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''記憶のある''解離も存在する

解離性同一性障害(DID)は上記の図の左図のように、主人格(白)と解離人格(黒)が’’抑圧障壁’’で無意識の領域に怒りや憎しみを抱えた人格を押し込めて人格が分裂している状態のことを示すとフロイトが提唱しました。このDIDは、人格交代している間、主人格は解離人格がしている行動を記憶していないと言われています。
一方、私は左図の解離より、右図の人格同士が重なり合った状態の解離の方が多かったです。明確に抑圧障壁で分離していない解離は、本人が人格交代をしている間、記憶喪失にはならないので(=つまり、記憶のある解離)、本人は、解離の病識がなかなかもてず、専門家も診断が非常に難しいです。

記憶のある解離については、精神科医の和田秀樹先生が、拙著「わたし、虐待サバイバー(ブックマン社 2019)」の対談部分で専門家としてこういう意見を頂いています。和田「’’記憶のある解離’’というものがってもおかしくない。・・・多重人格の人でAの人格は、Bの人格がやったことを覚えていないんだけど、BはAのやっていることを全部知っている、みたいなケースもあります」と述べています。

左図が一般的に解離性同一性障害(DID)という多重人格です。しかし、右図は私の感覚では人格同士がくっついているような状態が多かったです。左図はフロイトの理論で’’抑圧障壁’’によって「無意識の領域」に別の人格を押し込めている状態です。右図は’’特定不能の解離’’と専門用語では呼ばれていますが、あまり解明されていない解離です。解離については、当事者が病識を持ちにくいことから、どのような状態なのかという聴き取りが難しく、解明がまだあまりなされていない分野です。しかし、私の感覚ですが、おそらく右図の解離の人の方が多い印象を受けます。

神戸連続児童殺傷事件の元少年Aは、''記憶のある''解離ではなかったか?

さあゲーム

最近、神戸児童殺傷事件に関する書籍を3冊(「少年A」この子を生んで… 父と母悔恨の手記 (文春文庫)、元少年Aが書いた手記「絶歌」(太田出版)、被害者遺族の方が書かれた手記「淳 」( 新潮社))を改めて読んでみました。事件当時、少年Aは解離性同一性障害ではないという精神鑑定がなされましたが(※解離傾性は指摘されていた)、彼が遺伝的に有し、犯行のおそらく最もの要因となった性的サディズムだけでなく、殺人に至った要因は他にもある感じました。

少年Aの両親の手記も読みましたが、異常な過干渉と子どもの気持ちが解らない鈍感さに、幼少期の家庭環境も少年Aの歪んだ認知形成に影響を与えたように思います。しかしそれでも別要因の存在を感じさせられます。
事件当時、少年Aは私と同じ「記憶のある解離(専門用語で、特定不能の解離)」ではなかったか?と私個人は疑いをもっています。手記には、解離人格(攻撃人格)の攻撃性が自分では制御できずトラブルばかりを起こすエピソードが多数出てきます。自分では抑制できない攻撃的な人格に支配されてしまい、相手を攻撃してしまうという感覚は、元少年Aの手記と少年Aの親の手記を読んでいて手に取るように分かりました。

バモイドオキ神や酒鬼薔薇聖斗という彼の中の魔物であり友人というのは、少年Aの解離人格であり、主人格と記憶を共有しており、今から20年前の精神医学では正確な鑑定がなされなかったのでは?と思いました。少年Aが解離だったとして、別人格の魔物を生み出したのは、過干渉すぎる家庭環境に由来するように思いますが、(異常な過干渉で神経がおかしくなっただろうと思います)、性的サディズム以外の執拗な攻撃性(解離)は、私には感覚的には非常に分かりやすいのです。

少年Aは事件当時、「記憶のある解離」ではなかったか?と。しかし被害者遺族の方の手記も読み少年Aが当時14歳だったからといって、私も少年Aは今でも赦すことはできません。私も少年Aと同じく事件当時14歳でしたが、彼の成人後の「絶歌」の出版(被害者遺族に無断で出版。印税も少年Aのもの)も含め少年Aを擁護する気は今でも一切持てません。

しかし、解離によって犯罪を犯してしまう加害者は物凄く多いだろうと思います。そして正確な精神鑑定がなされていないケースが多いのでは?と思います。それほど、日本の精神医学は解離について診断すら遅れている実態があるからです。今後、’’記憶のある解離’’についても研究で解明されてほしいと思います。

※虐待の後遺症については、以下の書籍に詳しく描いています。精神科医の和田秀樹氏による監修・対談付き。



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