アパレルMDの仕事

こんにちは😃

以前にアパレル業界でのMDの重要性について少し記事を書かせていただきましたが、MDという仕事についてもうちょっと具体的に書いてみたいと思います。

かなり長くなりますが、新人のMDの方や教えてくれる人が周りにいない方などにとっては参考になると思いますので(自分で言うな笑)、最後までご覧いただけますと幸いです。

まず、MDとはmerchandiser(マーチャンダイザー)の略で、アパレル業界においてのMDとは簡単にいうと商品や事業自体の計画を立てて運用までを行う人の事を指します。

但し、私は今までいくつかの会社に所属したり、外からお手伝いをさせていただいている中で、企業によってMDの業務範囲や立場の違いというものがあるように感じました。

しかし、一般的には事業やブランドには組織図の様なものを作ると1番上に責任者がいて、その下にMD、そこから下に企画や生産、PR担当などがいるイメージで、責任者の右腕的な立ち位置になると思いますので、今回はそのイメージで責任者に近い立場のMDの業務で記事を書いていきますね。

まず、MDの仕事は大きく、
【計画】と【管理】に分かれており、

【計画】の中には
1、事業計画
2、商品計画
【管理】の中には
1、商品管理
2、計数管理

が、それぞれあります。

【事業計画】とは
事業やブランドの売上、利益、在庫の予算を立案し、それに必要なリソース(人員やPRコスト等)をロジックをもって組み立てて行く事。

例えば年間予算を10億円に設定し、粗利は5.5億、営業利益は1.0億円だと、10億円の売上を作るために必要な在庫が13億だとすると、年間の値引率は約23%です(100%消化前提で)、10億円の売上で粗利が5.5億だと、売上原価は4.5億円になります。
13億円の在庫と10億円の売上、4.5億円の売上原価だとすると、4.5億➗13億で年間平均で製造減価率は34.6%で商品を作ることになります。

この、
売上
粗利
売上原価
在庫高
平均値引率
製造減価率
営業利益
を、
年間
半期
四半期



と細分化して立てていきます。

そこで必要なのはこの計画の精度がいかに高く現実的で、売上・利益を最大化出来ているかという事です。

在庫を残したくないからと在庫を少なくしすぎると販売機会ロスが生じ、
販売力に自信がないから値引率の幅をもっと取りたいからと製造原価を安くして行くと、商品がチープになりブランディングを毀損することになり、
逆に根拠なく売れると思って在庫を仕込みすぎたり、高い原価で商品を作っていると、売れなかった時に在庫が残り売上も利益も立たないと最悪の状況に陥ります。

そこのバランスをしっかり取るために必要なのが、自分のチームの持つリソースを理解する事です。

その年のトレンドや傾向を理解した上で、その系統の企画が得意な人材がいれば良いですが、いない場合などは新規の人材を入れる必要がある場合もありますし、PRでも人によって強い領域や弱い領域があるので、その為の人材が揃っていればある程度強気に予算を組めるし、いない場合は人材調達のコストも念頭に入れておかなければいけない事になります。
ここで難しいのが、人員を入れるという事は販売管理費が膨れるという事ですが、例えば短年で単純に考えると年間給与が500万円の人材を入れて、自身の計画の中でプラス1,000万円の利益を生むのなら十分ペイが出来るので入れるべきだし、300万円しかプラスできないなら入れない方が良いかもしれません、但しそれはしっかりと計画された仮説を基に決定すべき事であり、よくある『今年は業績悪いから人を入れるのはやめよう』という大企業病のような雑な考え方では売上・利益の最大化は望めません。

要は、いかなる結論に至るにも、細部まで検証された計画と言うものが大事で、それがあるとズレが生じた際に【何が悪かったのか?】が明確になりやすいと言う事です。

上記は【ブレイクダウン型(勝手に命名してます)】で、要は先に大枠(ポイントとなる予算)を決めてから中身を考える方式で、昨今増加しているインフルエンサーブランドや芸能人のブランド等は、まず作りたい物を考えて結果どれだけのお金が必要かを考えていく【ボトムアップ型(これも勝手に命名)】が多いのですが、ほとんどの場合これらは失敗に終わっています。結果として大きな企業や数年に渡って継続的に売れているブランド等は圧倒的に前者が多いと思いますので、ブレイクダウン型を説明しております。

