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「芸人と兵隊」というタイトルだが、 一人も兵隊は出てこない。



演劇「芸人と兵隊」   トム・プロジェクト 亀戸カメリアホール

一昔前の邦画のようなタイトルだが、このタイトルに大きな意味が含まれている。

戦時中の演芸人による戦地慰問の物語。
落語家、漫才師、奇術師兼ダンサーの6名が慰問団として戦地に赴く。
登場人物それぞれが、心に何かしらの思いや葛藤を秘めていて、
窮屈な世相や自らの生き様と戦っている。
それらの心情が、本業のネタを織り交ぜながら、
東京の演芸場から、大陸の戦地に慰問に行く様子が描かれていく。

このネタを演じる時が肝心である。
出演者たちは、舞台上から観客席に向かって漫才や落語を披露するスタイルだ。つまり、観客を慰問先の兵隊と見立てているのである。それは観客自身に、自らが戦地の兵隊であるかのような感覚を思わせていく。

物語が進み、舞台の芸人たちは、当初国威発揚・戦意高揚の為の漫才・落語を披露していくが、やがて、それに疑問を持つようになり、市井の人々の生活を楽しく描く芸に変わっていく。
そして、生きる事、笑う事の意味を感じ取っていくのだ。

しかし突如、芸人たちに悲劇が訪れる・・・。

という物語なのだが、主演の村井國夫、柴田理恵ほか芸達者な役者がそろっていて見ごたえがあった。

「今の若い人たちに見てほしい。」

そんな感想を終演後に耳にしたが、全くその通りだと思う。

「思いっきり笑っているか?」・・・そんな問いかけが心に響く作品。

すでに亀戸でも公演は終了しているが、今後の再演を期待したい。


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