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day 7|AIによる論文レビュー(テーマ:リモートコラボレーションとイノベーション創出)

webメディアや書籍を読んでいると、「○○の研究によると」という言葉をよく目にすると思います。webや書籍では、参考文献として研究の一部分を切り取って結論を述べるため、詳細までは把握しきれないことが多いです。

もし、その研究の内容をもう少し深く知ることができれば、情報を捉える解像度が上がりますし、自分の知識としてもインプットすることができます。

また、参考文献が英語の文献だったりすると、英語が苦手な人にはなかなか手が出せませんが、ChatGPTに対して適切なプロンプトを与えれば、海外の文献レビューも手軽に行えます。

研究の真髄までは知らなくてもいいけど、webや書籍よりはもう少し情報を深く知りたいという方には有用かもしれません。


レビュー対象の文献

今回は、Nature asiaの記事でとりあげられていた論文のレビューを行いました。


論文はこちらです。

以下のような疑問も踏まえつつ、レビューを行ってみたいと思います。

  • なぜ、リモートコラボレーションだと”画期的な発見 ( Breakthrough Ideas)”を創出しづらいのか

  • それを、どのような手法で革新性を測定したのか


文献レビューの方法

論文のレビューは前回の記事でも説明した方法で行いました。

以下の項目をフレームワークとして、レビューを行います。

1. どんなもの?
2. 先行研究と比べてどこがすごい?
3. 技術や手法のキモはどこ?
4. どうやってどうやって有効だと検証した?
5. 得られた示唆は?
6.
議論はある?
7. 次に読むべき論文は?

このフレームワークをプロンプトに落とし込むと、以下のようになります。

#レビュー方法:
 1. 以下のフレームワークにもとづいてレビューお願いします。
 2. フレームワークの項目と説明を確認してください。
 3. 各項目一つずつレビューをしていきます。
 4. まず、該当する項目について、3つ程度の箇条書きで概説レビューを出力してください。
 5. その後、その項目に関する、詳細レビューをお願いします。  6. 各項目のレビューは、レビュー内容を確認後、次の項目に移るよう指示を出します。

#フレームワーク:
 項目1: どんなもの?
 説明1: 何を目的・趣旨として設定し、何について研究したものなのか。

 項目2: 先行研究と比べてどこがすごい?
 説明2: 先行研究とレビューする研究の位置づけや違いは何で、どの点で優れているのか。

 項目3: 技術や手法のキモはどこ?
 説明3: 研究内で用いられている技術や手法のうち、重要な点は何か。

 項目4: どうやって有効だと検証した?
 説明4: どのような方法で、研究結果の有効性を検証したのか。

 項目5: 得られた示唆は?
 説明5: この研究結果から得られた、最も重要な示唆は何なのか。

 項目6: 議論はある?
 説明6: この研究結果を踏まえて、さらに追求すべき領域や深堀りすべきポイントはどこか。どのような研究の余地があるか。

 項目7: 次に読むべき論文は?
 説明7: 研究結果をよりよいものにするために、また、関連する研究を前進させるために、どの論文を読むべきか。どの研究内容を抑えておくべきか

今回は AskYourPDF Research Assistant というプラグインを活用しました。



レビューの結果

いくつかの項目について、レビューの結果を示します。
論文に書いてある内容を、少し深堀することができました。

項目1: どんなもの?

目的: リモートコラボレーションとオンサイトコラボレーションのイノベーションへの影響を分析。
研究内容: 科学論文と特許申請データを分析し、リモートとオンサイトチームのブレイクスルー発見の可能性を比較。

詳細レビュー
この論文は、科学研究と技術開発におけるリモートチームとオンサイトチームのイノベーション能力に関する広範囲な分析を行っています。研究者たちは、過去半世紀にわたる2000万件以上の科学論文と400万件の特許申請を分析し、リモートチームがオンサイトチームに比べてブレイクスルー発見の可能性が低いことを明らかにしました。特に、リモートチームは後期の技術的タスクに重点を置きがちですが、新しいアイディアの構想や研究設計などの概念的なタスクにはあまり関与しない傾向があることが示されています。

この研究は、イノベーションの理論やリモート作業の影響に関する先行研究とは異なる視点を提供しています。特に、デジタル技術の進化にもかかわらず、リモートチームがメンバー間の知識の統合や新たな発想を生み出す上での限界を持つことを指摘しています。また、新進研究者がブレイクスルーを共同で構想する機会がオンサイトチームにおいてより高いことも示されており、チーム構成とイノベーション能力における地理的近接性の重要性を強調しています。

項目3: 技術や手法のキモはどこ?

