女が
なんで僕なんかといるのかずっと分からなかった
その場にいれば場が和むし
サラダの取り分けがうまい。
小柄な体躯で小動物のような愛らしさがある
目の下のほくろがかわいい
控えめにつけたピアスのセンスがいい

こんなにスラスラと出てくる彼女の長所
大変悲しいことに、僕は生前彼女が好きだった。
でも釣り合わないなあって俯瞰して諦めていた
僕の遠回しな愛のメッセージを
彼女は"'"遊び""と
捉えた。
毎度彼女の唇に自分の唇が触れるたびに
言いようの無い幸福と後悔。
『いつか終わるのかな、明日は誰といるのかな』
矮小で情けない僕の心は寛容で人気者の彼女
でいっぱいになった。
1日でも長くあなたの気まぐれが続いて欲しかった

その為に僕は振り向いてもらえるよう
せめてSNSを頑張った
色んなアプリを駆使して作った最高にかっこいい
"僕"にはたくさんのいいねがついた。
歌い手なるものにもなってみた。
なんの特技もない僕が美しい花に近づくに
とにかくなんでもやった
そんな僕は彼女は褒めてくれた。
褒められるたび、花に一歩一歩近づいてる気
がしていた。

でもそんな小さい願いさえも微力な
僕には叶えられなかった
そんなに言葉を紡ぐのも上手くない僕の
SNSはすぐに埋もれ、自分よりも綺麗な顔に
みんなは集まる
どんどんどんどん"僕"のコンテンツ力は
無くなっていき早い段階でSNSから消えた。
ただでさえ自己肯定の低い僕が唯一
彼女に認めてもらえそうな居場所を失った僕は
すぐに落ちて行った。
『そのままでいいよ』という✖︎✖︎ちゃんの声も
聞こえなくなり僕は自分が僕であることに絶望した
僕の顔がテレビに映る彼みたいだったら?
僕の声であの有名な歌い手みたいだったら?
僕があのyoutuberみたいにお金があったら?
もしも、もしもの可能性ばかりを呪いに
かかったみたいに暗い部屋で唱え続けた僕は
限界が来た。
たくさんの錠剤はすぐに僕を現世から
切り離してくれた。
彼女に会えないのは寂しいが
僕は自分が惨めで僕でいることがつらかった
彼女の優しさに、信じ込んでそのままで
いるなんて出来なかった。


そう、思って死んだのに。
頼むから泣かないで。
君を思って死んだ僕が、もしかしたら本当に
悲しんでくれてるのかなって期待しちゃうから
生きていたら。なんて思っちゃうから。
死んだ僕は泣いている彼女を見つめている。
ふとディスプレイに映った曲の歌詞が見えた

『こっち向いて最愛よダーリン
この夢は覚めないままなのに
あなた、つけてくれた傷跡
あまりにも愛しいの』

もしもの話 彼女が僕を思って聴いてくれてるなら
これ以上の呪いは無いなと思った。
一生消えない傷跡。
一生消えない恋の呪い。
他の人と幸せになんてならないで
僕の顔も声も口癖も忘れないで。
雨で濡れた紫アネモネの花言葉は
『あなたを信じて待つ。』
ずっと、こちらで待っているからね。✖︎✖︎ちゃん。



おしまい

追記
MC毒歩名義で出した紫アネモネの憂鬱


の男目線でのミニ小説です🎌
健気で純粋無垢な彼女の対比で
重くて卑怯で、でも彼女を愛していた彼の物語
いまだに紫アネモネの憂鬱が好き!!
って言ってくれてる人が多くて嬉しくて
書きました🙏
以前noteに彼女目線でも書いたのでそれも
みてくださると嬉しいです❤︎
最後まで読んでくれて有難う御座います🤏

夢でも会ってね、それじゃあまたね。

紫アネモネの憂鬱 歌詞✒️

これで最後
最低な罪人
横顔憎らしいの

午前零時きみ隣で
微笑う私灰かぶり
魔法解ける言えない
『帰らない』
替のない姫にはなれない

『君とならね安心するよ』
『生きるなら
 君とがいい』
『初めてだよこんな気持ちは』
息吐くようにつく嘘
『愛してる我儘な 僕を見て』
『一緒がいい』
誰でもいいクセに
幸せで不幸せ
甘い地獄 堕ちて逝くの

こっち向いて最低よ
ダーリン
『大好き』に
責任無いくせに
首につけた跡は罪色
貴方との秘密なの

会いたい

言葉をお金で買いたい

見たいよ脳内貴方を解体
部屋に飾った紫アネモネ
信じて待ちます私は馬鹿だね
貴方に情無い 気持ちはもう無い
つぶやく馬鹿だね『終わりはもう無い』
散った花弁私みたいで
泣いて囁くあの花言葉

手を繋いで歩いてよ、ねえ
寝る前声が聞きたい
貴方との写真が欲しいの
口に出せないワガママ
貴方いない毎日を夢に見て
泣いてたの、地獄まで一緒だよ
遊びでいい 玩具でいい
嫌わないで離れないで

こっち向いて最低よ
ダーリン
『大好き』に
責任無いくせに
首につけた跡は罪色
貴方との秘密なの

きっと この恋路
終わりは無いからね
どこでもいい
貴方の中 隅に置いて
ねえ?
鐘が鳴るわ
バイバイねダーリン
ガラスの靴なんてないくせに
わたし それでも
貴方といたいと
言い聞かせ嗤うのよ
こっち向いて最愛よ
ダーリン
この夢は覚めないまま
なのに
貴方つけてくれた傷痕
あまりにも愛しいの

散ってく花弁
私みたいだね
ずっと一緒を夢見ちゃ
もう駄目
枯れずにいたいわ
貴方のそばで
『信じて従う』
紫アネモネ
期待はもう無い
犯して頂戴
ここまで来たなら
後悔もう無い
『死ぬまでどうか
貴方のそばで』
夢でも会ってね
それじゃあまたね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?