見出し画像

汚染された環境、失われた健康は元には戻らない

外資誘致を掲げてから、莫大な政府の開発資金が九州に流れ込み、市民はその恩恵に預かれるものと期待して湧きたっている。ところが、冷静に考えると、雇用効果は限定的、半導体不足解消を掲げて税金を投入したものの、その半導体は日本企業に優先的に供給されるわけでもない、さらには台湾で問題となっている公害問題と水不足、電力不足問題を輸入する結果となったことに気が付いた人は少ない。

台湾人にとってTSMCは、環境や健康と引き換えに国の経済を強くした面もあった。だからこそ、「栄光の代償」と冠を打った記事が台湾で報道された。台湾人が被ったこの甚だしい被害に対して、日本政府は「知らぬ、存ぜぬ」と水俣病問題からの反省がいっこうに見られない。

台湾国内の環境汚染のために起こった台湾人の健康問題は彼らの人生を奪った。人工透析率は世界一、肺がん罹患率はアジア二位だ。もちろん台湾の環境汚染には諸々の要因があり、また、国民の疾患には様々な原因が複合的に関連していることは事実である。

しかしながら、半導体産業が他に類をみないほどの有害物質を使用・排出することも事実であり、CMR物質や重金属が疾患の原因になり得ることも事実である。

台湾の汚染状況を鑑みると、台湾の環境に対する意識が希薄であることに疑いの余地はなく、台湾の企業であるTSMCが熊本や日本の環境を真摯に考える可能性は非常に低い。自国ですら環境問題を引き起こす企業が、外国で環境問題を起こさないことなどある筈がない。

熊本県民が失う美しい環境、健康な体、未来の命、漁業、農業、土地、労働力…… 国の愚かな政策のための重すぎる代償。そして、その代わりに得られる恩恵など日本人にとっては無いに等しい。

半導体工場による環境汚染や健康被害は不可逆的なものであり、一度汚染され、無くしてしまうと、二度と元には戻らない。本書で紹介した情報の多くは台湾で報道された現実であるにもかかわらず、政府は問い合わせに対して「台湾でそのような報道があることを日本政府は把握していない」としてなかったことにしようとしている。

さらには、2023年6月の熊本市の条例改正では、飛行機に乗って通勤するだけの住民票を置かない外国人にも「住民投票権」を付与しようと画策していたのだ。(反対のパブコメが大量に届いたことで県は今回は断念)

皆さんの町の町議会議員、市議会議員、県議会議員は、このことを理解しているだろうか。それとも知りながら推進しているのだろうか。

今こそ私たちが確かな情報を周知し、声を上げ、自らアクションを起こさなければ、生まれ育った美しく、懐かしい町や自然が破壊されていくのを目の当たりにするだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?