Everything Everywhere All at once

アカデミー賞をたくさん受賞した映画の題名ですが今日書きたいのは映画の話ではありません。

❤️思考に必要な思考のフレームについてです。

先日ある人のアイディア提案を聞きました。その人は丁寧にガントチャートを作り検討の計画を立案、着実にステップを踏んで検討していました。
まずユーザーニーズを確認する。その上でソリューションの案を作り、その上で実現性、競合の状況を調査、さらにソリューションをブラッシュアップする。

素敵な計画に聞こえますよね?

その人が提案したユーザーニーズは彼女自身の強烈な体験から来たもので、❤️が十分に感じられました。そして多くの人が共感するであろう明確なニーズでした。そのうえできる限りの人にアンケートをとってただの思い込みではないという検証も済ませていました。そこまでは非の打ち所がない。

しかし

ではどのようなソリューションを提案するのか?3っつ挙げられていた候補のうち二つは「現在地上に存在していない万能AI」を前提としたいわば「ドラえもん依存型」の提案。残りの一つはある程度実現性もありそうでしたが「競合製品が山ほどあるに違いない」と思えるもの。

しかし

その提案者は自分の計画、提案に自信を持っていました。なぜなら最初の計画では競合調査、実現性の検証はこの後の工程なので。繰り返しになりますが、最初にたてた計画通りにちゃんと検討は進んでいるのです。

そしてその提案は中間審査で高い評価を受け見事合格となりました。ぱちぱちぱち。

ーーー

私は中間審査の審査員ではありません。だから❤️思考の観点からこの状況を評価します。

この計画、提案は間違っている。

では何が間違っているか?デザイン思考では「まず問題を定義、その次にソリューションを検討」と説いています。有名なダブルダイアモンドというやつです。
その人の計画、提案はその観点からも非の打ち所がない。

しかし❤️思考においてはそれは間違っている。ここで本文章の題名に戻りましょう。Everything Everywhere All at once.つまり❤️思考においてはスタートした時点で、ぼやっとであってもどのような解決策を考えるか、それはどのような市場にあるもので、競合は存在するのか、存在するとすればどんなものかのイメージを抱いている必要がある。

つまり

ユーザーニーズの確認、ソリューション案の検討、競合優位性、技術的、ビジネス的実現性は検討の濃淡こそあれど、最初から同時に存在していなければならない。

こう書くとこのような反論があるかもしれません。

そうやると、既存の制約に囚われ自由な発想ができない。最初は制約を外して発想すべきではないか?

それにはこう答えます。例えば重力がないとすれば、と発想することは有益です。しかしどこかで重力の存在に立ち戻らなければならない。重力が存在することは常に頭においておいた上でそれがないとしたらどんな案があるだろうか、それを実現するためにはどうすればいいだろうか、と考えることは有効です。
しかし「とりあえず重力あとで考慮するものとして検討から外します」だけでは「ドラえもんの秘密道具依存」のアイディアができるだけです。

最初から全ての要素を頭に置き、検討を進める。検討を進める段階で最初の想定と異なる事実が判明したり、アイディアを得た場合には躊躇なく最初のシナリオを捨てる。

つまり❤️思考で新しいアイディアを作る、というのは、「全体の計画」をぼんやりと頭に置いた上で、全体のあらゆる部分を同時に考え、検証し、具体化していく。粘土で全体の形を大まかに作っておき、少しずつ作り上げていく。必要であれば全部やり直す。そうしたプロセスです。

全体を絵を描くことなしに「とりあえず土台を作る」「次に一階を作る」「2階を作ったところで、建築法の制約に気がつき3階が作れないことがわかる」といったように「着実にステップを踏んで作る」方法ではありませんし、最初にかっちりした計画を作った上で土台、一階と作り上げていく方法でもありません。

全ての要素は最初から同時に存在しているのです。それがあってこそ初めて「これは絶対競合が存在する分野だから最初に競合調査をやろう」とか「ユーザーニーズの確認が一番不安だからその検証方法を考えよう」とできるわけです。全体計画をぼんやりと描くことなしに、何がクリティカルパスかを知ることはできない。そして最初からクリティカルパスを意識しないプロジェクトは絶対に失敗します。

❤️思考研修ではこうしたプロセス用いてみなさん個人の「やりたいこと」を形にするお手伝いをします。ご興味を持たれた方はWebサイトからお問い合わせください。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?