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夫がホワイトデーを忘れていますように。



現在、3月14日の夕方。わたしは今、とてもドキドキしながら夫の帰りを待っている。夫がホワイトデーのことを覚えているのか、それとも忘れているのか。

どうか忘れていてほしいと願いながら、ドキドキしている。


遡ることたぶん5年。夫はホワイトデーをすっぽかすというミスを起こした。あれ、何もないのかな?そんなはずはないよな?さては23時59分にサプライズだな?と、あれこれ考えながら時間だけが過ぎた。日付が3月15日になったのを確認して「ホワイトデーは?」と聞いたところ、夫は(やってしまった…)という顔になり、この人はシンプルに忘れていたのだと察した。夫の母はバレンタインに息子にチョコをあげる人ではなく、また夫の会社では義理チョコが禁止されているため、夫はわたしからしかチョコをもらっておらず、その一個の返事をすっかり忘れていたのである。


誰だってミスはする。だから、わたしはそのことを取り立てて責めたつもりはなかったが、勝手に重責を感じてくれた夫は「ごめんなさい!」と平謝りで、ミスを取り返そうと必死になった。


まず、ハイセンスなレストランでコース料理をごちそうしてくれた。さらに、アパレル店で店員さんに勧められたという洋服をコーディネートごと買ってプレゼントしてくれ、締めにケーキまでふるまってくれた。至れり尽くせり。マイベストホワイトデー。普段物をねだったりしないし、これまではバレンタインにあげたもの相当のお返しでよいと思っていたが、これにはさすがに感動した。ホワイトデーのプレゼントの延滞金とはこんなにも大きなものなのか!


このできごとにより、「二度とホワイトデーを忘れるというミスはしたくない夫」と「内心、毎年忘れてほしいと思っている妻」という静かな対立構造が生まれた。しかし夫は学習能力の高さを発揮し、その年以降一度もホワイトデーを忘れたことがない。忘れることは、何かを覚えていたり思い出したりするよりもむずかしかったりするね、ってなんだか失恋直後の人が書いたポエムのようなことを考える。


そろそろ忘れてくれていい。5年ぶり2度目のスペシャルホワイトデーを味わいたい。


そこに向けた努力はしてきたつもりである。もうすぐホワイトデーだね、あれが欲しいな、といったトークは一切封印した。休日にふたりで入ったスーパーで、うっかりホワイトデーのギフト売り場を通りかかったときは、「見て!すてきなマスクがあるよ!」と言って逆側にあるドラッグストアへ誘導したりした。


先ほど、家中の扉を開けて確認をしてみたが、ホワイトデーのプレゼントらしきものは見つかっていない。「今日は早く家に帰れそう」と言って出勤したので、仕事後にデパートに行くというスケジュールを考えているとも思えない。


今年は期待ができる。


夫が帰ってくるまであと1時間。人事を尽くして夫の帰りを待つ。



おわり


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