ちょっと思い出しただけ


誰しも昔のことを思い出すことがある




映画「ちょっと思い出しただけ」を鑑賞した。


昔付き合っていた照生と葉。
別れた後、偶然葉が照生を見かけるシーンから始まる。

照夫の誕生日を一年ごとに遡り
現在別々の道を生きる2人が、あの頃をちょっと思い出すという回想映画である。

2人の掛け合いが心地よく
そこにクリープハイプの曲が染み込んでいる

共感するような場面も、胸がギュッと痛むような場面も、でもその瞬間がとても愛おしくてせつなくて…




特に印象的なシーン



世界中の人が同じ言語を話せば
言葉が伝わるのに


言葉が通じたとしても、
必ずしも心が通うとは限らない

逆に言えば
心で通じ合うこともある

でも伝えないと分からないこともある



誰しもが抱えたことのある問題ではないだろうか

いくら息が合う2人でも
長年連れ添った夫婦でも
親子でも、親友でも、恋人でも…

人間はそれぞれ違う考え方や生き方だから
意見が合わないのは当然である。

それでも同じ意見だったら嬉しいと思ってしまうのは人間のエゴなのかもしれない。



2人が喧嘩をするシーン
照生が足を怪我し、ダンスを踊れないかもしれないという人生の岐路に立った時

照夫
迷惑をかけたくないから、決断してから連絡をしたかった


迷惑かけて欲しい
言葉にしなきゃ伝わらない


どちらの気持ちも苦しいほどわかる
お互いを思うからこそぶつかるこのシーン

これが1年前に
照夫がプロポーズをしようと決めていた日に起こった出来事というのがまた胸が痛む





「ちょっと思い出しただけ」
の台詞の後に流れるナイトオンザプラネットが最高である。

夜の海に浸るような感じ
とても心地よい
ずっとここにいたいという執着ではなく、
「ちょっと」という塩梅

今だけはこの海の中に浸かっていたい
そんな気分になる


「夜にしがみついて、朝で溶かして」
を具現化したシーンである




ただ1つ疑問なのは葉は本当に「ちょっと」思い出しただけなのか?


・葉のLINEのアイコンは別れた後も、2人で飼っていた猫の写真であった

・照生の誕生日にケーキを買う

・葉は照生を見かけるが、
 照生は葉を見てはいない。
 照夫は葉から誕生日でもらったバレッタを見て葉を思い出す。

この違いはなんなのか

もしかしたら、葉はまだ未練があったのか?
真相は分からない



真夜中に1人で余韻に浸りたい時に、
もう一度観たくなる作品である
「ちょっと思い出しただけ」


監督 松居大悟
主演 池松壮亮、伊藤沙莉 

2021年・第34回東京国際映画祭コンペティション部門に出品され、観客賞を受賞。

p.s.
クリープハイプ好きには堪らない作品
(私はクリープハイプ好き)

この記事が参加している募集

映画感想文

映画が好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?