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国の借金は、本当に次世代への先送りなのか?

コロナ禍もあって今は国や地方自治体が大量に借金してこの危機を乗り越えようとしているのですが、本当にこんなに借金してて大丈夫か?、特に若い方にとっては心配ではないかと思います。では、本当のところは、どうなんでしょうか?

結論的には

「日本は、政府の借金を上回る資産と信用があるので大丈夫です」

というのが現段階の答え。

もちろん資産も有限なので、いつかは枯渇します。ただ現時点の1400兆円では、まだ大丈夫だということです。では具体的に国全体の金融資産と同債務がどのような状況になっているのかみてみましょう。

ちょうど、日銀が今月9月17日に速報ベースで発表しています。

2021年第2四半期の資金循環 (速報)

ざっと表で整理してみましたので、以下みてください。

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この通り

 「政府の負債が巨大だからといって、単純に次世代先送りとはいえない」

のがわかると思います。なぜなら政府の資産は実は700兆円もあるし、家計資産は差引1,600兆円規模で積み上がっているからです。資産だけで見ると2,000兆円に迫る勢いで増大しています。

#日経COMEMO   #NIKKEI

他には、主に「国富」(3,500兆円相当)に含まれるものがあって、土地建物やインフラなど、日本が戦後から築き上げた道路や上下水道、港湾などの固定資産や、海底にあるかもしれないガスなどの資源を別途保有。

このように、若い方は国の借金を引き継ぐ一方、巨大な金融資産・固定資産も受け継ぐことは知っておいた方がいいと思います。そして低成長とはいえ、ちょっとずつ経済成長もしているのでちょっとずつ資産も積み上がっては、います。

このような全体像を押さえたうえで以下、整理。

■「国が借金する」とは実際には、どういうことか

国の借金は結果的には「富の再分配」。国が借りる先の家計は主に富裕層の資産形成の結果。つまり国が借金をどんどんするということは「富裕層から貧困層への富の再分配が着実に行われている」ということです。

よくいわれる、現役世代から将来世代への借金の先送りではありません。どんな時代でも常に「持つ者が支払い、持たざる者が受け取る」のです。

■日銀の国債購入は国の信用に基づく貸付

あとは「国の借金の44%をまかなっている日銀の負担分をどうみるか」です。日銀は唯一お金を刷って自ら資産を創造することができる機関です。「日銀が44%まかなっている」ということは、日銀がどんどんお金を刷って政府の借金を負担している額が半分近くあるというイメージです。

これがなぜ可能かというと日本という国の信用度が高いからです。

例えば南米のベネズエラやアフリカのジンバブエのように、国の信用度が低い国であれば、お金を過剰に刷ったら、あっという間にハイパーインフレになって自国発行のお金(通貨)は紙切れ同然になってしまいます。そして実際そうなってしまいました。

しかし日本の場合は今の所は信用がまだあるので、こんなことにはならないのです。

では国の信用とは何か?というと「国が保有する資産+稼ぐ力」だと私は思っています。経営学や会計学などをかじった人からみれば「企業価値評価の考え方と同じ」とイメージするとわかりやすいかもしれません。

マーケットは日本のことを「日本は資産豊富なリッチ国家で、まだまだ稼ぐ能力がある」と思ってるので、日本円はハイパーインフレになりません。金利も低いまま。

それでは国の資産がどういう状況かは上で説明済みなので、では「稼ぐ力はどうなっているのか?」以下みましょう。

■日本の稼ぐ力

「日本の稼ぐ力」とは、日本のヒト(日本人)・モノコト(土地やインフラ、知的財産などの固定資産や資源)、カネ(資本)がどれだけ稼げるかということ。日本の場合は資源がないので、主に「ヒト」(=人的資本といいます)と「カネ」に頼るしかありません。数値的には経済成長率ですが、これはこの10年間は1%程度と低いままで弱いと言わざるを得ません。

【ヒト】公正で教育程度の高い日本人
しかし「法の支配が行き届いた公正な社会」「自由な経済環境」「教育程度が高くて民度が高くて働き者の日本人」などの定性的な部分が日本の稼ぐ力としてマーケットからそこそこ評価されているのでは、と思っています。

一方で日本は硬直的な社会で規制が多く、若者が激減し続ける少子化・超高齢化社会で、イノベーションが生まれにくい社会であることも事実で、さて長所と短所を天秤にかけて、ということになると「成長はあまり期待できないが、成熟したリッチ国家」という位置づけか。

【カネ】貿易立国から投資立国へ
私のようにFIREして収入ゼロでも、それなりの資産を運用していれば、自ずと収益が上がってきます。国全体も同じで、差引約400兆円(対外純資産)の投資収益は、経常収支でみても毎年10〜20兆円規模で積み上がっています。

ちなみに日本は世界一の対外純資産保有国です。

経常収支の推移も載せておきます。

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このように、経済成長は長年停滞してはいるものの、投資収益は安定的に上がっています。とはいえ、国自体の稼ぐ力(=イノベーション力)がどんどん衰退しているのは事実なので、いつマーケットから見離されるか、は心配にはなりますが「まだまだ当分は大丈夫かな」と思います。

*写真:2017年 しまなみ海道 来島海峡大橋
 しまなみ海道の巨大なブリッヂ群も次世代に残していく貴重な固定資産

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