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復活の時

令和3年6月12日15時35分、およそ2年の時を経て再びグラウンドにその姿を現したチームがある。日本で結成されたスーパーラグビーのチーム、サンウルブズだ。


ラグビー日本代表の強化を目的とするため、ラグビー協会は南半球で行われている世界最高峰のリーグの一つである、スーパーラグビーに参戦することを決めた。

2016年シーズンから参戦しシーズンを戦ってきたのだが、やはり世界の壁は厚く、毎年の勝利数が片手で数えるのがやっとであった。圧倒的な点差をつけられて敗れる試合も多かった。

それでも毎試合毎試合相手チームにぶつかっていく選手の姿にファンは胸を打たれた。

長期間に及ぶ遠征に加えて毎週組まれるハードな試合、選手はコンディションの調整に苦慮したそうだ。


本拠地である東京・秩父宮で行われる試合には、その雄姿を見ようと多くのファンが詰めかけ、勝敗関係なく大声援を送った。ファン誰もがサンウルブズの選手の苦闘を知っていた。自分のことと重ね合わせて見ていた人も多かったのではないだろうか。

リーグで最も愛されたチームと言って間違いないだろう。


しかし、参戦5年目のシーズンを前に、スーパーラグビーからの除外を言い渡されてしまう。その理由はリーグの財政問題や選手の移動負担等々が挙げられていたが、必ずしもサンウルブズ除外理由として理にかなったものとは言い難かった。

しかし決定を覆すことはできず迎えた最終シーズン。今も世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスの影響により、リーグの中断・打ち切りが決定。その時点でサンウルブズの歴史も幕を閉じることとなった。非常に中途半端な幕切れとなり、選手や関係者はもちろん、ファンも心に悔しい気持ちを抱えたままとなってしまった。


その想いをぶつける瞬間が訪れたわけである。皮肉にもそれは新型コロナウイルスの影響によるものであった。

欧州遠征を控えた日本代表。本来であれば、事前のテストマッチとして他国との試合が組まれるのだが、来日する選手の負担を考慮すると見送らざるをえなかった。そこで選ばれた相手がサンウルブズということになったのである。


サンウルブズに関わった全ての人達が抱えていた共通の想い。それは見事にグラウンドで晴らされた。

決して準備期間は長くなかった。試合日直前に召集された選手もいた。しかし、どんな状況・相手であろうと勝つために最善を尽くすというサンウルブズのプレーは変わらなかった。

5シーズンという時間で見れは一瞬だが、その間に込められた力。

試合に詰めかけた観客、サンウルブズのユニフォームやグッズを身に着けた人の多さがそれを物語っている。

いつかまた、グラウンドにその姿を見せる日が来る気がしてならない。