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【読書感想文】米澤穂信『巴里マカロンの謎』

高校時代、ページをめくるたび登場する数々のスイーツに、糖分への欲求を募らせつつ読んだ小市民シリーズ。小鳩くん、小佐内さんと9年ぶりに再会しました。シリーズとしては11年ぶりの最新刊です。

4つの短編からなる本作、主役となるスイーツはマカロン、チーズケーキ、あげぱん、シュークリーム。やっぱり食べたくなりますね。

9年前は同年代だったのに、小鳩くんも小佐内さんもすっかり年下になっていました。久しすぎて、彼らがどんな人柄で間柄だったか朧気でしたが、すぐにペースを掴めてきました。そうだった、2人とも人に迷惑をかけない小市民を目指していたんだった。その互恵関係のために一緒にいるんだった…。

9年ぶりに読んだ結果、小佐内さんの魅力にやられてしまいました。これは嬉しい発見でした。かつては「可愛いけれど怖い子」と若干敬遠していたのですが、今はそのギャップがたまりません。可愛らしい外見とクールな内面のギャップといいましょうか。頭の回転が速くて、復讐を好み、冷めきった笑顔さえ見せるのに、小柄な身体をもこもこに着膨れさせて、スイーツを前ににこにこし、「それにはおぼやないわ!」と噛む。なんとも愛おしいです。

「ゆきちゃん先輩!」と秋桜に慕われる様子も微笑ましく見ていました。当の本人は適度な距離を保ちたいようですが…。秋桜、田坂さんといい関係を築けるといいなあ、と思います。田坂さんが頼りになりそうな予感はしますね。少なくとも、春臣よりは。

謎解きも面白く読みましたが、それ以上に登場人物のキャラクターに魅せられた本作でした。

次は冬期でしょうか。最近の大人向けミステリはもちろん好きですが、「日常の謎」を解き明かす青春ミステリも、やっぱり好きです。米澤先生の「〈古典部〉や〈小市民〉も大事にしたい」という言葉を信じて、続編を楽しみに待っています。

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