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書籍とは「神の見えざる手」である

本を読んでいると、「こんなに安くて良いの?」とよく思います。
明らかにコストパフォーマンスの概念が捻じ曲がっていて、900円の新書からその何倍もの価値を感じることもあります。

例を挙げると、世界的名著で知られる『サピエンス全史』。
2023年11月10日に文庫版が発売されました。
お値段なんと1,089円(税込み)。いやラーメンじゃないんだから。
この本から得られる知見を考えれば衝撃的な価格です。

なぜそのようなことが起こるのか?
今回は「神の見えざる手」という考え方から、その一因を探ります。


「神の見えざる手」とは?

「神の見えざる手」。あるいは単に「見えざる手」とも。
イギリスの経済学者アダム・スミスによって提唱されました。

人は自分自身の安全と利益だけを求めようとする。この利益は、例えば「莫大な利益を生み出し得る品物を生産する」といった形で事業を運営することにより、得られるものである。そして人がこのような行動を意図するのは、他の多くの事例同様、人が全く意図していなかった目的を達成させようとする見えざる手によって導かれた結果なのである。

『国富論』第4編「経済学の諸体系について」第2章

ちょっと難しいので分かりやすく言えば、

みんなが自分の利益だけを追い求めたとしても、見えざる手がはたらくことにより社会全体が良い具合になるんですよ。

といった感じでしょうか。

例えばコッペパンを売り買いするときに、
 売り手:儲けたいから、一個200円で売ろう
 買い手:お金貯めたいから、一個50円で買おう
と考えたとします。どちらも自己中心的ですね。

するとどうなるか。
良い感じの値段で折り合いが付きそうです

パンに限らず、存在する全ての商品は、
「売り手はなるべく高く売りたい」
「買い手はなるべく安く買いたい」

という市場原理で価格が決まっています。

この「神の見えざる手」という概念を、書籍にも転用してみます。

利己的な書き手と利己的な読み手

書籍に「神の見えざる手」を適用する際、その登場人物は、
「書き手」と「読み手」ですね。
書き手は著者(あるいは出版社)、読み手はわたしたち読者です。

先ほどの例のようにそれぞれの思惑(自分の利益)を書くと、
 書き手:なるべく多くの人に読んでほしい
 読み手:なるべく多くの価値を得たい
となります。

では書き手はなるべく多くの人に読んでもらうために何をするのか。

まずは出し惜しみをしないことです。

自分の知識を(少なくとも書籍タイトルに関連するものであれば)、全て書き起こした方が、読者に価値的だと感じてもらえます。
書籍を出版することの大変さを考えれば、出し惜しみして次作に回すといった判断はリスキーです。

もう一つは価格を上げないことです。

多くの人に読まれたい著者にとって、出し惜しみせずに書いた渾身の一作が「価格が原因で読まれない」ということは絶対に避けたいことです。
そもそも本は、内容に関わらず全部紙で出来ていますから、原価は同じです。つまり価格を上げると、悪目立ちして悪材料になります。

この二つの「書き手の ”利己的な” 行動」により、
結果として書籍というものは
著者が出し惜しみせず、全力で書き上げる。でも価格は釣り上がらない
という最強のコンテンツになります。

そしてそれが、読み手の思惑である「なるべく多くの価値を得たい」とドンピシャリ、するわけです。

だから、読書は最大効率なのだ

「読書はコストパフォーマンスが良い」とよく言います。
はじめに述べたとおり新書でも1,000円程度で購入できますし、電子書籍なら更に安いです。

Kindle Unlimitedや図書館を活用したらもはやコストパフォーマンスは計測不能の域に達します。
どんな数字でも、ゼロで割ったらエラーが出ますから。

今回、自分なりに考察・言語化をしてみて、あらためて読書はすごいなと。
この習慣を5年、10年と続けた先に何が待っているのか、楽しみです。

主に読書について発信しています。
よろしければ自己紹介も見ていってやってください。

それでは、また。

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