Greed Work

ディスクレビューなど、音楽にまつわるコラムを徒然なるままに書いていきます。

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最近の記事

【レビュー】ストレイテナー / Applause (2020.12.2 発売)

転がり続けた先の大人のロック。大袈裟すぎる希望や絶望ではない、ありのままを提示する強さが照らす未来。 いつになく多彩な楽曲たち。寄り添ったり、突き放したり。温かみを感じたり、荒涼とした雰囲気だったり。 それでも、全体を通して不思議と統一感がある。 シングルカットされた耳なじみが特に良い3曲から入って、中盤の擦れた雰囲気、次いで平熱からじわじわ盛り上がって、最後はエモーショナルな余韻を残して終わる。 一聴して映画を見終わったような感覚だ。これは、以前のアルバムCreatu

    • 【レビュー】Arlo Parks / Collapsed In Sunbeams (2021.1.29 発売)

      音が漂う雰囲気と、音に潜む言葉の意味を、追いかけて探るうちに気付けばはまっていく。 ビート、ハスキーな声、メロディ、最小限な音飾、ミニマムな雰囲気、すべてがあまりに心地いい。 明るめの、でもどこかに憂いを感じる声と曲の雰囲気は、安定感があるようで何故か心にざわめきが残るような不思議な感覚。 そして、一定のテンションで曲が続いていても、絶妙な間やポエトリーディングによるフックで何度となくハッとさせられる。 2つか3つのコードからなる進行を一定のビートの下で繰り返していく。

      • 【コラム】2020年 マイベスト40曲

        2020年のベスト40曲を選んでみました。洋楽邦楽問わず、そして順不同です。以下、トピックごとにその背景や思いを書いていきたいと思います。 コロナ前なのに コロナがやってくる前に作られたのに、まるでコロナを予見していたように感じさせる曲が印象に残りました。 ”人間だった(羊文学)”が示す行きつく文明化と自然の恐ろしさ、”東京(GEZAN)”が表す社会との対峙とその混沌さ。ただしいずれも、空恐ろしい雰囲気の中にも未来に希望を抱かせるところが印象的、そして救いでした。 コロ

        • 【レビュー】GOGO PENGUIN /GOGO PENGUIN (2020.6.5 発売)

          波の間を通り抜けながら、流暢に歩いているような音 時には大波、または細波。 どんな波も自分たちと共鳴させて、揺らいだ美しい音を生み出しているようだ。 音の抜き差しや音の流れが強く感じられる。 ダイナミズムも随所にあるが、それらは数十秒ほど長い時間をかけてじわじわと盛り上がっていくものだ。 これまでの作品よりも、余裕と威厳が感じられる。大人の余裕というべきか、セルフタイトルをつけるだけあって、一音一音に意志があるようである。 複雑に作り込まれた音構成と、それにも関わらず

        【レビュー】ストレイテナー / Applause (2020.12.2 発売)

          【レビュー】THE NOVEMBERS / At The Beginning (2020年5月発売)

          喜でも怒でも哀でも楽でも0でも1でもない思い 巷に溢れる曲の多くは、1曲を通じて1つの感情や思いが表現されるのが普通ではないかと考える。 1つの題材がいくつかの視点で切り取りとられたり、ストーリーに乗って展開されたりする。 例外もあると思うが、THE NOVEMBERSのこれまでの曲の多くも、1曲で1つの題材が表現されてきたと感じる。 しかし、今回のアルバムでは、1曲の中で複数の思いが感じられることがあった。 瞬間的には言葉で表せないような独特の感覚が、聴いたそばか

          【レビュー】THE NOVEMBERS / At The Beginning (2020年5月発売)

          【ディスクレビュー】Bibio / Sleep On The Wing (2020.6.12 発売)

          いつものように、すぐそこにある自然を感じさせるエバーグリーンな音。 どこか懐かしいのに、いつも新鮮に聞こえる。 アイルランド民謡からの影響であろう民族的な雰囲気が多いが、一方で、どこにも属していない、いつの時代にも当てはまらないような無国籍感・浮世離れした感覚も感じる。 普遍的、当たり前なようで、これは新しい世界での感覚なのだろうか? ギター、ピアノ、ストリングス、時に1つの楽器のようにも聞こえる柔らかい歌声、手拍子、小鳥のさえずり、その全てが混ざり合って優しく問いかけて

          【ディスクレビュー】Bibio / Sleep On The Wing (2020.6.12 発売)

          【ディスクレビュー】吉田一郎不可触世界 / えぴせし (2020.5.13 発売)

          どこか懐かしく、日常を感じる。 猫のこと、コーヒーのこと、おばけのこと。 生活に出てくるキーワードが歌詞には並んでいる。 メロディもキャッチーで、優しい人柄が出ているような落ち着いた声に癒される。 でも、シュールなのだ。 パズルのピースは全部揃っているのに、正確に当てはめていっても、いびつで凸凹なものが完成してしまうような感覚。 1つ1つの単語や文はありふれているのに、まとまりで聴いてみると「味わい深い」とも、「哲学的」とも、「?!」とも感じる歌詞がインパクト大。

          【ディスクレビュー】吉田一郎不可触世界 / えぴせし (2020.5.13 発売)

          【ディスクレビュー】LUNKHEAD / pulsequal

          LUNKHEADは生きていることと戦っている。 デビューから今まで一貫してその戦いを、戦っている様を訴え続けている。そして、戦いの中からは絶対的な光が見える。いつだってその景色が、生々しくて儚くも美しいのだ。 今作は、戦いも光も、どちらもが高い純度で感じられた。 "朱夏"、"心音"で感じる、生死との剥き出しの対峙。 "光のある方へ"、"はじまれ"で感じる、陽性のパワー。 そしてどの曲も、ぶつかる個性とバンドとしての調和、アンバランスなようで最高なバランスが、気持ちいい

          【ディスクレビュー】LUNKHEAD / pulsequal

          【ディスクレビュー】The 1975 / Notes On A Conditional Form

          バンドの歴史を振り返るようなアルバム。 アンビエント調なインタールードがいくつも挿入されていて、各時代にタイムスリップしているような、記憶の中を辿っているような、夢のなかを彷徨っているような感覚になる。 アルバム全体での情報量は多くて、長さも80分ある。でも、不思議と「次はどんな曲が来るのだろう」と思いながら聴くと最後まで聴いてしまう。どんなタイプの曲も耳なじみのいいサウンドとグッドメロディで、そんな曲たちが練りに練られた構成で続いていく。ボリューミーなのに消化不良に

          【ディスクレビュー】The 1975 / Notes On A Conditional Form