とろろ

サラリー生活をしていましたが、現在は大学院で哲学などを学んでいます。心がとらえたことを…

とろろ

サラリー生活をしていましたが、現在は大学院で哲学などを学んでいます。心がとらえたことを大切に絵や言葉にしていこうと思います。どうしたって鳥が好きです。

最近の記事

回収されない偶然

どちらかというとすぐに行動できる方ではない いろんな人に会うとか、いろんな場所にいくとか、億劫である ただ、ときどき、どうしようもなく強い思いに動かされることがある こんなことするとは思ってなかったよ、と知人に言われる 正直、自分でもこんなことするとは思ってなかったよ、と思う これは一体なんの衝動なんだろう 4月から住み慣れた場所を離れて、新しい生活をはじめた この金曜日に、買い物しがてら近所を散策していた ほうれん草と油揚げをひっさげて このまま帰るのもなぁと、いつ

    • 親愛なる友へ

      君はいつものように 久しぶりって笑ってた とても静かに穏やかに でも かなしくて くやしくて 自分を責めて 相手を責めて そんな自分が嫌になって 君は今 ひとりたたかっている 優しい言葉にも 励ましにも ありがとうと微笑むけれど 君は今 ひとりたたかっている そばにいられなくても いつだって味方でいる 混乱で涙もなく 壮絶なたたかいをして 光を見出そうとしてる 深い悲しみを負った背中に 理不尽を引き受けた心に つらいよね 分かるよその気持ち なんて生ぬる

      • 人生にセーターを編んでやる

        人生に 真っ白いセーターを 編んでやることにした 真っ白い糸を買ってきて 慣れない手つきで編んでゆく 途中なんどか失敗して やり直すこともあった けれども 順調に編んでいた ある日 真っ白い糸がなくなった 買いに走っても どこにもない そんなはずはない! そんなはずはない! どんなに騒いでわめいても 世界に真っ白い糸はもうなかった 次の糸が見つからない 他の色にしたくない もうおしまいだ セーターは未完成で終わるんだ この人生とともに 糸…糸… 次の糸…ど

        • わたしという時代

          わたしが生まれた時 父は父であった 母は母であった 祖父は祖父であった 祖母は祖母であった わたしが生まれる前 父母となる人はわたしであった 父母となる人が生まれる前 祖父母となる人はわたしであった わたしのもとに命が宿ったら 「わたし」をその子に譲り渡して わたしは母になるのだろうか そうじゃなかったわたし 決してどこかへ行かないで 祖父母の古いアルバムには 祖父母がわたしの時がある 父母の古いアルバムには 父母がわたしの時がある それを確かめて わたしも大

        回収されない偶然

          時の音

          朝には朝の音がある 澄んだ空気をすぅと横切る 働きもののトラック やけにはしゃいだスズメのおしゃべり とばりの上がる音がする 昼には昼の音がある ごちゃ混ぜになった街の雑踏 近くて遠い会話たち せわしない道路の上に 場違いにのんきなハトの歌 今が満ちていく音がする 夕方には夕方の音がある 茜の色が深まるごと 不思議と響く子らの声 いろんなものが帰っていく  ひとつひとつの軒先で 命を育む音がする 夜には夜の音がある 夜ごとささやく虫の声 星を揺らす空の風 しんしん みし

          クリスマスローズと話したこと

          わたしの名前はクリスマスローズ ひとはそう呼んでくれるわ 下を向いて咲くのよ 雨とか雪とか大変だもの あなたの目からは 首すじばかりが見えて 見栄えが悪いかもしれないわね でも わたしは地面にすむ たくさんの生き物たちに向けて咲いているのよ このまえ 何匹かのみみずがわたしを見上げて 花見をしていたわ 風邪をひいていないといいけれど 春が近づいて たくさんの虫たちが ふかふかの土の上を歩いていくわ 連なって咲く わたしの下を アーケードのようにして 彼らはわた

          クリスマスローズと話したこと

          とんぼに乗って

          軽くなった君の手を 最後ににぎって 重くて切ない ポンと肩におかれた君の重さが 永遠になった日 あるじをなくしたエプロンの 悲しみに寄りそう椅子を見ていた 薄暗い台所で なにも変わらない玄関先で いつもの声を待っている 勢力を保ったまま 熱いものが もうすぐ心臓あたりに上陸します とんぼに乗ってお経を聞きに来た 信心深いたましい また会えたねってみんなで笑う 宇宙のへりで いつか君と待ち合わせ

          とんぼに乗って

          インコの鼻息は荒いのだ!

          宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』がアカデミー賞を受賞した。いろんな考察や解釈が出ていて、みんなそれぞれなるほどなぁと思うのである。 しかし、ひとつどうしても、くだらないけど共有したいことがある。それは、インコの鼻息は荒いのだ!ということ。 作中に、たくさんのインコ(恐らくセキセイインコ)が登場するが、とにかく鼻息が荒い。そして、それを見たとき笑いが止まらなかった。 それめっちゃ分かります! うちにはセキセイインコが1羽いらっしゃる。12歳のおじいさんだが、いまだ声

          インコの鼻息は荒いのだ!

          濃尾地震考

          先日、樽見鉄道に乗って根尾谷断層を見に行きました。震災や記憶などさまざまなことを考えました。 ※震災の被害を伝える画像などを載せています。 濃尾地震 ゴォォォというすさまじい地鳴り 明治24年(1891年)10月28日午前6時38分 根尾谷を震源とする地震(濃尾地震)が発生。 推定マグニチュード8.0、震度7 日本内陸部で発生した最大規模の直下型地震であった。 (関東大震災:M7.9、阪神淡路大震災:M7.2、能登半島地震:M7.6) 東海地方を中心に 全国14万2千

          濃尾地震考

          お雛様

          十数年ぶりに外に出たわ あの子大きくなったわね 三人官女がうふふと 楽しく話しているのを目撃 え、それどうしたの? 今はやりのネイルアート、昨日やってもらったの! え~かわいい~♡  久々の外は気持ちがいいね そうですわね ふふふ 優雅なお二人を発見 1年前は、きれいな雛あられを一緒に食べたね。 それ、わたくし食べていませんけど…? あ…あれ?(汗) 食べていませんけれど?? 実家を離れて十年以上 久しぶりに戻ってきました。 今年は全員そろって雛祭りを迎えられ

          デルフト Delft

          ひとり電車に乗って 最後の旅に出る レンガの赤 運河の緑 光が反射して 何もかもが美しい ブルーで有名なこの街に ふさわしい澄んだ空 黄色いチーズが並ぶ 広場の一角で もう二度と来ることのない 街の美しさに 射ぬかれた さようなら この街は わたしが見ていなくても 存在するし わたしが見ていなくても 美しいままだ

          デルフト Delft

          彼方此方のうた

          向う山の畑に立つ墓に入る 君の人生をおもう ごおぉーん  あぁまたひとつの神さまが 鉛の塊にあたって砕けた  ごめんなさいとも言われずに 隣の知らない人の墓の 南の島をさまよう人の むくろをいつか届けましょう 待っている人もまだ 東の島をさまよっていると 聞いてしまったので さかなと遊んでいた海に  知らないものの墓が立つ  それが戦争なんだろう 在りし日も 遠いところも ここへ集まれ

          彼方此方のうた

          半円のトゲを抜く

          小学生の頃、近所の美術教室に通っていた。 いま見るとヘンテコなところもたくさんあるけれど、当時はとっても真剣に描いていた。 1つのモチーフが与えられて、自由に描く。そういう日があった。 そのときのモチーフは「半円」 その形を使って、自由になんでも描いてよいというものだった。 しばらく試行錯誤して ついに半円を使ってテントウムシが描けるぞ!と気が付いた。 半円テントウムシをたくさん描いて、さあ色を塗るぞというとき… ふと、隣にいた子の絵が目に入ってビックリした。 自分の

          半円のトゲを抜く

          春夏秋冬

          さくら たんぽぽ なずな色 青い若葉に点々と 光のあたたかさ 色に溢れる ぼんやり けだるい空気 新天地での 期待と不安 人のいとなみ 空気に溢れる 春 日向ぼっこが大好きで かすみを食べている 仙人みたいな季節 ピーマン トマト とうもろこし レモンにスイカ 鮮やかさ 口に溢れる ひまわり つゆ草  朝顔 夕顔 美しさ 刹那に溢れる 夏  勢い盛んな みずみずしい 宝石のようなドロップをもつ 少年のような季節 柿の木 栗の木 りんごの木 梨にいちじく たわわな実

          春夏秋冬

          めぐりうた

          天と地の はざまに春を ことほぐ雲雀 こんにちは 七年前のわたしが 上を歩いた蝉 急いでつくった王国の 繁栄願ったハルジオン その首をもちかえる 蝉の声が どこかへ消えていた いつとは知らない  狸になったら 侮ってみようかな 木の葉の枚数なんか数えて もう十分…と かすれた声でいっている 落ち葉の群れ からめとる午後 摂氏零度に耐えぬくハエの 手の擦り合わせる音をきく 正月 鍋の住人があったまった頃 月の住人が風邪をひいたと カササギから電報 ダケカンバの冬

          めぐりうた

          仏像をえがく

          祈りのかたち 手に宿る

          仏像をえがく