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「いつでもどこでも誰とでも」・・・何もかも忘れて楽しめるコメディ。


みそじん第六回公演11月27日まで阿佐ヶ谷アルシェ

まずは失礼を承知で、「ビバ!ラサール」と叫びたい。

私はつまらない芝居に出会うと、つい自分だったらどう書くだろう、とか、どう演出するだろうなどというような余計な事を考えがちだが、
面白い芝居に会うと、その中に没頭して、ひたすら楽しんでしまえる。
この作品ははっきりと後者だ。脚本のラサール石井氏が素晴らしい。

まず冒頭から持って行かれる。
客電が落ちると、舞台に点滅する強い光が現れる。
明転すると、整理された小奇麗な部屋に大きな布をかぶった置物(塊)が三つ。主人公が登場し、布をめくると中から巨大な和太鼓が。

違和感を感じさせるこれらの仕掛けが何を意味しているのかは、すぐに明かされるのだが、この2つの舞台装置によって、
舞台から目が離せなくなる。すっかり取り込まれてしまうのだ。

1996年にラサール石井氏が、当時新人であった女優3人の為に書き下ろした戯曲で、その時の出演者である小林美江さんが今回演出をしている。

舞台の設定は1999年。
あえて初演の時のままで今回も演じられている。
なので、我々のような世代には、登場するキーワードやセリフに懐かしささえ感じるが、内容はそれらを凌駕して世代を超えて楽しませてくれる。

とにかく、舞台上で矢継ぎ早に起こる事件に、安心して翻弄されて欲しい。何より、この作品には知っていても楽しめる絶対的なモノがある。

少しだけネタバレすると(全く情報を入れずに観たい方は以下を飛ばして劇場へ)、三つの歌が絡み合う龍のように同時展開する場面がある。

曲はモー娘。の「LOVEマシーン」とドリフターズの「ズンドコ節」そして
美空ひばりの「真っ赤な太陽」。
この三つが、トリプル・クロスカウンターのように交差と交差を繰り返し、見事に歌い上げられる。さらにその合間にも、聞きなれた曲やスペシャルなサービスが割り込んできて・・・観客はすっかりノックダウンされてしまうのだ。

これは掛け値なしに劇場で楽しんでいただきたい。
この場面を観るだけでも、チケットの半分は元を取ったと思えるだろう。

同じ規模の劇場での公演をいくつも見てきたが、この規模なら仕方ないか・・・と結論付けてしまった作品も少なくない。だが、そんな偏見をすっかり打ち砕いてくれた。
予算も多くない、劇場の制限もある演劇でも、こんなにも楽しませてくれるのだから、芝居というものは不思議なものである。
やはり、脚本が命なのか。

以前誰であったか「制限があればあるほど、面白くしてやろうという気持ちが燃え上がる」という言葉を聞いたことがある。
まさにこの舞台はそのような努力が結晶した作品である。
是非「LOVEマシーン トリプル・クロスカウンターバージョン」でノリノリになって欲しい。

阿佐ヶ谷アルシェにて、11月27日日曜日まで。
劇場に行けない人には配信もあるようなので、要確認。


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