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小説 残虐描写が多分に含まれます
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S #10

いつからだろう。

自分がほかのみんなとは、決定的に異質だと気づいたのは。

私は基本的には温厚だ。

ただ、自らの身が危険にさらされた時は、その限りではない。自らを殺そうとしてくる、敵に対しては、もちうる限りの殺意をもつ。「殺られる前に殺る。」 そうそれだけのこと。

自分が殺されては、自分たち、6人すべてが死んでしまう。自分だけが死ぬならばそれは構わないのだが、私は身体を共有する他の5人が死ぬ

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S #9

『さて。この件は片付いたな。みんな、おつかれさま。』

わたし、は、いつものように事務的に言葉を綴った。わたし、の辞世の句は「平穏無事」らしい。

『まあ、今回も一切の痕跡がないので、警視庁の馬鹿どもは鼻すら聞かないでしょう。』

私、は、今回は自分の出番がなさそうね、と、安心した表情を浮かべている。

『ねー、あたし、あれ買っていいんでしょ!お金頂戴。いつもニコニコ、口座非経由の完全現金払いでよ

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S #8

おれ、は、酔っ払うと人を刺したくなる。刺し殺したことは数えられるほどではあるのだが、普通は刺し殺すことはないのだろうから、これは逃れられぬ本能なのだろう。

今回は純然たる、火の粉払いであり、任された仕事であるが、やはりなんの利害関係もない悪人(いなくなっても誰も困らないヒト)を刺したくなることもある。

最後にそういうことをしたのは三人ほど前だったな。そういうことをすると、わたし、や、私、から叱

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S #7

S #7

『あー、ついに死んじゃったか。』

おもちゃをなくした、おれ、は残念そうにつぶやいた。

ナイフで首を落とすのは大変なので、無銘だが斬れ味抜群の日本刀の出番だ。柳生新陰流目録の腕前をもってすれば、死体の首を落とすことぐらいは造作も無い。

首を落とし終えた、おれ、は慣れた手つきで、関節と関節の間にナイフを入れ、解体を進める。

小一時間もしないうちに、それは60L のスーツケースに収められた。刀や

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S #6

S #6

5週間後、あたし、による拉致が滞り無くなされ、高橋淳は私達のアジト、正確に言うと屠殺場のひとつで吊るされていた。高橋はすでに意識を取り戻しているが、四肢を拘束され、猿轡をされているので、声にならない唸り声しか発することはできない。

『お前が生まれてきたことを後悔するまでお前を切り刻んでやるよ。せいぜい良い声で啼けよ。』

茶目っ気のある笑顔を、しかしながら薄ら寒い笑顔を浮かべながらおれ、は言った

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S #6

S #6

仕事を請け負ったからには完璧にこなすのが玄人。あたしは別に快楽殺人者でもなんでもない、普通の女の子だけれど、欲しいものを買うためのお金が欲しいの。

入会にあたって厳格な人物審査がある、会員専用のイングランドのオークションサイトでしか最近は買わないのだけれど、やっぱ入会金だけでも5万ポンドも取るだけあって、表の世界じゃお目にかかれない逸品がごろごろあるのよ。

あたしも11ぐらいのころは、ヴィトン

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S #5

S #5

『さて、どうしましょうか。』

ワタシはいつもどおり、困ったフリをして議題を切り出した。

『名前は高橋淳。歳は25。住所は東京都豊島区池袋3-13-2 ロイヤルパレス104。』

ななし、が13万円を渡して相手の気が緩んだ間隙に、財布をスッたワタシが免許証の情報を読み上げる。

『おれ、の出番だろ。任せとけよ。斬り刻んでいいよな。』

私達の中で随一のサディストが嬉々としてる。

『そうね。顔も

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S 設定

S 設定

六人の多重人格者

僕 主人格、男性、統治者、27歳

私 女性、交渉担当、責任者、32歳

ワタシ 中性、妥協担当、55歳

ななし 男性、マゾヒスト、やられやく、19歳

あたし 女性、暗殺者、13歳

おれ サディスト、処分担当、23歳

S #4

S #4

『ごめんなさい。』

肩がぶつかったので、そう謝ったのに、またか。

ななし、は、また絡まれていた。絡まれることが、彼の仕事、いや正確には趣味なのであるが、わざと絡まれるようなことをしているわけではない。

ななし、は絡まれやすい体質なのだ。絡まれることについては、天才と言って良い。

彼はどこから見ても予備校生で、気が弱く、しかしそれでいてメガネの奥の眼光は無駄に鋭い。眼光の鋭さはひとつの身体を

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S #3

S #3

私、女性、交渉担当、責任者、32歳。

私にとってはヒトもモノとなんの区別もないのだが、便宜的に生きているヒトカヒトモクをヒトと定義すると、ヒトをモノにする作業を始めたのは、私が18の頃だ。

よく殺人者はヒトの前に、動物を殺す、という話があるが、私達は違う。動物は好きだ。ワタシに危害を及ぼすことも少ないし、彼らからいわれのない敵意を向けられることはそうにない。

私達が件の作業をする目的は、ただ

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S #2

S #2

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S #1

S #1

この作品には残虐描写が含まれます。気分を害する可能性がありますので、ご注意ください。

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