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「あなたがしてくれなくても」最終回、ぶっちゃけどうでした?

今クールで最も話題性のあったドラマと言えば「あなたがしてくれなくても」一強だったんじゃなかろうか。



「あなたがしてくれなくても」通称「あなして」は、不倫をテーマにした二組の夫婦の群像劇。



演出や小道具、登場人物の息遣いや伏線など細い所まで凝っていて、製作陣の誠意が垣間見えたし、なおかつ視聴者が”じぶんごと”としてストーリーに没入できる作品(このタイプのドラマを私は「参加型ドラマ」と呼んでいる)で昨年度社会現象になった「silent」のように、脚本がとても丁寧で、非常に好みだった。

フジテレビって、本当に素敵な組織だよ。


かくいう「あなして」、この3ヶ月間、本当に夢中で見入っていた。毎週木曜22時を待ち侘び、リアルタイムで鑑賞するのが1週間の楽しみだった。


そして待望の最終話。


......正直、正直言ってしまうとかなり拍子抜けしてしまった。


はあ??みちなんでやねん???なんやこいつ???が率直な感想。



今までの陽一(瑛太)の不貞とか、誠(岩ちゃん)急なキャラ変で共感性羞恥とかもうどうでもいい。
もほーーんとびっくり。みち。あんたが大将だよ(褒めてない)。なにゆえ陽一にカムバ???


この感想、自分だけズレてたらどうしようかと思い、すぐさまツイッタランドへ直行すると、「嘘やろ」「終始納得いかん」「最終回でガッカリ」「3ヶ月なんのために追いかけてきたのか」とやっぱ世論はそうよな....という意見でごった返していて、もう荒れに荒れていた。



決して不倫を正当化するわけではない。奈緒演じるみちと岩ちゃん演じる誠のしたことは、倫理的に咎められて然りだ。

条件反射的にセックスを拒み、岩ちゃんの気持ちもフル無視でシャッターを下ろし続けてきたみな実演じる楓も悪いが、いかんせん浮気もせず仕事をメキメキと頑張っていただけの楓の立場を考えろ、ではもちろんある。


でも!でも!これはあくまでフィクションでありドラマなんよ.....


岩ちゃんとみちがくっつく。は、望んでたけど100歩譲ってまあ無理か...にしても、元さや(瑛太)に戻る。これだけは大半の視聴者は望んでいなかったはず。


あれだけ子供が欲しくて、あれだけ求めても背を向けられて。
あれだけ苦しんで、だからこそ新名という存在に縋ったのに?


「子供を持ちたい、持ちたくない」という、夫婦の将来において決定的な価値観にズレがあることが分かったのに、それが相反したから別れたのに....??


奈緒(みち)、そこ折れれるんや......??(笑)


最終回を迎えて初めて気がつく、タイトルでありメインテーマである『あなたがしてくれなくても』に続く言葉やその意味合い。


このドラマでいえば当初私たちが想像していた「あなたがしてくれなくても、身を心も愛してくれる人がいるから幸せ云々」的な意味合いは完全にミスリードで、この結末を踏まえて思い返すと「あなたがしてくれなくても、一緒にいたい」だったということになる。


まだ最終回を迎えていない原作に先駆けて終わったドラマ版。だからこそ、プロデューサーの方も「慎重に作っていった」「原作との違い楽しんで」と表明していたから、10話完結の短いドラマの中で収まりの良いものにしてみたのだろうか....



なんか、なんだろう。「だから日本はずっと保守的なんだろう古来からし"美徳"とされている同調圧力社会のままなんだろうな。」
と一ドラマの結末だけでそう感じてしまった。


患部にメスを入れたは良いものの、術後に縫合せず傷口はどんどん開いてくまま。日本の体制ってなんかずっとそんな感じだ。


制作陣が悪いとか、つまらなかったとかそういうことを言いたいのでは決してない。前述どおり、本当に緻密で機微で美しく、限りなくリアルに近くて心をグッと持っていかれたのは事実。

ただ、ドラマ=ロールモデルというかマスメディア=世論代表、みたいな節が現代の日本に暗黙の了解で横たわっている以上、結局ドラマという虚構だとしても「不倫は悪ではない」という事例はきっと描けない。


"ハリボテ"っぽかった恋愛リアリティーショーも今ではだいぶ浸透した背景は、いろんなコンテンツや情報が飽和した世の中に対して、「刺激」や「共感」を求める人が多くなったからだと思う。


だからウケた。カメラを通して、半分ヤラセという前提を弁えていながらも、「限りなくリアルに近いなにか」が垣間見える瞬間に多くの人は自分を重ねたり、「リアル」ならではの予測不能さに翻弄されてきたのだろう。


限りなくリアルで、でもどこか浮世離れしている。そんな世界観を現代に生きる人はエンタメとして楽しんでいる気がする。



でも実際、「リアリティ」を求めておきながら、『まあ、実際こうですけどね!!』という本気のリアリティを突きつけられると一気に拒絶し、攻撃する習性にあるんじゃないか。


自分のことは棚に上げて、不倫した芸能人のことでは大騒ぎ。マジョリティが否とするものはダメ。今までダメだったものは今もダメ。


セクシャルティについての法改正とか結婚育児に関する制度が不十分なままなのも、こういう"殻を破れない風習"みたいなのが雁字搦めになってるから、「伝統」みたいなのが呪い化して変化を恐れてるからなのかな......



たかがではないけど"たかがドラマ"で、大袈裟だとは思いつつも、操作、とか悪しき伝統、みたいなものを感じ取れてしまう結末で、2日経った今でもわだかまりが残っちゃうなあ。



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