分析手法: 大規模な科学論文と特許データセットを用いた統計分析。
革新性指標: チームの協働距離とイノベーションの革新性(Dスコア)の関連性。
役割変化の評価: 科学者のリモートとオンサイトでの研究活動の役割変化を分析。

詳細レビュー
この論文では、科学論文と特許申請データの広範な分析を行っており、特にチームの協働距離がイノベーションに与える影響に焦点を当てています。研究者たちは、チームメンバー間の地理的距離とイノベーションの革新性を示すDスコア(Disruption Score)との関連性を分析しました。また、リモートとオンサイトでの科学者の研究活動における役割の変化を評価し、リモートチームが概念的なタスクよりも技術的なタスクに従事する傾向があることを明らかにしました。

この手法により、リモートチームが革新的なアイデアやブレイクスルーを生み出す能力がオンサイトチームよりも低いことが統計的に示されています。科学者の役割変化の分析は、リモートチームが新しいアイデアを構想する能力に制約があることを示しており、これは地理的な近接性がイノベーション能力に重要な役割を果たしていることを示唆しています。

項目5: 得られた示唆は?

地理的近接性の重要性: ブレイクスルーイノベーションにおいてオンサイトチームの利点。
リモートチームの限界: 新しいアイデアの構想や革新的な研究への影響。
政策立案への影響: リモート作業の普及がイノベーションに与える長期的な影響。

詳細レビュー
この研究は、イノベーションにおける地理的近接性の重要性を強調しています。オンサイトチームがリモートチームよりもブレイクスルーイノベーションを生み出す可能性が高いことが示されており、これは科学技術進歩における地理的な近接性の役割を示唆しています。また、リモートチームは新しいアイデアの構想や革新的な研究において一定の限界を持つことも明らかにされています。

この研究は、リモート作業の普及が長期的なイノベーションと生産性に与える影響について、政策立案者や組織リーダーに重要な示唆を提供しています。具体的には、地理的近接性がブレイクスルーイノベーションに与える利点と、リモート作業が革新的な研究に与える可能性の低減を考慮する必要があることを示唆しています。


レビュー内容の解説

また、レビューした内容について、よく分からない点や具体的に知りたい点について質問してみると、論文の内容に沿って教えてくれました。


  • なぜ、リモートコラボレーションだと”画期的な発見 ( Breakthrough Ideas)”を創出しづらいのか

●User:
なぜ、リモートチームは技術的タスクを重視するのでしょうか? この点について、論文のなかで考察されていれば教えてください。

○ChatGPT/AskYourPDF RA:
リモートチームが技術的タスクを重視する理由について、論文は以下のように考察しています。

リモート協力では、特にプロジェクトの初期段階でのアイデアの構築や暗黙知の共有が難しいとされています。プロジェクトの初期段階では、アイデアが明確に表現されず、知識が暗黙的な形で存在するため、遠隔地からの協力は特に困難です。しかし、アイデアが明確化し、知識がより体系化されると、オンサイトチームの相対的な優位性が減少します。その結果、リモートチームは技術的な作業の調整や確立されたアイデアの発展に傾く傾向があります。

これは、リモートチームが、特に暗黙知の共有が必要な概念的タスクにおいて、オンサイトチームよりも不利であることを示唆しています。一方で、より体系化され、具体的なタスクに対してはリモートチームでも効率的に作業を進めることが可能であると考えられます​​。


  • どのような手法で革新性を測定したのか

●User:
この論文で用いられている「Dスコア」とはどのような指標か、具体的に教えてもらえますか?

○ChatGPT/AskYourPDF:
「Dスコア(Disruption Score)」は、研究や特許のイノベーションの革新性を測定するために使用される指標です。このスコアは-1(進展的)から1(革新的)の範囲で変動し、その計算は後続の引用パターンの2種類の確率の差として行われます。具体的には、後続の研究がその研究を引用する際に、その研究の引用元も含めるか、またはそれらを無視して独自のアイデアとして扱うかに基づいています。

例えば、ワトソンとクリックの1953年のDNAに関する論文はDスコアが0.96(トップ1%)で非常に革新的な作業とされていますが、ワトソンらによる2001年のヒトゲノム論文はDスコアが-0.017(ボトム6%)で、進展的な研究とされています。Dスコアは、科学技術の進歩における研究チームの異なる役割を明らかにするのに役立ちます。

また、急進的なイノベーションは通常、新しい用語の導入に伴うことから、Dスコアには新しい科学的概念を提案した論文や新しい技術コードを導入した特許を特定する変数も組み込まれています​​。


今回は、ChatGPTのプラグインのひとつである AskYourPDF を用いて、論文のレビューを行ってみました。webメディアや書籍の掲載内容よりも、情報の解像度を少し上げたいという人にはお勧めかもしれません。

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