次に【商品計画】とは先程明記したズレと言うものを商品の売れ行きを通して最小化していく為の計画です。
例えばMDが企画に対してばっくりと『来年の予算は13億円だから13億円分を減価率34%で作って』と言う指示をするとどうなるかと言うと、月毎の仕込み金額が足りない、多過ぎるといった風に、店舗やECサイトの坪数や工数を逸脱した商品が投入されたり、商品のバランスがおかしくなり、「店頭にスウェットしかない」、「ボトムが2型しかない」、「同じような商品ばかりでコーディネイトが出来ない」など多くの問題が発生します。
なのでMDは前年の実績や他社の情報、トレンドなどの多くの情報から、その13億をどの月、どの週に、どういったアイテムをどのくらい作る事が必要か?を考え、建物でいう設計図のような商品マップを作成し、アイテム、色、サイズなどを可視化してブランド全体に共有する事で、店頭やECがバランスの取れた商品ラインナップとなってきます。
その上で、情報をもとに一定期間毎にパワーアイテムを設定して、そこに対して広告投資をしたり発注枚数を大幅に積む事でより予算に対して確度の高い計画にしていきます。

因みに私が大きなブランドの事業部長をしていた時は、品番毎の消化計画を立てて、毎週それが計画通りに進捗しているか?していなければなぜしなかったのか?を検証してPDCAサイクルを回していましたので、よりMDの仮説と実際の精度を検証したいのであれば、その方法もお勧めです。

次に【管理】です。

まずは【商品管理】です。
計画の部分と重複する部分もありますが、
その名の通り商品を管理する役割です。
MDは多くの場合デザイナーや企画担当、生産担当などに指示をする役割を持っています。
例えば、MDが指示をしたアイテムを指示をした価格で作ろうとした時に、ありがちなのは値段が合わないから生地のクオリティを落とそう、であるとか「ここのポケットは無しにしよう」といった風に最終的にお客様への提案が思った通りにできなくなる事や、納期などを勝手にズラしてしまう事で、店頭のプレゼンテーションが想定通りにならなくなったりといった事がよく起こります。もちろんある程度は仕方ありませんが、そこの妥協点を共有されずに各担当者が勝手に判断してしまうと、先程のなぜ売れなかったのか?という仮説にズレが生じてしまいます。なので、MDは商品のデザインやクオリティに関しても管理して、それが販売された時に思ったように販売につながっているか?を数値を通して管理していかなければいけません。

最後に【計数管理】ですが、
これは日々の売上や利益の進捗を管理していく事です。店舗数が多ければ多いほど、出店チャネルが多岐に渡れば渡るほど、客層やお客様のニーズが地域や店舗によって異なってくる為、予算と実績というものを合わせる事は困難になってきますが、そういった多角的な事業展開はブランドをスケールしていくには避けて通れない道だと思います。もちろん経営者の考え方によっては、「3店舗で5億円の売上1億円の利益を出すビジネスをしたい」という方もいたり、「将来的に売上高300億、利益額25億円のブランドを作りたい」などといった方のいるかと思います。
前者の場合は店舗数の少なく、予実のブレに対してもより精度の高い分析が可能なので、PDCAのかかる速度も早く実現しやすいビジネスモデルであると思いますが、後者の場合等はチェーンストアマネジメントがほぼほぼ必須となってくるので、前述のように多様なお客様のニーズに対応できる仕組みがないと成立しにくいと思います。
・〇〇駅の駅ビルの店舗は狭小店舗で客層がOLや若い学生が多い
・〇〇地域のGMSは平日は郊外の主婦、土日はファミリー層が多い
等、そこに合わせた物作りや販促計画を立案しなければなりません。
なのでMDの売上、利益の進捗管理は複雑化していくので、ある程度の仕組みが前提として確立されていないと、破綻していく事は目に見えています。私が以前に事業部長として見ていたブランドで、200店舗以上の店舗数を誇るブランドがありましたが、その場合はブランドにMDが4名在籍しており、商品担当MDや、郊外型店舗担当MD、都心型店舗MD等がおり、それぞれが連携して、管理を行っていました。例えば都心型店舗は売上が良いが、郊外型店舗が予算を落としているとすると、各MDが商品ごとの売上を分析して、商品移動をしたり商品を急いで追加発注したりと対応する事で全体の売り上げを正常化する調整を行っておりました。

そういった計画と管理を適切に行う事で継続的にPDCAをかけながら事業を継続させていく事がMDの業務であると考えています。

少し長くなってしまいましたが、アパレルMDを目指す方等に少しでも参考になれば幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?