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畜産・酪農家に更なる打撃! TSMC誘致で失われる牧草地

台湾の半導体製造大手のTSMCの熊本工場JASMが熊本県菊陽町で建設を進めている。これに伴って、関連企業の進出も相次いでいるが、農地の転用によって畜産・酪農家にとっては大きな打撃となる可能性が非常に高い。

『日本農業新聞』には、近隣の農業者から困惑の声が寄せられているという。


牧草地の買収。畜産・酪農の危機

ロシア・ウクライナ危機などの影響から輸入飼料の価格が高騰している。
ここに、TSMC関連の土地買収によって、国内自給飼料が失われるという、畜産・酪農家の方々には深刻な問題が出ている。

土地の買収について、県は農業に支障が出ないよう、原則として、転用は基盤整備を未実施の農地に限る方針だという。しかし、畜産・酪農に使用される牧草はこういった農地で栽培されているため、このような農地が失われることは畜産・酪農の飼料の不足につながる。


矛盾!国内の乳牛を殺して、輸入される乳製品

『農業協同組合新聞』によると農水省が、生乳の需給改善に向けて、乳量が少ないなどの低能力牛を早期に淘汰する場合、今年3月から9月まで1頭当たり15万円を交付する事業がスタートしたという。生産者団体や生産者の需給調整を後押しする事業としているが、酪農家からは「最も求めたいのは牛を減らすことではなく生乳価格の引き上げだ。需給状況の潮目の変化も感じており、このままでいいのか消費者も含めて考えてほしい」との声が上がっている。

さらに、生乳を廃棄しないでバターなどの保存できるものに加工したくても、バターは海外から輸入していて在庫過多状態にあるそう。

つまり、乳製品の輸入は減らさず、国内の乳牛を処分するということだ。

『北海道新聞』によると、国は「カレント・アクセス」という乳製品の低関税輸入枠を設けており、酪農家は生乳の減産を強いられているというのに、この枠を使って大量の乳製品を輸入している。

この枠は、農産物の自由貿易を推進する「関税貿易一般協定」(GATT)ウルグアイ・ラウンド農業交渉の1993年の合意を基に、95年度から設けられ、日本がそれまで数量を制限していた乳製品の輸入を95年度から自由化し、国内の酪農業の保護は関税で行う(=関税化)ことになった。
しかし、輸入乳製品に高い関税をかければ、貿易自由化の流れに逆行することになるため、現行(カレント)の輸入実績に基づき、輸入の機会(アクセス)を他国に開き続けるという国際的な約束を交わしたという。

農林水産省によると、国が主体となって貿易する乳製品の「カレント・アクセス」枠を設けたのは他にカナダだけで、カナダの枠の大きさは日本の約3割となっている。

つまり、日本は他国と比較にならないほど多くの乳製品を必要かどうか関係なく輸入しているのだ。

「カレント・アクセス」は、義務ではなく、日本国内の需給に応じて輸入量をコントロールしてもいいはずなのに、農水省は毎年13万7千トンの枠全量をきっちり輸入しており、ここに批判が集中している。

政府は他国からの圧力に屈せず、国内の酪農家を守ることが、本来あるべき姿ではないだろうか。


食料は国防! 食料自給率を犠牲にする政策はしてはならない!

熊本の畜産・酪農・農業の問題に警鐘を鳴らす『農業国防研究所』の方々も、日本の第一産業を守らない国の政策に疑問を呈している。

この動画では、牛1頭当たり減らすと15万円を交付する国の政策が酪農家を救わないことを説明している。低能力牛を減らして、新たな牛を育てれば良いとする意見もあるが、国は乳量を増やしてはいけないとしているため、新たな牛を増やせないというのである。

ここに、輸入飼料の価格が高騰する中、TSMC誘致に伴う農地買収で、国内の牧草も手に入らないとなれば、畜産・酪農家の方々はお手上げ状態となる。


食料は人間の生命の維持に欠くことができないものであり、国の基礎として絶対に守らなければならない重要なものである。食料の大部分を外国からの輸入に頼らざるを得なくなるような政策を進めれば、外国からの輸入がストップした場合に危機的な状況となる。

国は、来る食糧危機に備えて、コオロギ食などという検討外れなものを推進する前に、現在苦しい状況にある第一次産業の方々を守ることが先決である。

決して、苦しい酪農家をさらに窮地に陥れるような政策を進めるべきではない。


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