見出し画像

ドサクサ日記 12/4-10 2023

4日
ラジオ収録とスタジオ作業。とある有名ミュージシャンが所有していたというスタジオに行った。おそらく80年代か90年代とかに作られたのだと思うけれど、一軒家にどかんとSSLのコンソールが入っていて驚いた。普通に作ったら1億円では済まない。しかし、これが都内のスタジオにしては広い部類に入らないのだから、恐ろしい。1億円のスタジオでも狭いという事実。潰してしまうことの損失を思う。

5日
チバユウスケさんが亡くなったことをニュースで知る。とても悲しい。食道癌は予後が悪いことが多いけれど、チバさんなら病を乗り越えて、またむちゃくちゃ格好いい姿を見せてくれると信じていた。願っていた。インスタのアカウントでの投稿が少しずつ増えているように感じていたので、復帰が近いのかなと思っていた。そこにきてこのニュース。心臓を鷲掴みにされたように、胸の奥がギューっとなった。深夜に「世界の終わり」のMVを観なかったら、俺の人生は違っていただろうと思う。バンド名はThee Michelle Gun Elephantをヒントに考えた。そのことがチバさんにも伝わっていたらしくて、いつかのフジロックの深夜のOasisで「知ってるよー」と言ってくれた。「なんかカバーしてくれてるらしいじゃん」とも。目の前にいるロックスターを直視していいのかもわからない、ただのひとりのファンに戻って、あんまり言葉が出て来なかったことと、チバさんがえらくご機嫌だったことだけを覚えている。当時、『cult grass stars』から『Hi Time』を経て、そのあとのクソ素晴らしいシングルEPに震えまくった。そして『Chicken Zombies』。ロックの奇跡を体験していた。98年の豊洲のステージを目の当たりにして、「俺もあそこに立ちたいな」と思った。日本のロックバンドがまったく遜色なく、洋楽中心のフェスのメインステージに在った。自分たちの言葉とやり方で、ひとつも劣等感を抱えることなく。チバさんに言葉を伝える術はないけれど、どうか安らかに。魂が千切れるくらいの速度で、本当に恋焦がれました。

6日。
D2021とCLPで企画した、パレスチナ、ガザの民族浄化についての番組に参加。とても有意義な時間だった。最初に断っておくと、俺は反ユダヤ主義者ではない。世界中を彷徨っていたユダヤ人の苦しみは、もちろん人類史的な問題だと思う。しかし、ユダヤ人への加害の責任をパレスチナに押し付けて、それで西欧の贖罪とはならないだろう。むしろ、影は濃くなってしまった。ガザで、毎日どれだけの市民が爆撃されて、命を落としているのか。というかそもそも、今日に至るまでの不自由な隔離政策についても、大変に問題があると思う。駆け足ではあったが、番組では早尾さんの解説でイスラエル建国とパレスチナの歴史が理解できる。時間がある方はぜひ観てほしい。そして、それぞれに考えてみてほしい。国家や民族について考えるきっかけにしてもらえたら嬉しい。そしてもちろん、俺も学んでいきたい。


7日。
今にもショートしそうだった電源コードを新品に替えるというミッションを完遂。ついでにノイズ除去用のアースケーブルも自作。なかの回路について理解するのは難しいけれど、スピーカーや電源、アンプ全体の構造を知るのはとても楽しい。今はなんでもネットに転がっている時代になった。そのすべてが真実とは限らないけれど、音楽を趣味とする人は案外に多くて、ニッチで有益な情報に出会える。

8日。
LINKのアルバムが発売になった。休日やお互いの仕事終わりに集まり、夜が深夜に変わるまでの時間帯を寄せ集めて録音したアルバムだ。それぞれにヘトヘトな日もあったが、録音の時間になると精神が復活して、情熱が背筋や神経をピンと伸ばしてくれた。構想3年、録音は1年と半年くらいかかった。バンドはどこまでも転がり続けられるんだと証明するような、最高のパンクロックだと思う。

9日。
個人的なやり取りが暴露されたり、第三者によって公開されたりすることが公然と行われている。痴情のもつれの腹いせを性的な動画などの公開で行えば、リベンジポルノとして罰せられる。それとは違うが、内面や素の姿という意味では言葉にも性質的に全裸のような部分があり、身体と同じように勝手に晒すのは間違っていると思う。恨みにつけ込んだただの金儲けを正義だとするのは違うのではないか。

10日。
鯵を2尾買ってきて、塩を振って焼いて食べる。それだけで幸せ。旬なのかどうかも分からない。そういうことはどうでもいいとは言い切れないけれど、どうでもいい気もする。試しに買ってみたビールはIPAっぽい感じで好みではなかった。けれども、悪くない。大体が、人生は悪くないくらいが丁度いいような気もする。そういう、悪くない、みたいな1日を噛み締めて、静かに過ごせることは幸福だ。